どうしても不可解で分かりにくい内容が生じた状況を、人は[謎(なぞ)を呼ぶ]と表現する。難解な事態に至った場合は、さらに強調して[謎が謎を呼ぶ]などとも言う。別に呼ばなくてもいいのに呼んでしまう訳だ。^^ 昨今(さっこん)、流行(はや)りのサスペンス・ドラマなんかでは、特にこの傾向が強い。ドラマの場合だと、謎が謎を呼んだ挙句(あげく)、迷宮入りする・・ということはなく、すべてスンナリと解決して助かる筋(すじ)立て[プロット]になっている。だが、現実の社会では謎が謎を呼んでばかりで、警察諸氏の努力にもかかわらず未解決事件が頻繁(ひんぱん)に横行している事実は、実に嘆(なげ)かわしいと言わざるを得ない。^^
夏休みということもあり、夫、妻、子供の五人家族が車でとある観光地へ小旅行に出かけた。出かけたのはいいが、高速道のサービスエリアへ車を乗り入れたとき、問題が起こった。
「父さん、ガソリン入れてくるから、皆(みんな)先に何か食べていてくれ…」
「分かったわ。それじゃ…」
妻と子供三人が車から降りようとしたときである。
「おい、財布!」
「財布? 財布は出がけにあなたに渡したじゃないのっ!」
「馬鹿言えっ! 渡されたけど、『トイレにいくからお前持っていてくれ』って返したじゃないかっ!」
「そう言われたけど、『財布くらい持っていなさいよっ!』って、また渡したじゃないのっ!!」
「…そうだったか? じゃあ,財布はどこへいったんだっ!!」
「知らないわよっ! まさか、勝手に歩きゃしないでしょ! あなた、どこかに入れ忘れだんじゃないのっ!」
「そう言われてもなぁ…」
夫はズボンのポケット、服の内ポケット・・と、あちらこちら探し回ったが結局、なかった。
「困ったな…。ねえよっ!」
「困ることないよ、パパ。はいっ!!」
そのとき、三才になる次男が財布を手渡した。
「… ああ、そうそう!! ははは…手渡したっ、手渡したっ!」
夫はトイレの前でヒョヒョコ歩いていた次男に財布を手渡し、そのことをすっかり忘れていたのである。謎を呼んだ一件は、呆気(あっけ)なく解決を見て、家族は助かることとなった。
このように、謎を呼ぶ出来事も、意外な結末で助かり、謎に帰ってもらうことも多々、ある。^^
どうしても不可解で分かりにくい内容が生じた状況を、人は[謎(なぞ)を呼ぶ]と表現する。難解な事態に至った場合は、さらに強調して[謎が謎を呼ぶ]などとも言う。別に呼ばなくてもいいのに呼んでしまう訳だ。^^ 昨今(さっこん)、流行(はや)りのサスペンス・ドラマなんかでは、特にこの傾向が強い。ドラマの場合だと、謎が謎を呼んだ挙句(あげく)、迷宮入りする・・ということはなく、すべてスンナリと解決して助かる筋(すじ)立て[プロット]になっている。だが、現実の社会では謎が謎を呼んでばかりで、警察諸氏の努力にもかかわらず未解決事件が頻繁(ひんぱん)に横行している事実は、実に嘆(なげ)かわしいと言わざるを得ない。^^
夏休みということもあり、夫、妻、子供の五人家族が車でとある観光地へ小旅行に出かけた。出かけたのはいいが、高速道のサービスエリアへ車を乗り入れたとき、問題が起こった。
「父さん、ガソリン入れてくるから、皆(みんな)先に何か食べていてくれ…」
「分かったわ。それじゃ…」
妻と子供三人が車から降りようとしたときである。
「おい、財布!」
「財布? 財布は出がけにあなたに渡したじゃないのっ!」
「馬鹿言えっ! 渡されたけど、『トイレにいくからお前持っていてくれ』って返したじゃないかっ!」
「そう言われたけど、『財布くらい持っていなさいよっ!』って、また渡したじゃないのっ!!」
「…そうだったか? じゃあ,財布はどこへいったんだっ!!」
「知らないわよっ! まさか、勝手に歩きゃしないでしょ! あなた、どこかに入れ忘れたんじゃないのっ!」
「そう言われてもなぁ…」
夫はズボンのポケット、服の内ポケット・・と、あちらこちら探し回ったが結局、なかった。
