「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

「Jerry'sギター」代表&編集長「MASH & ハードパンチ編集部」が贈る毎日更新の「痛快!WEB誌」

<超短編>【通勤ひと駅】小説 『秋になったら「Jazz」を聴く』

2016-09-09 13:04:00 | 編集長「MASH」の短編小説集

ホテルのクラブ・フロアー

そこに有る専用ラウンジで、くつろぐ。

そんな時間が、僕は好きだ。

 

時は20時30分

夜の入り口となる、この美しい時間に

クラブ・フロアー・ラウンジを使っている人は、まばらだ。

僕は一人でココに居る。

 

先ほどまでは、このホテルにあるプールで

僕は泳いでいた。

15mプールを10往復ほど泳いだ。

これで毎日自分に課している距離を

今夜も十分に達成出来ている。

コレは重要なことだ。

 

いつも使っている

海の見える会員制のプールも悪くは無い。

しかし、時々シチュエーションを変えてみたい・・・。

そんな衝動に駆られる。

今日はそういう日だった。

 

そして、このような日のために

「クアトロポルテ」

は駐車場で出番を待っている。

僕はこの4代目に当たる「クアトロポルテ」が

一番マセラッティらしいと思う。

 

美しい気品と重厚な走り・・・

そして、ウッド・ステアリングとオール・レザー。

これこそが、クラブ・フロアーへ続く階段の役割を

十分に果たしてくれるのだ。

 

時間の使い方は、美しくなくてはいけない。

その美意識、を僕は重んじている。

時間こそが、すべてだ。

 

時は秋に入ったとは言え

残暑はまだ夏のままの姿を残している。

ラウンジでは「Jazz」が流れている。

小さく、会話や仕事の邪魔にならない音量

それが心地良い。

 

ピアノを中心とした演奏

「ビル・エヴァンス」

「バド・パウエル」

「セロニアス・モンク」

「ホレス・シルヴァー」

「マル・ウォルドロン」

それら巨匠達の、馴染み深い演奏が流れている。

 

秋には「Jazz」がイイ。

そう断言できる自分がいる。

ただ、残暑が残る今

これらの演奏を、どのような場所で聴くだろうか。

そうなると、このようなラウンジ以外、決して存在はしない。

 

自分の部屋に帰ったら

「秋の準備を始めよう」

そのようなアイディアを、彼らの演奏は僕に引き出させた。

 

レコード・ラックの「Jazzの棚」をゆっくりと眺めながら

今年の秋に、重点的に聴く作品を

ピック・アップしよう、と僕は思い立った。

 

秋には「Jazz」がイイ。

このアイディアを思いついた僕は

残っていた「ペリエ」を飲み干し

手帳に、いくつかの「思い当たる盤」を記した。

 

ワクワクする瞬間がそこにあり

それはこの最上階から見下ろす

「大都会の戦争」

とは無縁のように感じた。

 

待っていた彼女が

プールから、このラウンジへ戻って来た。

「お帰りなさいませ」

と、ラウンジのスタッフが声を掛ける。

 

その声と、彼女の笑顔

そして、「Jazz」

僕には、そのすべてが、見事に調和し

とても心地良く感じた。

<終>

 

<物語のあとがき>

http://blog.goo.ne.jp/12mash/e/4fe4f107cacd76e55f580c938bb23de3

 

<  Mash

2016年9月9日 筆