【西暦2017年4月14日.月面アポロ基地】
シーアンタレス隊は月面アポロ基地で、長い長い暇な日々を送っていた。
仕事は暇ではないが、軍人として生きている身としては戦闘もなく暇である・・・
むしろこの平和な事態こそありがたいものであり・・・・
暇であると言う事は国民にとっては平穏無事であり、安心が守られている証拠である。
いつまでもこの暇な日々を続けたい・・・・・
シーアンタレス隊のあるオフィスの窓からコーヒーカップを手に取りながら・・・
部隊長である星村和也はそう考えていた。
星村絵里「ほい・・・和也、宇宙軍総司令部からの依頼の書類終わったよ。確認してくれるかな?」
星村和也「うんいいよ。少し疲れただろうから、そこのソファーで休んでね。」
星村絵里「ありがとう和也、愛しているわ。」
愛する妻の絵里が仕事の一部が終わった事を報告してきた。
和也は直ぐ様受けとると、絵里に休むようにようにお願いする。
絵里は笑顔で喜ぶと、近くに置いてあったソファーに座った。
絵里は結婚前モーア・カリダムと言う名前のゼントラーディ軍兵士であり・・・
第一次星間大戦当時はエースのミリアことミリア・ファリーナの部下だった・・・・
ミリアに従いSDFー1マクロスを襲撃した際に、ロイ・フォッカーを討ち取った事がある。
その後、第一次星間大戦を生き延びると
可変戦闘機パイロットになる事と、新たな戦いに備え新統合軍に入隊し・・・
新統合軍オセアニア軍管区所属の可変戦闘機乗りになった。
和也との出会いは一条輝らと共に参加したVF-X-4開発試験であり・・・・
月面アポロ基地に勤務していた和也に一目惚れし、任務終了後・・・
態々オセアニア軍管区から月面アポロ基地に転属し、ある程度の交際を経て・・・
無事に結婚、子宝に恵まれ幸せに暮らしている。
そんな今は特務部隊であるシーアンタレスを夫婦で率いている形だ。
ミアン「今日も夫婦仲いいですね、隊長と副隊長。」
ジャック「リア充過ぎて何とも言えない・・・」
ミハイル「おまけに相棒で・・・・」
カーランド「ライバルでもあるからなそれにしても・・・羨ましいな。ミアンちゃんも、副隊長と同じメルトランだからいい相手・・・いなかったら」
ミアン「その話は間に合ってますから、結構・・・・」
部隊隊員であり絵里と同じメルトランのミアン・フローランは・・・・
ジャック・ミハイル・カーランドなどのシーアンタレス隊員と共に二人の仲を話し合う
仲睦まじい夫婦であり・・・
見ていても、気分よくなる光景である。
シーアンタレス隊員たちはこれを見て日々のストレスを発散させていた。
まるで漫画かアニメから出てきたカップリングのようだ。
星村和也「よしこれで午前中の仕事は終わったね、皆はどうかな?本日の部隊員報告係」
ミアン「ハッ・・・・私達一同、与えられた仕事全て終わりました。一人も抜けなく完了です。」
星村和也「ご苦労様、少し早いけどお昼休みにしようか。各員は午後13時半までにパイロットスーツに着替えている状態でブリーフィングルームに集合。では午前中はこれで解散。」
『ハッ』
午前中の仕事はスムーズに終わった。
仕事がスムーズに終わったので、休憩時間が少し延びた。
午後からは可変戦闘機を用いた月面演習飛行エリアにて訓練飛行をやる予定だ。
和也の号令の元、シーアンタレス隊員は敬礼して部屋から出ていく。
皆仕事疲れやお腹がペコペコで五分もしないうちに和也と絵里を除き誰も残らなかった。
誰もいなくなった様子を見届けると・・・・
星村和也「さて僕らも食堂に行こうか、絵里何食べたい?」
星村絵里 「そうね・・・・・ルナビーフのシャトーブリアンはどうかしら?高いけどかなり美味しいらしいわ。」
星村和也「ルナビーフのシャトーブリアンか、なるほどね。よし行こうか、今日はそれにしよう。」
和也と絵里も食事するため士官食堂に向かった。
いつも昼ご飯食べる時は和也は絵里に美味しいものを食べさせたいので・・・
絵里が食べたいものを聞いてから食べるのが恒例であった。
ゼントラーディ人である絵里は地球の食べ物の1つ1つが物珍しいものばかり・・・
食べ物に目を輝かせ見ている絵里は和也にとっては微笑ましい光景であり・・・・
出来る限り絵里が食べたいと思えるものを食べさせてあげたいと思っていた。