「困ったな…。ねえよっ!」
「困ることないよ、パパ。はいっ!!」
そのとき、三才になる次男が財布を手渡した。
「… ああ、そうそう!! ははは…手渡したっ、手渡したっ!」
夫はトイレの前でヒョヒョコ歩いていた次男に財布を手渡し、そのことをすっかり忘れていたのである。謎を呼んだ一件は、呆気(あっけ)なく解決を見て、家族は助かることとなった。
このように、謎を呼ぶ出来事も、意外な結末で助かり、謎に帰ってもらうことも多々、ある。^^
完
本人にそうする気持はないのに、意思ではない状況に追いやられたとき、仕方なく、『じゃあ、そうするか…』などといった気分で、先が分からない道を辿(たど)ることになるのが[迷走]と呼ばれる動きである。著名(ちょめい)な一例として、時折り日本列島を窺(うかが)う奇妙な動きの迷走台風がある。太平洋高気圧に、『馬鹿野郎! こんな暑い最中(さなか)に姿を見せるなっ!』とかなんとか怒られ、仕方なく、『ど、どうも…』と、後ろから押される思いで進路を迷走する訳だ。^^ 迷走されることで被害となり、助かる命が助からなくなる・・といったことにもなりかねないから困る。
二人の買い物客が、とあるデパートで立ち話をしている。近所の知り合いらしく、話す内容もザックバランだ。
「おやっ? こんなところでお買い物ですか?」
「ははは…レイアウトが変ったもんで、迷走しております。で、あなたは?」
「ははは…実は私も、そのようです」
「最近は、なにごとにつけ、変化が激しい時代ですからな」
「そうそう! 氷のままであって欲しい訳ですが、すぐ、水になります」
「日が経(た)っても、氷ならいいんですが、水はそうは参りませんな」
「永久凍土から出土したマンモスの遺伝子からマンモスは生まれますか?」
「さぁ~それは? こんな時代に生まれれば迷走しますぞ、きっと! ははは…」
「ははは…」
デバートで迷走した二人の話は尽きない。
このように、迷走は笑い話の話題を呼んで助かる場合もある。^^
完
何か気がかりなことがあったとき、それを済まさないと気分が晴れない人と、まあ、あとからでもいいか…と、取り分けて気分が変わらない人・・との二通りがあることが分かる。執刀医が、ちょっと熱いココアでも啜(すす)るか…などと途中休憩を入れれば、手術した患者はチィ~~ン! と叩(たた)かれることになるだろう。^^
お盆のシーズンということもあるのだろう。とある家ではご詠歌が♪どおぅ~~たらぁ~~こおぅ~~たらぁ~~♪と、いい声でガナられている。そして、ご詠歌が三十三番札所のほぼ半(なか)ばまでさしかかったときである。
「では…少し休憩をっ!」
老人の声に、息子は『休憩するんかいっ!』と思ったが、とても言い返す勇気はなく、父親の言うに任(まか)せた。内心では済ませた方がいいよ…と思えたのだ。
そして半時間ばかりが過ぎていった。
「じゃあ、そろそろ再開するか?」
「はいっ!」
老人が立ち、息子が従ったときである。トゥルルルル…トゥルルルル…と、電話の祁魂(けたたま)しい呼び出し音が響き渡った。老人は、「なんだっ!」と、出鼻(でばな)をくじかれたからか、腹立たしく受話器を手に取った。
「… はい、そうですがっ! …はい! はいっ!! ええっ! はいはい! そうですかっ! ではすぐ参りますっ!」
「どうしました? 父さん」
「おい、喜べっ! 母さんが明日、退院できるそうだっ!! すぐ、病院へ行くぞっ!!」
「はいっ!! ご詠歌は?」
「ご詠歌など、気楽にやってる場合かっ!! こっちは生きとるんだっ!!」
「はいっ!!」
息子は、すごすごと老人に従った。結局、途中休憩が仇(あだ)となり、済ますはずのご詠歌は済まされなかった。
済ますときに済ませておかないと済ませなくなるから、済ますときには済まそう! という、ただそれだけのお話である。トイレも、そうですよっ!^^
完
