日曜日にコクーンの「ファウストの悲劇」の楽を観劇。
以前は楽とか初日とかにかなりこだわりを持っていたのですが、最近はそういう事はあまり考えないで観劇する事が多くなり、千秋楽の観劇は久しぶりでした。
日曜日の渋谷も久しぶり。
暑い1日ではありましたが、2011年7月から文化村の施設のリニューアルが行われるので、もしかしたら、このコクーンで観劇するのはこれがラストになるかもと思いながら、渋谷の街を歩いていました。
← 最初に貰った公演チラシ。実際とは出演者が違っていますが・・・。
さて、舞台です。
この「ファウストの悲劇」の悲劇って、普通の人が考える悲劇とは少し様相が違う。
悲劇って普通、自身ではどうにもならない運命に翻弄される感じなんですが、この物語ではどちらかというと自業自得というか、自分が悪いのにねという所があるお話なんですが、そこが人間の弱さというか、後悔しつつも快楽と名声に溺れてゆく姿が描かれている。
この辺りの心の振り幅が萬斎さんと勝村さんとの絶妙のコンビネーションで展開してゆく。
当初、お2人の共演を知った時、どんな形になるのか想像できなかった部分もあったのですが、結構ぴったりはまっていて、お互いにこの共演を楽しまれているのが感じられて、観ていてこちらも嬉しくなってしまいました。
カーテンコールではお互いを称え合うように抱き合われたのが素敵でした。
その他に白井晃さんや長塚圭史さん、木場勝巳さんなど、キラキラ光る方が随所に活躍されて、楽しい観劇でした。
以下は私の思い込み。
ファウストが誓約書を自身の血で書く場面は「モーツァルト!」でアマデがインクの出ない羽ペンをヴォルフに刺すシーンと重なった。
ファウストの書斎の大きな本はエリザの少年ルドルフとトートのシーンを思い出した。
ここまではミュージカル好きな者しか考えない事なんでしょうけど、「絶望して死ね」のセリフは「リチャード三世」のセリフそのものだったのでちょっとびっくり。
たまたま同じ時期に帝劇の「SHOCK」でも「リチャード」の場面があり、同じセリフが繰り返されていたので、かなり不思議でした。しかもこの「リチャード」の場面で使用されている音楽が、「ファウスト」の方でも使用されて(と思いますが・・・)、あれこの曲どこかで聴いた気がすると何度か思いました。
こんな偶然ってあるんですね・・・。
それもこれもひっくるめて楽しめたんですけれど・・・。
さて、この楽に行く2日まえに三谷さんの2011年の作品が発表されたのですが、その中に萬斎さんが主演する作品が含まれていて、職場だったのに声が出そうなくらい驚きました。
萬斎さんは三谷さんや野田さんの舞台に出てみたいとはおっしゃってましたが、状況的になかなか難しいのかなと思っていたので、本当に叫びそうでした。
なんだか久しぶりにワクワクしちゃいました。
だって、萬斎さんが演じるのは漱石なんですもの。
近代文学はあまり好きではないんですが、漱石だけは別格。
漱石の文章は本当に大好きなんです。
萬斎さんが演じるのは明るく元気な漱石ではなくて、神経衰弱状態の漱石ですが、なんだかぴったりな気がするのは私だけかな。
ちょうど1年先になりますが、今からとても楽しみな作品です。