水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (54)虫刺され

2019年08月11日 00時00分00秒 | #小説

 外で庭木の剪定作業をしていて蜂に刺されることがある。別に刺されるのは蜂に限ったことではないが、軽く済めば助かる。重い場合は大事(おおごと)になることもあり、酷(ひど)いときは助からず、天に召(め)されることにも成りかねない。^^ 刺す側は無論、悪いが、刺されるには刺されるだけの理由や状況が考えられ、刺される側にも相応の落ち度があると考えるのが大岡裁きというものだ。^^ 分かりやすく言えば、そんな危険な所へ近づかなきゃいいだろっ! ということに他ならない。^^
 暑い盛り、朝のうちに庭木の刈り込みをしてしまおう…と思った株木(かぶき)は、木の枝に潜(ひそ)んでいた足長蜂に迂闊(うかつ)にもチクッ! と額(ひたい)と手首(てくび)の二ヶ所を刺された。横から見ても縦から見ても、これはもう、はっきりとした虫刺されである。株木は蜂がいたことを知らず、蜂にしたって株木が現れることを知らなかった訳だ。蜂に聞いたところ、『私は巣を作ろう…と目論(もくろ)んで木の枝にいた訳ですが、知らずにテリトリーへ進入した株木さんを瞬間、敵! と思ったもんで、つい防衛本能で刺してしまったんです…』と言う[想像です^^]。幸いにも、株木がすぐ追い払ったこともあり、刺し傷は少々の腫(は)れくらいで大事に至らず、アイシング[冷却処置]で治療されることになった。株木はアイシングをしながら、ふと思った。この痛みも、サッカーでタックルされた選手がアイシングする痛みよりは、ましか…と。
 虫刺されも、考えようによっては見方が変って腹も立たず、助かる・・という馬鹿げたお話である。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (53)肩透(かたす)かし

2019年08月10日 00時00分00秒 | #小説

 年に六場所、開かれる大相撲で、よく見られる決まり技(わざ)に[肩透(かたす)かし]というのがある。まあ、[突き落とし]も、よく見聞きするが、[肩透かし]は大相撲以外でもよく耳にする言葉だ。助かるのは[肩透かし]になる場合、ビミョ~~なタイミングのズレで起こる場合が多く、双方が直接、体(たい)を合わせてぶつかることが少ない点だ。まあ、この点は[突き落とし]も同じだが、サスペンスじゃあるまいし、崖(がけ)からの[突き落とし]は怖(こわ)いから、今回、[突き落とし]は外(はず)すことにしたい。^^
 二人の営業社員が夏の暑い昼日中、強い陽射しを避(さ)け、ビルの陰で隠れるように話をしている。
「いやぁ~参(まい)ったよっ! 肩透かし、食らっちまったっ!」
「ええぇ~~!! そんな馬鹿なっ! 君が契約、出来そうだからって携帯くれたから、このクソ暑いのに、本社から飛んで来たんじゃないかっ!」
「まあ、そう言うな。俺だって、まさか、こんな大手が肩透かしをやるとは思ってなかったからな」
「まあ、食らったものは仕方ない。しかし、先方だって困るだろうが…」
「いや、二股(ふたまた)ということも考えられる…」
「別会社の条件がよかった訳か?」
「ああ、おそらく…」
「振られたものは仕方がないっ! また、いい相手、探すさっ! 美人のなっ!」
「ははは…だなっ! 態々(わざわざ)、来てもらったんだから鰻重くらい奢るよっ!」
「ああ。まあ、それくらいはしてもらわんとっ! 土用の丑だしなっ!」
 二人は汗をハンカチで拭(ふ)きながら鰻専門店の方へと消えていった。
 土用の丑の日に鰻屋が閉まっている確率は低く、二人は肩透かしを食わず、美味(おい)しい鰻重が食べられるだろう…とは推測されるが、[内股透かし]という決まり技(わざ)があるくらいだから、柔道にも[肩透かし]という決まり技があったら助かるな…と、ふと思った次第である。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (52)頑張り過ぎ

