水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション (第五十五回)

2011年07月03日 00時00分00秒 | #小説

    幽霊パッション    水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              
    第五十五回

「はい! 是非、そうさせて下さい。…私にも教授にお伝えせねば、と思っておることがありまして…」
 上山は思わず話しそうになった。
「ほう…何でしょう?」
「い、いえ、今は結構です…」
 危うく上山は難を逃れた。
 上山は教授に何を聞きたかったのか…。それは云うまでもなく、幽霊平林と相談し、今こうして行動を起こしている原点の発想だった。すなわち、①なぜ上山だけに幽霊平林が映って見えるのか、②幽霊平林には、なぜ上山だけが白っぽく映って見えるのか、というこの二点に尽きた。
「そうですか…。では、私の話を進めるとしましょう。先ほどお訊(き)きになった話の続きなのですが、ゴーステンに電流が流れれば霊動か生じると申しましたが、その幽(かす)かな霊動を助手達は念を起こして体感しようとしているのですよ」
「それをメモしておられる訳ですか?」
「はい、そういうことになります」
 教授は明確に断言した。
 「それで、成果は?」
「今のところ、これと云える決めてのような成果は得られておりません。ゴーステンが霊動物質であることを発見した原点に戻り、もう一度、最初から理論と実証を始めておるところです」
「そうですか…」
 上山は、やはり教授に、①②の疑問を訊(たず)ねた方がいいのではないかと思った。しかし、その前に幽霊平林を呼んで相談しよう…と考えた。ただ、教授がいるこの場で、他の人々には見えない幽霊平林とどう会話するかが単純なことながら問題であった。


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