川塵録

『インテグリティ ーコンプライアンスを超える組織論』重版出来!

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『論語と算盤』と『プロ倫』

2025年02月23日 | 経営・インテグリティ・エンゲージメント
【執筆原稿から抜粋】

『古典から学ぶ経営の真髄』(仮題)って本を執筆中です。

執筆原稿から抜粋して皆様の知的興味の肴にいたします。

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マックス・ウェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

 『論語と算盤』に似ている本に、マックス・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(以下『プロ倫』)があります。

いずれも資本主義の勃興期に倫理や道徳を説いたという共通点があります。『プロ倫』は『論語と算盤』より10年前に刊行されましたが、渋沢がこの本から影響を受けたかは不明です。

『論語と算盤』との対比の文脈で『プロ倫』から学ぶべきは、プロテスタント、特にピューリタンの禁欲的な節制です。

マックス・ウェーバーは、キリスト教のうちラテン系に多いカトリックの国よりも、ゲルマン系に多いプロテスタントの国の方が経済発展していることに気がつきました。

そしてその理由を、プロテスタントの高度な倫理観に求めました。予定説で知られるカルヴァン派やピューリタンが職業を「天職」と考えて高度な倫理観を維持したため、資本主義の発展に寄与したというのです。

その高度な倫理観を維持している代表的な人物として、避雷針を発明する等の多彩な能力を発揮し、今でも100ドル紙幣の顔として尊敬されているアメリカ建国の父ベンジャミン・フランクリンが紹介されています。

世界的なベストセラー『フランクリン自伝』で、忍耐、勇気、節約などの13の徳目を表にして、今日はこれ、今週はこれというように、毎日1個ずつフランクリンが埋めて修養した工夫が書かれています。

読者の皆さんが、いわゆる発展途上国に足を運んだ経験があれば、この倫理観が経済発展に影響するという説明は腹落ちするのではないでしょうか。

発展途上国では、約束の時間や交通法規等の社会のルールが守られないことが多いです。法律が法律どおり施行されず、賄賂が横行しています。社会生活全般に合理性が浸透していない。

そのような国の経済レベルは低いです。渋沢が生きていた100年前の日本でも、似たようなものでした。

このような歴史的・国際的な視点で見ると、渋沢が『論語と算盤』で道徳を説いたことが、単に古臭い東洋の古典を復古的に持ち出してきたのではない、ということがお分かりいただけるでしょう。
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