水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

連載小説 幽霊パッション 第二章 (第四十八回)

2011年10月22日 00時00分00秒 | #小説

 幽霊パッション 第二章  水本爽涼
                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                     
    
第四十八回
「ともかく、僕は効いたってことで…。次はマヨネーズ、持ってきますから課長も…」
「いや、あれは君専用ってことで。そちらへ、…つまり霊界へ置いとけよ。私は、また佃(つくだ)教授に霊磁波ビーム装置で作ってもらうから」
『ああ、そうでしたね。マヨネーズって、どこでもありますからね。マイ・マヨにしときます』
「マイ・マヨは、いい! ははは…。が、そういうことだ」
 その後、しばらく雑談は続き、二人は別れた。
 幽霊平林には霊界の知り合いがいることはいる。しかし、霊界の決めによって、そう簡単には会えないのが実情だった。その男は幽霊平林と同じ頃、霊界へ来たのだが、どういう訳か幽霊姿でさ迷っていたのだ。いつやら上山に安請け合いして、訊(き)いておく…とか云ったのだが、正直なところ、霊界番人の許しをもらわねば会えないのが現状だった。今はその男が住処(すみか)を訪れなくなったから、というより、霊界の決めを霊界番人に厳(きび)しく諭(さと)されたか、あるいは御霊(みたま)になってしまったから来なくなったに相違なかった。そのことは、上山にまだ云っていない。上山への隠し事は如意の筆とこのことの二つだが、こちらは決して隠そうとして隠しているのではなく、忘れていたのである。だが、孰(いず)れは話さないと、上山との意思疎通が損なわれる…とは思う幽霊平林だった。そんなことで、次に上山と会ったとき如意の筆について話そうと思った。だいいち、霊界番人に命じた霊界司の意向を、そういつまでも無碍(むげ)には出来ない。ただ、幽霊平林には、━ 俗世の大悪を滅せよ ━ と云われた、その大悪が何なのかが分からない。単なる個々の社会悪なのか…、いや、それならば、大悪とは云わないだろう、と思えた。それが何なのか…、霊界司様は人間界を浄化することでそれを理解せよ、と仰せなのか…と幽霊平林は思えた。そして、社会の大悪を滅したとき、自分はこの霊界に受け入れられ御霊(みたま)の姿になるのだろう…とも。


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