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ハウリンメガネが縦横無尽に吠える!「メガネの遠吠え!」(第16回) 「今こそバーズを語る(その4:最終回)」

2023-06-10 12:45:02 | 『ハウリンメガネ』コラム集

ハロー、読者諸賢。ハウリンメガネである。

数か月にわたる連載となったデヴィッド・クロスビー追悼、バーズの歴史振り返る。今回で最終回になる。

率直に言って、今回はどう書くべきか、かなり悩んだ。

ビートルズに憧れたアメリカン・ルーツ・ミュージシャンであるバーズ。
ビートルズへの憧れとアメリカン・ミュージックの素養が見事にミックスされた初期(ミスター・タンブリンマン)。

ラバーソウル、リボルバーを出したビートルズに呼応するように出されたサイケデリック時代(霧の五次元、昨日より若く)。

大幅なメンバーチェンジを繰り返し生み出されたカントリーロック期(イージーライダー、アンタイトルド)。

そしてこれらに付随する、各メンバーのソロアルバム、そして関連バンドの作品……どれも良作な上に、数が多い!

正直、どれをピックアップしても「これがバーズである」というまとめには相応しいような相応しくないような、バリエーションに富んだ作品群がバーズ関連作なのである(それこそクロスビー追悼という意味ではCSN(&Y)は外せないし、それを言い出すとバーズの枠を外れて、ニール・ヤングにまで話が及んでしまう)。

ではそんな多様性に富んだバーズの歴史を締めくくるのに相応しいアルバムはあるのか……ある。

バーズの最終章を語るに相応しいアルバムはやはりこれでしょう。

「オリジナル・バーズ(73年作:メインフォト)」

2ndアルバム、「ターン!ターン!ターン!」以来、8年ぶりにオリジナルラインナップ(ジーン・クラーク(vo)、ロジャー・マッギン(g,vo)、デヴィッド・クロスビー(g,vo)、クリス・ヒルマン(b,vo)、マイケル・クラーク(dr,per))揃い踏みで制作されたバーズの最終作、それがこの「オリジナル・バーズ」なのである。

一般的にバーズらしくないという評価を下されている本作だが、個人的にはバーズの最後を語るのに最もふさわしい作品はこれ以外にない。

「ターン!ターン!ターン!」以降、幾度ものメンバーチェンジを繰り返してきたバーズだが、実際には離散集合とでもいうようなコラボレーション作品が多数あり、表層にこそ現れなかったものの、実際にはメンバー間の交流は続いていた。

クロスビーのCSN(&Y)、ヒルマン、マイケル・クラーク(とグラム・パーソンズ)擁するフライング・ブリトー・ブラザーズ、ジーン・クラークのソロ、そして一人、バーズの看板を守り続けたロジャー・マッギン。

その内実がどうだったのか本人達以外知る余地はないのだが、彼らはバーズから離れた後も、互いに影響しあい、カントリー・ロック・シーンを形成していたのである。

そんな彼ら、オリジナル・バーズが残した「オリジナル・バーズ」。
先述の通り「バーズらしくない」というのが一般的な評価らしいが、はっきりと書いておこう。

これはバーズがバーズとして到達した、彼ららしさに満ちたラストアルバムである。

確かに初期のビートリーなニュアンスは、はっきりとは表に出ていない。
だが、メロディやハーモニーの感覚、コーラスワークにはっきりとビートルズの香りがする。

サイケデリック時代のアグレッシヴなサウンドアプローチはない。
だが、コードワークや音使いにサイケの匂いがたっぷりと残っている。

「イージー・ライダー」に代表されるカントリーロックバンドとしてのバーズらしさでいえばこれも控え目である。
だが、ロジャーのプレイするバンジョーやクロスビー達の弾くギターからはきちんとカントリーを消化した音が出ている。

そして、バーズを離れてからの各自の経験値がこの盤には表れている。
初期の透き通ったコーラスは聴けないが、代わりにクロスビーがCNSで学んだであろう重厚感のあるコーラスワークを聴くことができる。
マイケル・クラークのドラムは軽やかさを失った代わりに、ヒルマンのベースと入り混じって土の匂いのするグルーヴに満ちている。
ロジャーは12弦ギターを使わなくなったが、それでも彼のプレイは「あのバーズ」の気配が溢れている。

いうならばザ・バンドの「ミュージック・フロム・ビッグ・ピンク」に近い、アメリカンミュージックのアーシーな美しさにビートリーなセンスが見え隠れする傑作、それが「オリジナル・バーズ」だ。

ビートルズに憧れ、サイケデリックムーブメントを真っ只中で経験し、ルーツであるカントリーミュージックに立ち返った、そんな彼らの歴史が作り出したのが「オリジナル・バーズ」だ。

ただのビートルズフォロワーではなく、ただのサイケデリックロックバンドではなく、ただのカントリーロックバンドでもない、それら全てを経由した「バーズ」にしか作れなかった最高のスルメ盤、それが「オリジナル・バーズ」だ!

(正直、この原稿を書きだす前にバーズ絡みのアルバムを回していたのだが、結局最後に「オリジナル・バーズ」を回してしまっていた。
派手過ぎず、たるくもない、レイドバックしたグルーヴに乗って、重厚なコーラスでグッドメロディが流れていく心地よい時間……誠に良いスルメ盤である)

ビートルズに憧れたアメリカン・ルーツ・ミュージシャンの集まり、ザ・バーズ。
そんな彼らの歴史、そして彼らが最後にたどり着いた境地に思いをはせ、当連載は幕引きとしよう。

じゃ、また次回!ハウリンメガネでした。



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