麺類(めんるい)は湯がき時間によって硬すぎたり柔らか過ぎたりするから、なかなか湯がき加減が難しい。時間を計らなくても、食べごろの湯がき加減が分かれば大いに助かる。素麺なんかは割合いいが、パスタ系はなかなか手ごわく、アルダンテ・・いや、それは音楽記号だった。…そうそう! アルデンテである。イタリア地方のいい湯で加減のパスタの呼称だそうだが、芯が少し残ったぐらいが何故(なぜ)いいのか? が分からない。まあ、どうでもいい話だが…。^^
二人の老人が話している。
「歯が不自由になってから、どういう訳か麺類が増えました。多いときですと、一日、三食とも麺の日があります」
「奇遇ですなっ! 私も麺類がほとんどです。ご飯はどうも入れ歯に合わないっ! 硬めに息子の嫁が炊いたヤツなんか、特にそうです。私を早くあの世へ行かせたいのに決まってますっ!」
「ははは…まあ、そんなことはないでしょうが。それにしても麺類は助かります」
「そうそう! 飽きませんから助かります…」
そう言いながら二人の老人は熱い上がりを啜(すす)り、美味(うま)そうに大トロの寿司を頬張った。
麺類に限らず、美味(おい)しいものなら人々は何でも助かる訳だ。^^
完
山畑は久しぶりに休みが取れたこともあり、とある保養地Aへ車の旅に出た。最初は順調に国道を進み、目的地のほぼ3分の2地点まで来たときである。道が二手(ふたて)に分かれていることを示す道路標識が前方に見えてきた。道路標識は心積もりをさせるから大いに助かる訳だが、どういう訳か、この地の道路標識は表示が余りにも簡略化し過ぎていた。
『…なになに? 右手がA方面で左手がBCバイパスか…』
山畑は単純にそう思えたから、車線を右へと取った。ところが、である。二手に分かれた道は大きく交差し、右手車線へハンドルを取った山畑はBCバイパス方向へと入ってしまったのである。国道交差する段階で、BCバイパスは上方向の架橋上へ、国道はその架橋下を通っていたのである。
『こ、こんな馬鹿なっ!! 騙(だま)しじゃないかっ!!』
いくら山畑が心の中でムカつきながら怒っても、すでに後(あと)の祭りで、車はスイ~スイ~と気持ちよさそうにBCバイパスの入路ゲートに向け走行していた。山畑は助からんっ! と思った。バイバス方向の道から何か抜け出せるいい方法はないか…と山畑がキョロキョロしていると、左前方に[A方面へ]の標識と下り道が見えてきた。山畑は、やれやれ…と、ようやく安息の息を漏らした。
このように交差したからといって必ず逆方向へ行くとは限らないと心に留めておけば、間違いも少なくなって助かると、まあ話はこうなる。^^
完
人が耐え忍ぺる限度はそれぞれ違い、その行為の許される限度が変化する。その人が受け入れられる範囲は許容範囲(きょようはんい)と呼ばれる。許容範囲が広い人は、「あの人は、よく出来た、いい人だよ…」などと陰(かげ)で囁かれたりする。囁かれたくて、意識して許容範囲が広いように見せる人も当然、出てくる。だがそれは、純金ではなく上辺(うわべ)だけの金メッキで、すぐ剥(は)げたりバレたりする。^^
とある神社の縁日(えんにち)である。多くの露天が出て、多くの参詣客で賑(にぎ)わっている。その中の三人が鉄板焼き蕎麦(そば)の屋台前で話している。
「いやいや! そういう下世話なものは私、口にしないんですよっ!」
「そうなんですか? ここのは美味(おい)しいのになぁ~! じゃあ、ここで待ってて下さい。すぐ食べてしまいますから…。親父さん、二人前、お願いしますっ!」
「へいっ!!」
露店商は、嫌味(いやみ)を言った男をギロッ! と一瞥(いちべつ)したあと態度を豹変(ひょうへん)させ、注文した二人に愛想笑いした。
しばらくすると、鉄板焼き蕎麦のいい匂いが辺(あた)りに漂(ただよ)い始めた。そのとき、嫌味を言った男の腹がグゥ~~!っと鳴った。
「…わ、私も向学のため、ひとつ食べてみましょう!」
「そうですか? じゃあ、もう一人前っ!」
「へいっ!」
