水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション (第十五回)

2011年05月24日 00時00分00秒 | #小説

    幽霊パッション    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                               
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    
第十五回
「いや、実は…。なぜ私だけに君が見えるのかを分かれば…と思ってね。そんな本を借りたんだよ」
『なるほど…。それは僕だって知りたいですよ。なぜ課長だけが白っぽく見えるかってことです』
「白っぽくって、どんな風に?」
『ええ、まるで全体を薄く白いペンキで塗ったようにです』
「白いペンキって…、それじゃまったく人に見えてないってことじゃないか」
『いや、そうじゃなくって。どう云えばいいんでしょう…』
「どう聞けばいいんだろうな」
『やめてくださいよ、からかうのは。そうそう…他の人に比べれば、全体を薄くした感じですかね。それが白っぽいって意味です』
「全体に色のトーンが薄いってこと?」
『そう、その通りです。課長、上手いこと云うなあ』
「幽霊の平林…じゃなかった、平(ひら)さん、そうおだてるなよ。要は薄く見えるんだな、私が」
『はい…』
 幽霊平林は蒼白い顔で頷(うなず)いた。
「分かった。それはそれとして、なぜかってことだ」
『そうですよね』
「よしっ! これからは二人で…君は死んでるんだよな? まあ、二人でいいか…。二人で、それを解明しようじゃないか」
『はい、望むところです。それに僕も、自分だけがどうして幽霊で今、見えるのかを知りたいんですよ』
「そうそう、それも不思議なんだよなぁ」
 二人は妙なところで意気投合した。


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