2019年08月09日 00時00分00秒 | #小説

 頑張り過ぎっ! と自分に強く言い聞かせるようにすれば、なんとか休めたりなんかして助かる。^^ 別にズルをする訳ではなく、暑い盛りなどは非常に重要なことである。これをしないで炎天下についフラフラと出て、しなくてもいい雑事をやった挙句(あげく)、頑張り過ぎてブッ倒れ、病院搬送・・なんてことになる。要は、チ~~ン! と鳴らすのではなく鳴らされる憂(う)きに遭(あ)うということだ。これでは頑張れない。^^
 とある老舗(しにせ)の魚屋である。
「朝から暑いねぇ~! こんな早くから店、開けるの?」
 通りかかった男が店の主人に訊(たず)ねるでなく窺(うかが)った。
「いやぁ~お客さん! こう暑くっちゃ商売になりませんからねぇ~。なにせ、お客さんが昼日中は買いに来やしない。夏場冬場はダメでしてね」
「朝、早いと来るの?」
「…ええ、まあ。ご近所の常連さんがいらっしゃいますんでねぇ~」
「昼間はどうしてるの?」
「昼間ですか? 昼間は、ははは…頑張り過ぎないように冬眠ですわっ!」
「冬眠? そりゃ、いい…」
「冷凍庫の別室へ入ってグ~スカとっ!」
「昼寝ねぇ~。いいご身分だっ! ははは…あやかりたいねぇ~、それじゃ!」
 通りかかった男は流れる汗を拭(ぬぐ)いながら店前から消えた。
「確かに…こう暑くっちゃ、頑張り過ぎはよくないな」
 そう呟きながら、男の足は残業で頑張り過ぎている職場へと向かっていた。
 皆さん、頑張り過ぎて助かる命が助からないことにもなりますから注意しましょう! 頑張り過ぎ注意報、発令です。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (51)神業(かみわざ)

2019年08月08日 00時00分00秒 | #小説

 もうダメだ…と思えたとき、神業(かみわざ)ともいえる奇跡の展開で助かることがある。この神業とは常識で考えられない不思議な力を指(さ)す。私が今から神業を見せる・・などと偉(えら)そうに嘯(うそぶ)く人は神業が出せないのは確かだ。^^
 とある競馬場である。今まさに世紀の一戦とも言える重賞レース、夏場記念が行われようとしていた。そのレースをスタンド席で見守る厩務員(きゅうむいん)、鬣(たてがみ)の姿が観戦席の中にあった。今日のこの一戦で鬣が世話をした馬、カバヤキドジョウが晴れて初出走することになっていたのである。
「鬣さん、どうなんでしょうね?」
 鬣の隣りの席に座る同僚の厩務員、毛並(けなみ)が徐(おもむろ)に訊(たず)ねた。
「ははは…毛並君、それが分かってりゃ苦労せんよ。まあ、二番手までは無理だろうから、五番手ぐらいまでに・・とは思ってるが…」
「なるほど…。勝ち鞍(くら)は神業でも出ないかぎり無理ですか…」
「出ないだろ、たぶん。ウナギホマレがダントツだからなっ!」
「味が違いますか?」
「ああ、値(ね)じゃ勝てるはずだがな、ははは…」
「確かに…」
 二人がペチャクチャやってるうちに、高らかにファンファーレが鳴り響き、出走となった。そして、しばらくしたレース後である。
「た、鬣さんっ!! やりましたねっ!!」
「ぅぅぅ…毛並君っ!!」
 鬣は意外な結果で助かることになり、歓喜(かんき)して咽(むせ)んだ。厩舎赤字経営改善のメドが立ち、助かったのである。カバヤキドジョウが神業で見事、重賞レース、夏場記念を征した勝因は、予想外の品不足による極端な高値のせいだった。^^ 

                                


