「Jerry's Mash」のアナログ人で悪いか! ~夕刊 ハード・パンチBLUES~

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Bob Dylan(ボブ・ディラン)『Woodstock 94』を聴いた・・・そんな「あの夜」(新宿西口の夜空)

2024-11-14 12:10:02 | BOB DYLAN

そう・・・
あの頃の俺は
『(株)リクルートで毎日遅くまで働きながらも、空いている時間はエレキギターを抱えて夜な夜なライブをこなしていた』んだ。
「街から街へ・・・」
と言っても、
『今日は新宿、明日は四谷』
みたいな・・・ホント、駅ごとの街をねぇ(笑)。

東京は信じられないほどのBig Cityだから、駅ごとに各々の世界が存在し、
『自分にとって良かったステージの夜も、悪かったステージの夜も、とんでもなくブルースな気持ちにさせられた・・・』
ってもんさ。

しかし、あの東京と言う街は不思議だよねぇ
『駅が変われど、あの孤独感はいつも同じ・・・』
一体なんなんだろうね?

大都会は人が多過ぎるからなのだろうか。
イヤになっちまうゼ!
まったく・・・(苦笑)

そこでコテンパンに
『日々、自分の無力感を感じていた・・・』
俺はその時22才・・・

当時の彼女とも隙間風が聴こえて来た頃、アメリカでドデカイFesが開催されたんだ。
『Woodstock 94』
そう、『60年代伝説のWoodstock』の名を冠とした超大型リバイバル・ライブ・イベントだ!

俺がこのフェスで覚えていること・・・それは
『敬愛する偉大な音楽家が出演したこと』
その人とは、もちろん
『ボブ・ディラン』
に他ならない。

89年から続いていた
『Never Ending Tour』中の彼が、実に似つかわしくも無い・・・そんな、この巨大なフェスに出演したのだった。

当時はその話を聞き、ニュースで少し映像を見たくらいで、数ヵ月後の『ブートCD』での裏発売を心待ちにし、いよいよ『その待ち侘びた全容を耳にした』そんな俺だったのさ。(今やこの音源も変なレーベルからCDはもちろん、アナログ盤でもハーフオフィシャル的な完全版で出ているんだよね!)

新宿でのライブ前、リハーサルを抜け脱し西新宿のどこかの店(何件か歩いて一番安かった店)にて購入し、
「さして盛り上がりもしなかった・・・」
そんな自分のライブ後に
『荒(すさ)んだ心』のまま、CDウォークマンでこのブツを聴いたんだ。

沁みた・・・
「何万人?いやいや何十万人の前でコレか!」
「彼の美しい音楽は彼らには届いていない・・・」
「ボブでさえ届けられないものがあるのか・・・」
色々な思いが駆け巡った。そして、新宿駅西口のバスターミナル上の歩道橋で独り泣いた。

俺にはボブがこの公演で
「少しでも若いオーディエンスに届けたい・・・」
その一心で
『エレキギターを搔き鳴らし、モガイテイル様に聴こえた』
それは、22歳の俺が
『ついさっき、数十人の客の前でヤッテイタことと同じ』様に・・・

この日のアンコールは
「Everybody must get stoned!」
そう、『雨の日の女』

ちなみに俺はこの箇所を
『マリファナ説』
ではなく
『新約聖書説』
(ヨハネによる福音書第8章)
だと思っているのだが・・・

『永遠と続きそうなブルース・・・』
なのだが、ボブはあっさりと、このアンコール曲を終える。

昨年のボブ・ディラン来日公演時に、ある熱心なボブ好きの女性から尋ねられた
「ビートルマニアのMashさんにとってボブのどこが好きなの?」
俺の答えはひとつだ。
「ボブの音楽は本当に美しいんだよ!」

そう。あの夜も美しかった。
怒号が飛び交い、人で溢れかえる新宿の街。

『酔っ払いが人にぶつかり、まったく違う人に会釈をし、謝っていた』
そんな、あの夜。
『数時間前までステージで無我夢中にギターを弾き歌う俺がいた・・・』
そんな、あの夜。

俺にとってイヤなもの全てを見ないフリをし、ただただCDウォークマンの音に集中しながら夜空を見上げた。

見上げれば美しい夜空があった。
「都会とは思えない・・・」
そんな星をいくつかは見つけられた。
そして
俺は無性に『シューティングスター』を聴きたくなった。

あの夜、まさに俺は「君のことを考え、自分のことを考えていた」のだ。そして、こう思った。

「どうやら、みんなが気に入るミュージシャンにはなれそうにも無い」

誰もが通る道・・・俺も今の君のように、22歳の時には『踊り場に居た』。

今このCDを聴き直し、思う。
「やはりボブの音楽は美しく、あの夜に感じたようなエレキギターには聴こえない・・・」
当時は俺自身が、自分と重ね合わせ、勝手に解釈していたのだろう。

ボブはいつも通りのボブに聴こえ、やはりボブの音楽はとてつもなく美しいものなのだ。どんな音楽よりも自分を見つめ直させてくれる音楽・・・

ボブ・ディランの音楽、それは俺にとって
「永遠に、いつも自分の傍らに存在する」そんな大切な音楽なのである。

《編集長& Jerry's Guitarオーナー「Mash」筆》

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