テレビのリモコンを押しても、観たい楽しい番組がなければ、思わずチャンネルを変えたり切ってしまうことだろう。では、人にとって毎週観たい楽しい番組とは何なのか? ということになる。もちろん個人の嗜好(しこう)性もあるから、それぞれ違ってくることは否定できないが、総じて観たいと思える最小限の条件を炙(あぶ)り出すことにしよう。いや、どうせ炙るなら焼き鳥か焼肉、またはカツオの叩(たた)きにしてくれっ! と言われる方はそうしていただければそれでいい。^^
とある家である。どこにでもいるような男がカップ麺を食べながらテレビを観ている。テレビの芸能人は美味(おい)しそうな料理を食べながら楽しく寛(くつ)いでいる。
「チェッ! 美味(うま)いもの食って楽しんでりゃ世話ねえやっ!」
男は観ていた番組が気に入らなかったのか、リモコンのチャンネルを変えた。カップ麺⇔美味しい料理という余りにも違う現実とのギャップにイラッ! としたのである。次の画面には殺人事件を捜査するサスペンス番組が映った。
「チェッ! また事件かいっ! 現実が、益々(ますます)、悪くなっちまうっ!」
男は番組が気に入らなかったのか、またリモコンのチャンネルを変えた。すると、次の画面には楽しそうに釣りをする魚釣り番組が現れた。
「ほうっ! 楽しそうに釣ってるなっ! まっ、これはいいが、時間がかからぁ~」
男は、すぐ楽しい気分になりたかったのか、またチャンネルを変えた。現れた画面は芸能人が楽しそうに旅する旅番組だった。
「チェッ! 勝手(かって)に旅してろっ!!」
男はここ数年、旅に出る機会がなかったせいか、すっかり気分を害して、チャンネルをすぐ弄(いじ)った。次に画面に現れたのは歌番組だったが、生憎(あいにく)、男が聴きたいような歌ではなかったから、またまたチャンネルが変わった。画面に現れた番組は、何人かの芸能人が楽しそうに話しているバラエティ番組だった。
「チェッ! 自慢ばかりしてやがるっ! 東大の大学院! フンッ! てめえなんざ、犬吠崎の灯台で十分だっ! そんな自慢話、聞きたくもねえやっ!」
男は、またチャンネルを変えた。そして、ようやく男がコレはっ! と思える演芸番組が映し出された。
「ははは…こういう番組でいいのさっ!」
男は単純に笑える番組がよかった訳である。
これは飽くまでも、この男が楽しいと思った番組の話であり、楽しい番組は人それぞれだということを付け加えたい。^^
完
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