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助かるユーモア短編集 (50)接戦

2019年08月07日 00時00分00秒 | #小説

 2チームで行われる競技で接戦となる試合は観ていて面白い。手に汗を握(にぎ)るような接戦で、試合の行方(ゆくえ)が分からない場合などは特にそうだ。こうした経過は視聴者や観戦者をして興奮の坩堝(るつぼ)へと誘(いざな)わせるから、大いに助かる。要は楽しませてくれる訳だ。観戦者や視聴者を代表して言わせていただくなら、必死にやっておられる選手の方々には誠に申し訳ない話だ。^^
 テレビ画面では、とあるW杯[ワールドカップ]の試合が行われている。観ている親子がブツクサと言い合っている。
「お、お前はっ! 汗を流されている方々に申し訳ないとは思わんのかっ!」
「そこまでは…」
「こういう接戦の場合は、どちらも贔屓(ひいき)なしで応援するもんだっ!」
「父さんはそう言うが、俺は◎だからなっ!」
「フンッ! 勝手(かって)にしろっ! わしは◎△とも、だっ!」
「それじゃ面白くないだろうが?」
「馬鹿か、お前はっ! 接戦は面白がるもんじゃないっ! 手に汗を握るもんだっ!!」
「手に汗を? そんなもんかなぁ~」
「ああっ! そういうもんだっ!! それで選手の方々も助かるっ!」
「いやぁ~助かるかなぁ?」
「助かるっ! 必ず助かるっ!!」
「負けた方は助からないと思うけどなぁ~…」
「いや、助かるっ! どちらも必ず助かるっ!!」
「そうなんだ…」
 息子は親の顔を立てたのか、その後は押(お)し黙(だま)った。
 接戦は双方ともに助かるのである。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (49)トラブル

2019年08月06日 00時00分00秒 | #小説

 社会的な事故をトラブルという。こんな事態には巻き込まれたくないものだが、万一、トラブルになったとき、スンナリと解決すれば、それはそれで助かる訳だ。助かる場合だが、これには特定の要件が存在することが分かる。例えば、喧嘩(けんか)を吹っかけられても、一方が冷(さ)めていればトラブルにはならない。点火源があっても、可燃物や酸素供給源がなければ着火しない・・という危険物の免許を持っておられる方ならよくご存知の要件である。^^
 とある繁華街で酔っ払い同士のトラブルが発生しようとしていた。当事者は薪(たきぎ)という中年男と燃火(もび)という若者だった。燃火は完全に頭にきていて、今にも薪に掴(つか)みかかろうとしていた。そこへタイミングよく通りかかったのが、警邏中(けいらちゅう)の交番巡査、水掛(みずかけ)だった。
「や、やめなさいっ!!」
 水掛はトラブルを鶴の一声で食い止めた。まるで、バケツの水を二人の頭からブッ掛けるように、である。二人はたちまち鎮火(ちんか)し、トラブルは終息した。
 トラブルから助かるには、最低限、早いタイミングの処理が必要になる・・という常識的なお話だ。だが、早いタイミングの処理だけで全(すべ)てがトラブルにならず助かるか? は別問題である。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (48)物(もの)

2019年08月05日 00時00分00秒 | #小説

 この世の三次元世界を偉(えら)いお方にでもなった気分で窺(うかが)えば、物(もの)の本当の姿が見えてくる。まず、物には生き物と、そうでない物がある・・ということだ。そうでない物とは生物の逆だから死物・・と呼べるだろう。事故でも物損(ぶっそん)で済めば助かるが、人損事故にでもなれば大ごとで、助かるものも助からない。物を支配するのが、他ならぬ私達、人間なのだから、これはもう、責任が重い・・と言わざるを得ない。そんなタワごとをブツブツ言ってないで、笑わせてくれっ! とダジャレで怒られる方もあろうが、それも一理(いちり)ある。^^
 とある家庭の一場面である。夏休みということもあり、朝から兄と妹が大層、賑(にぎ)やかに騒いでいる。
「お兄ちゃん! 私の小物入れ知らないっ?!」
「馬鹿野郎! そんな物、俺が知ってるかっ!」
「そんなことないわよっ! この前、いいの持ってるな、それ買ったのか? って訊(き)いてたじゃないっ!」
「…ああ、そんなこともあったか?」
「あったわよっ! 絶対、あった!!」
「…まあ、あったとしてだ。知らないものは知らないっ!」
「とかなんとか言って…」
「ば、馬鹿っ! あんな小物入れ、どうすんだよっ!」
「まあ、そう言われりゃ、そうだけど…」
「出物 腫(はれ)物、所(ところ)嫌わず・・って言うぞ。そのうち、スゥ~っと出てくるさ」
「あらっ! その言い方、怪(おか)しいわよっ! その場合の物はトイレのアレとか皮膚に出来るオデキでしょ?!」
「ああ、そうか…。まっ! 孰(いず)れにしろ、物は物だっ! ははは…」
 笑った瞬間、兄は机の上を見た。そこには、小物入れが、私はここにいますよっ! と、存在を主張するように置かれていた。
「ははは…なっ!!」
 兄は自慢げに机を指さし、妹に言った。だが、そのタイミングは悪かった。
「でも、なぜ、そんなところにあるのよっ!」
「んっ? さあ…」
 兄は言葉を失った。
 物はあった方が助かる場合と、なかった方が助かる場合がある・・という、なんとも物騒がせな話である。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (47)死後