星村絵里「凄く美味しい~、シャトーブリアンの肉美味しい~」
星村和也「おっと絵里、口が汚れてるよ。」
星村絵里「ごめんごめん。」
美味しそうに食べる絵里・・・・・
思えば絵里の同胞であるゼントラーディ人はこの美味しい食べ物を知らないだろう
逆にしかり絵里も皮肉な話だが先の大戦が無ければこの食べ物を食べる機会はなかっただろう
絵里はモーア・カリダムと言うゼントラーディ人であり・・・・
古代文明プロトカルチャーが作り出した生物兵器のクローン兵士の一人だ。
また絵里と同じ型のクローンも銀河の何処かで戦っている。
そう考えると絵里を含む同じ型のクローンそして他のゼントラーディ人はなんとも幸運か
いや、地球の価値観を押し付けてはダメだ。
絵里のように幸せを得たゼントラーディ人もいるが・・・
地球の生活を得た上で不幸になり不満を持つゼントラーディ人もいる・・・
とは言え・・・・
星村絵里「このケーキ美味しい~」
今目の前にいる妻の絵里の笑顔が見れてよかった。
絵里自身は地球文化には積極的に好んでおり・・・・・不満はない
戦いばかりのゼントラーディにはない人生を謳歌している。
大勢の人は救えんが・・・・
せめて目の前にいる人だけでも幸せになってほしい
和也は美味しくケーキを食べる絵里の笑顔を見ているとそう思えてくる。
お昼ご飯を食べ終え、二人はアポロ基地のクレーター内部施設の中庭を散歩した。
すると・・・・・
星村絵里「ねぇ、今更な話だけど聞いてくれるかな?」
星村和也「なんだい絵里?」
星村絵里「私ね、前は戦う事や戦う事を楽しむ事ばかり考えていたけどね。和也を始めとする地球人を見てきて、誰かを全力で守りたいって思えるようになったの。」
突然、絵里が自分の心中を語りだす。
あまりにも突然の絵里の心中語りに和也は少し驚いてしまう。
今までそんな事を言ってなかったのに・・・・・
結婚して5年以上経つが、こんな事は初めてだ・・・・
星村絵里「勿論、子供たちや和也は守りたい存在は当然だけど・・・・・命を懸けて国民を守るなんて考えた事なかった。」
星村和也「命を懸けて国民を守る・・・・・ゼントラーディ人にはない概念だったね。」
星村絵里「うん、あの頃の私には仲のいい戦友はいたけど、守るべき国民も・・・・守るべき家族もいなかった。」
絵里はモーア・カリダムと言うゼントラーディ人として生まれた。
戦友はいたが、父親や母親と言った地球人にいて当然だった家族の存在はいなかった。
プロトカルチャーの遺した生物兵器の一人として家族からの愛情を知らないまま・・・・
多くの命が散り逝く戦場を生き抜いてきた。
先の大戦に参戦し、マクロスとの戦闘で仲のいい戦友が戦死した事がある。
そこで初めて、仲間の死からのショックから出た感情が表に出て・・・・
ロイ・フォッカーを致命傷を追わせた事があった・・・・
この事件をきっかけに、戦いに切なさを感じる。
ボドル基幹艦隊決戦後に、望月千代などの地球人との出会い・・・
可変戦闘機の魅力に惹かれた事・・・・・
様々な事もあってか、マイクローン化し新統合軍に入隊しオセアニアに配属された
それでも心の溝を埋める事が出来ず、夜泣く生活を送ってた。
ひょんと所から一条輝と共に参加したVF-X-4のテストパイロットグループに参加。
同僚と共に月面アポロ基地に向かった。
そこで和也に出会い、お互い一目惚れし・・・・・
絵里はオセアニアから和也のいるアポロ基地に転属を決意・・・・
VF-X-4のテストに従事しつつ、転属が受理され・・・
帰還予定日
星村和也「カリダム少尉、何故ここに・・・何故・・・地球に帰らないんだ!」
モーア「私は帰りません、貴方の力になりたい・・・貴方の中隊に転属希望し受理されたわ。」
星村和也「しかし、何故・・・何故転属を?」
モーア「私は貴方と一緒にいると、なんとも言えないけど・・・一緒に過ごしたいって思えるのよ。」
モーアは地球に帰らず、和也が当時所属していた中隊に転属したと告白した。
突然の告白に、和也はかなり驚き理由を問いただすと・・・
一緒に過ごしたいと思えるから・・・
和也自身、モーアの告白に喜べるが・・・・・
星村和也「カリダム少尉、自分では一緒に過ごしても幸せにはなれない。」
