かもめの観劇記の続き。主演の4人のお話を。
出演者の中で一番の存在感だったのはやはりアルカージナ役の大竹しのぶさん。群を抜いてる感じ。
この物語を動かしてるのは彼女だと感じられるのがすごく頼もしい。
個人的には彼女の声質は苦手なのだけど、その演技の幅には脱帽します。
アルカージナの愛人で作家のトリゴーリンは野村萬斎さん。
何も語らなくても絵になる美しさ。
いつもは和装なのにスーツがずるいくらいに似合う(和装をしても一番似合うんでしょうけどね)。
ニーナが恋するのも仕方がないよねって納得できる。
ニーナに自分の事を語る場面はほとんど一人語りの長いセリフだけど、明快で淀みなくスラスラと話すのは流石。
まあ、藪原検校の一人語りに比べれば短いのかもしれないですが、語りは本業に通じるものがるのだけど、こちらはセリフなので私的には今回の方が凄いなと思いました。
こんな主体性のないダメな男を萬斎さんが演じるのは珍しいのだけど、なんか違和感なかったです。
そして、こんなダメ男を演じてるのに素敵って思わせるこの人っていったい何なの?と思いました。(これ褒めてます)
違和感がなかったといえば生田くんもこの玄人受けする演技者の中に入っても存在感があって、良い役者さんになったんだなあと思いました。
特にラスト、ニーナがトレプーレフを訪ねて語る場面で、トリゴーリンを愛してる、どしようもなく好きなのと叫ぶ場面は2人の孤独とトレプーレフの絶望が感じられて、何も語ってないけれど涙が出そうになりました。
私が生田くんの舞台を観るのは「SHOCK」のライバル役以来で、ストプレは初めて。
彼自身も舞台は久しぶりみたいですから、これからはもう少し間隔をあけずに舞台に出てくれたらいいな。
そして、又、萬斎さんと共演して欲しいな。今回はあまりセリフを交わす場面はなかったので次があればもっと絡みのある役で・・・。
そして最後はニーナ役の蒼井優さん。
この役は彼女にぴったりなのではと思っていましたが、想像に違わず良い出来で、特に後半の不安定な精神状態で語り続ける表情はとても印象に残りました。
今回の観劇は久しぶりに芝居を観る醍醐味が味わえて大阪まで行って良かったと思いました。
これなら東京にも行けば良かったかもと少し後悔しましたが、チェーホフ苦手という意識が先に立っていたので仕方がありませんね・・・。
それにしてもこんな良いお芝居が名古屋には来ないというのが私的にはかなり寂しいです。
チェーホフが「かもめ」を喜劇と言っているのだそうですが、観劇後もこれを喜劇と言えるかどうかはわかりませんでした。
でも、喜劇的要素を入れ込む事で物語がわかりやすくなっていたのは実感しました。
余談ですが、今回、元親子共演を果たした野村萬斎さんと生田斗真くん。
作家の役でしたが、「あぐり」のエイスケさんも淳くんも作家だったよなあと帰り道思い出したのでした・・・。
放送が1997年では、息子が大きくなるのも当たり前ですね。
私も年を取ったという事です。