2019年08月04日 00時00分00秒 | #小説

 お盆シーズンになったからという訳でもないが、なんとも気になるのが死後の世界である。死後が○○になるっ! と、はっきり分かっていれば、大いに助かるのは私だけではないだろう。^^ 死後がどうなるか分からないから怖(こわ)いのだが、一つ分かっているのは、死後が生まれる前へ戻(もど)る・・ということだろう。^^
 二人の老人が寂しげに、とある飲み屋で日本酒を飲みながら話している。
「まあ、一杯!」
「ああ、どうも…」
「この前まで隣(とな)りで飲んでましたが…」
「…ですなぁ~。なんとも寂しい限りです。ご返杯…」
「ああ、どうも…。だんだんと分からない世界が近づきますなぁ~」
「ああ、死後の世界ですな。怖いことです」
「ええ、この世で一番怖いのが死後です」
「うちのカミさんより怖いっ!」
「そうそう! カミさんは銀、死後は金!」
「怖さランキングですなっ!」
 二人は、しみじみと杯(さかずき)を飲み干した。
 この世に死後を超える恐怖はない・・という話だが、死後の恐怖が分からないから助かる・・とも言えるだろう。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (46)病気

2019年08月03日 00時00分00秒 | #小説

 なんといっても人を困らせる究極の妨害行為は病気である。先天性の寿命が後天性の病気によって変化するのは、なんとも嘆(なげ)かわしい事態だから、なんとかしたいっ! とは思うが、お医者でもなく医学の知識も乏(とぼ)しい私では、思うだけでどうしようもない。^^ だから、病気から全世界の人々が開放され、助かることを希(こいねが)うのみ・・などと偉(えら)そうに思う次第である。^^
 二人の男がとある病院の待合室で話し合っている。
「どこかお悪いんで?」
「いや、そうでもないんですが…。そう言われるあなたは?」
「私ですか? ははは…私もそんなところで」
「病気はいやですなっ!」
「そうそう! 特に金欠病!!」
「確かにっ! 実は…それ、なんです」
「ははは…私もですっ! 病気は病気でも金欠病! …余り、大きな声では言えませんが…」
「恋の病(やまい)と金欠病・・これは病院でも治(なお)せんでしょうな」
「確かに…。ただ病気は治せんでしょうが、ここには涼しさがあります」
「ははは…金欠病の者は、ここですか?」
「ははは…その病気は治ります、100%」
「ですなっ!」
 病は気から・・とも言うが、病気にはいろいろとあり、100%助かる病気でない病気もある・・という猛暑の馬鹿馬鹿しいお話である。^^

                                


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助かるユーモア短編集 (45)限界

2019年08月02日 00時00分00秒 | #小説

 人は自分の限界を超えようとする。有り難いことにその限界には決まった到達点がなく、無限に続く・・という点だ。これは、限界を超えようとする人々にとっては助かる。いくらでも努力できるからだ。到達点があれば、それ以上が望めないため、ある意味で到達点がないことによって人々が助かる・・とも言える。ただし、大食い競争で限界を超えてギネス記録になっても、腹具合を悪くして病院に搬送された人が果たして限界を超えられたかどうか? は不確かだが…。^^
 暑い日が続く午後のとある公園である。二人の男が我慢するかのようにベンチに座り続けている。助かることは、ベンチが幸いにも木陰にあるということだ。
「暑いですなぁ~~!!」
「ええ、まあ…。でしたら、お宅(たく)も、なぜっ?!」
「いや、毎日お見かけするんで、私もそれを訊(たず)ねようと思っとったんですっ!」
「ははは…そうでしたか。でっ?」
「その訳ですかな? 訳は限界を超えよう! と頑張っとる訳です、実は…」
「いや、実は私も、です。ははは…」
「昨日(きのう)は2時間17分で立ちました」
「私は2時間35分です」
「ほう! なかなかやられますなっ!」
「ははは…お互いにっ!」
 二人は、その後も公園の木漏(こもれ)れ日(び)の下で頑張り続けた。だが、お互いを意識したためか、数時間後、二人の姿は病室へと移っていた。幸か不幸か二人の命に別状はなく助かった。
 限界も、助かる程度にしたいものだ・・という忠告めいたお話である。^^

                                


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