モーア「何故、何かに理由あるの?」
星村和也「僕は派閥軍人の息子だ、派閥争いに君を巻き込む事になる。一緒にいてはダメだ!」
派閥軍人星村謙三の息子であるため、モーアの身を案じ丁寧に断る。
和也の言葉にモーアは驚きショックを受ける・・・・・
まさかこんな事を言われるなんて思ってもいなかった。
しばらくショックで唖然としてたがすぐに立ち直り・・・・
モーア「私には覚悟があります、生死を共にさせてください。」
星村和也「僕は君を不幸にさせるんだぞ!それでも・・・」
モーア「不幸になってもいい、貴方と一緒なら大丈夫。戦えるわ!」
自分自身の覚悟を和也に強気な言葉で言う。
物凄い迫力であり、一時は押されるが冷静な口調で忠告する・・・
何が何でも好きな人を派閥争いの犠牲になってはいけない。
普通の士官として暮らし、いい人と出会って幸せになって欲しい。
本当にモーアの幸せを願うならばこうするしかない
和也はそう考えていた時
星村謙三「和也よ」
星村和也「親父・・・・」
星村謙三「素直になれ、そこにいる少尉の覚悟は本気だ。お前があの少尉が好きなのは知ってる、素直になれ・・・素直になってあの少尉の気持ちに答えてやれ・・・・」
護衛を引き連れた和也の父で、宇宙軍幹部の星村謙三が現れ・・・
素直になり、モーアの気持ちに応えるように言った。
和也はモーアの顔を見て・・・ふと考える
モーアの顔は本気だ、冗談ではない・・・・
止めても、引き下がるつもりのない表情だ・・・
父謙三の言葉とモーアの覚悟を受け、等々根負けし・・・
星村和也「カリダム少尉いやモーア、さっきは悪かった・・・君の気持ちを受けとる・・・」
モーア「和也・・・・・・」
星村和也「これからどんな事があろうとも、後悔しないで生きていこう。よろしくお願いします。」
モーアの気持ちを受け取り、二人は恋人関係になる。
元々かなり親密だったためか、二人は程なく結婚・・・・
第一子の星村志保美、次女の星村真理、そして今年初頭生まれ星村有理
三人の子宝に恵まれ、幸せに過ごしている。
一方
ここまでの人生で、怪我したり苦しんだり・・・・
二人で協力して苦難を乗り越えたりなどの・・・
自分たちが所属している新統合軍での出来事はかなりいろいろ苦労した
星村絵里「いろいろあったけど、和也が一緒にいたから今日のこの時間を生きていると思うと・・・和也には感謝しきれないわね。」
星村和也「僕の方こそ、絵里・・・素直になって君を迎え入れてよかった。大事な家族であり、大事な相棒だよ。」
星村絵里「ありがとう・・・・本当に守る者の為に生きる・・・本当に家族っていいね。」
星村和也「そうだね。」
絵里が得た家族
・・・・家族を得た事により、守るべき者ができた。
守るべき者を得たと言う事は戦う意識を変えるきっかけとも言える・・・・・
戦いこそが正義、戦いこそが娯楽であったモーアは・・・・・
結婚と同時に過去の自分を変える意味で自ら星村絵里と名乗り戸籍記入をした。
家族と言う守るべき者を守る地球人の兵士として・・・・生きる
それが絵里の結婚して得た信条である
一方の和也も絵里と同じ気持ちだ。
どんな事があろうとも絵里と子供たちを守る・・・・
自分の身を盾にしながらも・・・・守ってみせる
絵里と考えは若干考えは違えど、家族を守りたい気持ちは一緒だった。
「広報部の者ですが、二人の写真撮影よろしいでしょうか?」
星村絵里「私たちでよければどうぞ。」
ベンチに座っていると広報部の若い男女の兵士がカメラを持ちながら
和也と絵里に写真撮影してもいいか聞いてきた。
絵里は積極的に了承し、和也は絵里に同意するように頷く。
この機会だし、二人っきりのいい写真を撮ろう・・・
和也はそう考え、絵里と共に並んだ。
この写真は二人の歴史の一つの流れ
言わば途中・・・・
今、絵里と和也の人生は途中・・・・
まだ二人の人生の中では途中の物語、途中経過しかない・・・
二人がこの先に行き着く先がバッドエンドかハッピーエンドなのか・・・・
二人の人生の最期になるまで途中経過が続くだろう・・・・
だが
この先どんな過酷な未来だろうと、辛い未来だろうと・・・・
二人は一緒だから乗り越えられる。
二人の人生の旅路は終わらない
二人の人生の旅路はまだ始まったばかりだ・・・