水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第百九回)

2011年12月22日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
    
第百九回
 喉(のど)に詰めるほどの早さで、上山は、うどんを啜(すす)り、昼を済ませると、トレーを配膳台へ返した。そして、バタバタとエレベーターに向かった。
「なんか、忙しそうね…」
 吹恵は、そんな上山の姿を遠目に見ながら、誰に云うともなくそう呟(つぶや)いた。
 屋上に昇り、上山はすぐさま左手首をグルリと回した。その一瞬前、腕時計を見ると、十二時十五分過ぎを指していた。要するに、食堂で費やした時間は十三分ばかりで、配膳の時間を引けば十分内外で、きつねうどんを食べてしまったことになる。いつもは半過ぎになるから、所要タイムが約半分という超スピードだったのだ。それはともかくとして、上山が手首を回した瞬間、幽霊平林は自動セットされた機械のようにパッ! と、格好よく躍(おど)り出た。その格好のよさも、最近では決めのポーズをつけて現れたり消えたりするのだから始末が悪い。他に見られる者もなく、見ているのは、というか、見えるのは上山一人なのだが、なんか幽霊平林は格好よさを意識している節(ふし)があった。そんな、つまらないことを、上山としては、何故(なぜ)? と訊(き)けないから、無視していた。
「…で、だ。朝の続きだが、その国々のメカニズムを調べてくれないか。君は自由自在に動けるんだから、それくらい出来るだろう」
『…って、よく分からないです。もう少し、分かりやすくお願いしますよ』
「だから! 武器を売る利権目当ての企業国家が、武器を貧しい国々に売るメカニズムだよ。つまり、アフリカとか中東アジアなどの低開発国が武器を得るには、それらの国にオイルとかの魅力的な資源や物質があるってこったろ?」
『はい。まあ、そうなりますかね…』
「君さ…、なりますかねって、そうなんだよ。だから君にそれを頼みたい。私は、その結果次第で君が念じる内容を考えよう」
『はい、分かりました。僕で出来るかどうか分かりませんが、やってみます』
「ああ、頼むよ。最後の詰めは、私も同行するから」


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