露店商は仏頂面(ぶっちょうづら)で、『下世話なものを食うんかいっ!』と切れかけたが、あとの二人の態度で許容範囲が広がったせいか思うに留(とど)め、小さく返した。危うく、トラブルになるところだったのである。
このように許容範囲外でも、取り巻く環境で範囲が広がって助かることもある訳だ。^^
完
程度・・なんとも分かりにくいファジーな言葉ながら、この言葉の曖昧(あいまい)さで大いに助かることが結構ある。例(たと)えば、「ああ、その程度でいいよっ! 有難う…」と言われた場合、言われた側は、『この程度でいいんだ…』と、数値的に、はっきりしない感じを思う。ところが、次回に同じ程度にしたところが、「ダメダメっ! もっとやってもらわないとっ!」と怒られたりする。言われた側は、『馬鹿野郎! いったい、どの程度なんだっ!!』と、怒られた以上に怒れる。^^ こんな漠然(ばくぜん)とした言葉が程度なのだが、「まっ! 少し違うが、いいだろう!」と、ほぼ正解という程度で許されたりもする。ただ、ほぼは、ほぼであり、ソレではないから、本人が有頂天になるほどのことではない。^^
猛暑が続く、とある夏の午後である。
「お父さま! スイカを切りましたわっ!」
滾滾(こんこん)と湧き出る洗い場の冷えた水で身体を拭(ふ)く隠居の恭之介が、息子の嫁の未知子に声をかけられた。
「未知子さん、どうも、すいません…」
いつも厳(きび)しい恭之介だったが、未知子には青菜(あおな)に塩で、この日も、すぐ萎(な)えるのだった。しばらくして、縁側へ腰掛けた恭之介に、未知子が手盆の冷えたスイカのスライスを勧(すす)める。
「塩加減が少し弱かったかも知れませんが、お塩、振っときましたわ」
「いや、どうも…」
恭之介は手盆の上のスイカの一切れをたったの三口(みくち)で食べ尽(つ)くした。
「おお! ちょうどいい塩加減です。この程度が一番、いいんですっ!」
塩加減が少し弱い・・と言われた恭之介だったが、思った以上に塩が効いていて少し塩辛かった。それでも出た言葉は思った言葉ではなかった。やはり、未知子には程度など関係なく弱い恭之介だった。それでも、未知子はそう言われたことで傷つかず、助かることになった。
毎度、おなじみの、湧水家の夏の一コマでした。^^
※ ふたたび、風景シリーズのお二方(ふたかた)にスピン・オフでご登場いただきました。^^
完
物が傷(いた)んだとき、なんとかしよう! と意気込んでも、手の施(ほどこ)しようがなかったり、その対応がまったく分からなかった場合を[お手上げ]と人は言う。別に手を上げず、下げていたとしても、それはお手上げなのである。^^
最近の電気機器は個人で修理しにくい専門部品、特に電子部品を多量に使っているから、[お手上げ]となり易(やす)い。こんな場合は専門家の情報を得ることで、対応や買い替えがスムースに進めば、助かる。[お手上げ]は困るが、いいことがあったときに思わず万歳(ばんざい)する[お手上げ]は全然、困らない。^^
とある大衆食堂である。冷蔵庫のコンプレッサーが損傷して冷えなくなり、どうしようもなくなった下手(したて)は、なんとか、[お手上げ]の状態から抜け出そうと、近くの馴染(なじ)みにしている大衆食堂へと出かけた。暑い最中(さなか)のこともあり、新しい冷蔵庫が来るまで食品の買い置きが出来なくなったためである。
「おやっ! 下手さんじゃないですか。これはお珍しい~! 長い間、お見限りでしたから、どこかお悪いじゃないかと家(うち)のヤツと言ってたんですよっ!」
「ははは…そんなことはないんですが、仕事の関係で…」
「そうそう!! この前の新聞、見ましたよっ! すごいですねぇ~! リゲル新人賞と植木賞でしたか? ここいらの者(もん)は鼻高々ですよっ! で、今日は、どうなすったんですっ?」
「いやなに…。[お手上げ]になったもんでね」
「? [お手上げ]? よく分からねぇ~や?」
「ははは…親父さんには分からんでしょう。コレがコレになった訳ですよっ!」
