幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第九十三回
「って、今一、自信が…ってことか?」
『いえ、そんな訳じゃないんですが、まだ不馴れ、ということもありますから…』
「ああ、それもそうだな」
『それよか、二、三日後のニュースや新聞に注意して下さい』
「ああ、分かった。そうするよ」
上山はテーブル椅子へドッカと腰を下ろし、少し疲れたかのように肩から襷(たすき)に掛けた水筒をテーブル上へと置いた。
『ひとまず、ソマリアはOKとして、次はどうしますか? 課長』
「んっ? …まあ、待てよ。ソマリアの今後の推移をしばらく観ようや」
『そうですね。少し慌てました。世界はいろいろと問題がありますしね』
「日本だって、いろいろあるぜ。まあ、この国の場合は平和な、いろいろだけどな」
『はい…。日本は平和ですよ、本当に。憲法が国の戦争を禁止してますからね』
「ああ…。少し曖昧(あいまい)で、もめてるがな。今日行った…行ってはいないか…。現れたソマリアみたいな酷(むご)い国に比べりゃな」
『ええ…、世界には、そんな国が他にもいろいろありますから…』
「喜ばなきゃいかんのだろうな、私達は」
『ええ…』
二人は、すっかりナイーブな口調になっていた。この日は、互いの労をねぎらってすぐ別れた。
次の日の朝、疲れのためか、ぐっすり眠っていた上山を、幽霊平林が突如、現れ、けたたましい声で叩き起こした。もちろん、叩き起こすといっても、幽霊だから大声のみである。
『課長!! 大変です! シリアで大暴動が起こってます!』
「… …。なんだ、こんな早く! 昨日(きのう)の今日じゃないか」
そう不平っぽく云いながら、上山は目覚ましを見た。時計の針はすでに早くない九時半近くを指していた。
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