読者諸賢
いろいろ大変なことが起きているが御健勝か?
ハウリン・メガネである。
こういう時に何ができるのか…
何をすべきなのか…
考えることも増える一方だと思う。
だが、諸君、あえていう。
「考えすぎるな!」
どこかで募金をしているなら
10円でいいから入れておけ。
支援物資の募集があるなら安いタオルでいいから渡せ。
所詮人間、一人でできることは少ないぞ。
塵を積もう。山にしよう。
きよし師匠も事あるごとに仰ってるだろ?
「小さなことからコツコツと!」だ。
まえがきが長くなってしまったが
今回は盤の話を始める前に諸君に謝らなければならない。
前回あれだけ「次はイーノだ!」と息巻いたのだが、イーノはしばらく後だ。
……なんでって?……
アレサが亡くなったからだ。
アレサ・フランクリン。
偉大なるソウルクイーン。
私は彼女が入院したという号外を関東から西へ帰る新幹線でみた。
その時は
「アレサなら持ち直してくれるんじゃないか!」
と希望を込めて考えていた気がする。
それから数日後、ニュースで彼女の訃報が流れた。
「もう偉大なレジェンド達は亡くなる一方だなぁ…」
と当たり前の事実に思いをはせていたのだが、
そんなところへ本ブログの編集長「マッシュ氏」から緊急メールが入った。
「……次回のコラムはアレサの盤にしないか?」
当然だ。女王陛下へ礼を尽くして。
今回ご紹介の盤はアレサ・フランクリン、86年作品。
「アレサ」(邦題ジャンピンジャックフラッシュ)
しかも国内見本盤、帯付きと来た!
(で、この帯の文句がまた良いのだ。
「アレサを聴いて出なおしなさい。」だぜ!?
凄いよなぁ。なお、見ただけで濃密さが滴るようなクールなジャケットはロックファンにはベルベット・アンダーグラウンドでお馴染み、ポップアートの巨匠アンディ・ウォホールによるものだ。余談になるが量産可能なポップアートの始祖であるウォホールがアレサを題材にするとこうなるのか……という意味でもこの盤の資料的価値は大きい。彼の他作品とちょっと気配が違うのだ。気になる方はぜひ調べてみてほしい。閑話休題。)
さて、もう邦題の時点で感の良い方はお気づきだろう。
この盤、女王陛下が、やってるのだ……
ストーンズの「ジャンピンジャックフラッシュ」を!
(しかもこの曲のみキースがプロデュース!ギターにはキースはもちろん、ロニーも参加!
さらにいえば後にキースのソロアルバムに参加することになる面々、後のエクスペンシヴワイノーズの連中も参加!)
正直この時点でお腹いっぱいなのだが、
まだ特筆すべきことがある。ワム!からジョージ・マイケルが参加!
女王陛下とデュエットをしているのだ!
もう、素晴らしいのである。
全体のプロデューサーにマイケル・ウォルデンを迎えており、
80年代らしいサウンドプロダクトが炸裂しているのだが、
それが一切陳腐になっていない!
(この辺り、プリンスのサウンドプロダクトに近い気がする。彼も80'sらしい音なのだけど、陳腐にならない。要するに根っこのところで良い音を作ってるのだなぁ)
もう盤全体から素晴らしい音が炸裂しているのだが、今回はA面、B面それぞれから1曲ずつチョイス!
[A-4]ジャンピンジャックフラッシュ(以下JJF)
前述の通り、キース、ロニー、エクスペンシヴワイノーズの面々が参加!
この曲の凄いところはね……ベースから始まるのだよ!
ストーンズバージョンはもう皆さんご存知の通り!そう!天下のリフ・マスター
「キースのあのギター」から始まる。
これがアレサのバージョンではベースから始まり、鍵盤が入り、最後にギターが鳴りだす。
ギターの音も原曲とは違い、エレキのためか重心が低い(原曲はアコギ)。
原曲のギターが突進力と生み出していたなら、
このアレサ版の音は重力を生み出している。
これ、どういうことかお分かりだろうか?
そう!ソウル・ミュージックの作り方なのだ!
想像でしかないのだが、多分キースは本来、
このアレンジでやりたかったんじゃなかろうか。
「JJF」の本質を残したまま、見事に素晴らしくソウルフルな音に変えている!
なんならこちらのバージョンこそが本来あるべき姿にすら思える……
(ここで私が思い出すのは14年のストーンズジャパンツアーのことだ。あの時演奏された「JJF」はアレサ版の影響を確実に受けていた。原曲にすら影響を与えるほど、アレサ版は強烈だったのだ)
そして何よりも凄いのはここでのアレサの歌いっぷりである。
本家には大変申し訳ないが、ミックですらこうは歌えない!
ローからハイまで自由自在に伸び〜る!伸び〜る!(この辺り、ストーンズのコーラスを長年担当しているリサ・フィッシャーにも間違いなく影響がある……当たり前か(笑))
[B-4]If you need my love tonight
(邦題今宵ふたりで)
この曲ではアレサがデュエットを披露しているが、お相手はジョージ・マイケルにあらず!
(ジョージとデュエットしているのは[A-2]
「I knew you were waiting (for me)」
こちらも強烈な一曲!グラミー獲ってるんだから!)
そのお相手とは……ミスターFunkyベース
ラリー・グラハム!
そう、あのR&B業界名うてのベースマン、ラリーが、その喉を披露しているのだ!
諸君、ラリーさんをナメちゃいけない。
あのアレサを前に一歩も引かず、ソウルフルに歌い上げるこの歌声よ!
(そしてそんなラリーの歌を引き出すようなアレサの歌の素晴らしさ!)
先述の通り、ジョージ・マイケルとの[A-2]は本当に素晴らしいのだけど、なんというか、こちらの方が「男と女」感が凄いのである。
[A-2]が「リズム」ならこっちは「ブルース」だ。
両者を軽々と行き来できるアレサはまさに天性の「R&B」シンガーだったといえよう。
最後に総評として、アレサの歌の強さに触れよう。
この盤以外にもアレサは当然、素晴らしい盤を残している。
年代によってアレンジこそ変わるのだが、
どの時代の盤でも聴けば「アレサらしさ」が強烈に入っている。
なぜか?アレサが歌っているからだ。
それは特徴的な声だとか、上手いだとかそんな下らない話ではない。
アレサの歌にはアレサの全てが詰まっている。
全身全霊で、その魂の全てをアレサは歌っている。
故に彼女はソウルクイーンなのだ!
諸君!女王陛下に最大級のリスペクトを!
というわけで、イーノの話を楽しみにしていた方には申し訳ないがもう数回アレサの話が続く。
イーノも必ずヤルのでご容赦の程を。
……でもね、彼女の歌を聴くとこうなってしまうのだ。
聴いてるだけで魂がハウりだす!
諸君!やはりアレサは素晴らしいぞ!
ハウリン・メガネでした。