下手はジェスチャーで、コトの仔細(しさい)を説明しようとした。
「…ええ。…食えなくなったから…[お手上げ]で来なすったとっ?」
「ああ、まあ、そうです。実は、冷蔵庫が傷みましてね…」
「ははは…そりゃ、まったく[お手上げ]だわっ!」
「手を上げてちゃ、モノが書けませんっ!」
「上手(うま)いっ!!」
「ははは…そう言って下さると助かります」
助かるのは、[お手上げ]になった場合、どういう訳か上手いダジャレが浮かぶことのようだ。^^
完
世の中が、こうも進歩してくると、物が巷(ちまた)に満ち溢(あふ)れて有り余る時代になり、良い物を市場(しじょう)に提供する余裕が絶たれ、質の悪いものが出回るようになってくる。粗製乱造(そせいらんぞう)の時代の到来(とうらい)である。困ったことに、その意識が造り手側に乏(とぼ)しいから、益々(ますます)、粗製乱造になっていくのは嘆(なげ)かわしい。もっとも分かりやすい例はテレビドラマだが、視聴率の関係からか、数ヶ月も続かずに打ち切られる作品も多々ある。某局の1年続いていた朝のテレビ小説でさえ半年でポシャる。これからっ! と盛り上がってきた頃に新番組みが始まるのだから、これはいただけず、返却したい。^^
とある玩具(おもちゃ)屋の店内である。夏休みということもあり、子供が朝から屯(たむろ)している。
「これこれ君達っ! 夏休みの宿題は済んだのかいっ? 来てくれるのは有り難いが、うちも商売だから買ってくれないと…」
「おじさん! コレの傷(いた)まないのあるっ?! この前のヤツ、傷んじゃったんだよっ! 最近の、すぐ傷むねっ!」
「ああ。それを言われると、おじさんも辛(つら)い。粗製乱造が増えたからねぇ~。売れりゃいいっ! それでお終(しま)いっ! 傷んだら新しいのと買い換えて下さい! だよ。直さないねぇ~。傷まないのが増えりゃ、おじさんも助かるんだけどな」
「そら、そうだよっ! おじさんが直しなよっ! 直りゃ、僕も助かるからっ!」
「えっ?! おじさんが、かいっ? ははは…おじさんは商売人だからなぁ~」
「直せる玩具屋って、いいぜっ! やりなよっ!」
「ははは…ひとつ、やってみるかっ!」
次ぎの日から玩具屋の修理技術取得の猛勉強が始まった。そして一年後、その玩具屋は粗製乱造で傷んだ玩具を[直せる玩具屋]として再出発し、今や全国にチェーン店を展開するまでに至っている。
粗製乱造された物は、修理するケア[世話、配慮、気配り、手入れ、メンテナンスなどをすること]で助かる・・という今の風潮に物申すお話である。^^
完
猛暑(もうしょ)が続いている。もぅ~~しょ~がないっ! などとダジャレを言っている場合ではない。生命の危機が叫(さけ)ばれる酷暑(こくしょ)なのである。それでも助かるのは、日差しを遮(さえぎ)る日陰(ひかげ)があるお蔭(かげ)だ。海水浴でもビーチパラソルとか呼ばれる日避(ひよ)けの大傘(おおがさ)を砂浜に立てるが、この日陰がなければ、灼熱(しゃくねつ)の太陽の下(もと)、コンガリと焼けた美味(おい)しい秋刀魚(サンマ)に海水浴客が変身してしまうことは疑う余地がない。^^
近所のご隠居二人が縁台(えんだい)将棋を指している。
「暑いねっ!」
「ああ、暑い暑いっ! だが毎年、この日陰で指さないと夏が来たと思えねぇから不思議だっ!」
「ちげぇ~ねぇ!」
「この日陰があると、どういう訳か落ち着けて助かるなっ!」
「だなっ! そこへ、スイカの冷えたスライスなんぞが運ばれてくりゃ~尚更(なおさら)だっ!」
隠居はそう言いながら、催促(さいそく)するかのように少し離れた台所の方を見た。すると、息子の嫁がいいタイミングでスイカの冷えたスライスを手盆(てぼん)に乗せて運んできた。
「冷たいうちに、どうぞっ!」
「これは、助かるっ!」
二人は顔を見合わせ、ニヤリとした。
夏の日陰にスイカのスライスが運ばれてくると助かる・・という暑い暑い夏の馬鹿げたお話だ。^^
完