水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第三十一回)

2011年10月05日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第三十一回

「いえいえ、正直に申したまでです。上山さんとお亡くなりになった平林さんとの間に、どういう経緯があったのか、までは分かりかねますから今後の課題として残りますが、二人の空間に歪(ひず)みが生じ、霊動臨界に達していることは、ほぼ間違いないでしょう」
「ほう、なるほど…。では、これを、よろしく頼みます。上山に出来るだけ早く宅急便で届けなければなりませんからな」
 そう云って、滑川(なめかわ)教授は、ふたたびマヨネーズを差し出した。佃(つくだ)教授は無言でそれを受け取った。
「宅急便ですか。いちばんシンプルでベターな方法てすね。中位相物質を宅急便で、というところがいいですね」
「まあ、そう云わんで下さい。中位相物質といいましても、霊界の者が手にするまでは、ただの物質なんですからな」
「ああ、そうでした。霊界の者が受け取った瞬間、私達人間界から消えるんでしたね」
「おお、そうです!」
 滑川教授は少し誇らしげに胸を張った。
「先生、今日はお時間ございますか?」
「はあ、…他にこれといって用もありませんからな、ははは…」
 顔は笑っていないが、滑川教授は愛想笑いした。ただ、これは教授の日常で、何もこの日に限ったことではない。
「それじゃ、すぐやりましょう。先生も立ち会って下さい」
「えっ? これから出来るんですかな?」
「はい。上手い具合に、今日は助手が全員おりますので…」
 佃教授は徐(おもむろ)に片手で後方の助手達を指し示した。確かに後方には四人の助手がいて、この日は全員、机に向い何やら書いていた。


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