楽しいブログ生活

日々感じた心の軌跡と手作りの品々のコレクション

海野十三の「不思議なる空間断層」

2016-10-22 21:34:20 | 


本日は読書会の例会日。海野の「不思議なる空間断層」の調査票を作成し、例会場所に持参。
午前中に夫が退院して帰ってきたので、気忙しくて作りたかったかぼちゃケーキを断念し、代わりに1個だけマジックでハロウィン化粧した自宅の柿をお土産に。
(昨日は昨日で障子の張替え、シーツや布団カバー、枕カバーの取替えなど、珍しく主婦の仕事などしたもんですから、神様が身震いして、地震が起こったのかと思いました)

初出は「ぷろふいる」 1935(昭和10)年4月

時代設定 発表時と同時代程度

作品舞台 主人公、友枝八郎の夢と現実

登場人物 ・主人公、友枝八郎 ・友枝の友人 ・杉浦予審判事

あらすじ

ちょっと風変りな友枝八郎は、夢の話をよく友人に聞かせる。
最近見た不思議な夢はこうだ。
「窓が一つもない長い廊下を歩いていた俺はドアノブが金色の部屋へ入った。
そこには大きな鏡があってそこに写った自分の顔は普段の青白くて、弱々しい丸顔ではなく精悍で勇ましい顔だ。
鏡の前で満足げに自分の姿を眺めていたが、後ろに男女のカップルが現れ、よくみると女は自分の愛人である。
二人の様子を鏡越しに盗み見ていた俺はしかし、鏡に写った自分が本体とは異なった動きをすることに驚く。
何故か鏡の中の俺はピストルを持ち、愛人を狙っている。
パニックに陥った俺は鏡の中の自分に合わせて愛人を撃ってしまう。
そして後日、俺はまた長い廊下を歩いてドアノブが金色の部屋へ入る。
同じように男女が現れる。鏡の中の俺は今日は本体とぴったり一致している。
以前の夢をなぞるように裏切り者の女を撃つ。しかし、愛人と思った女は友人の細君だった。」

みどころ

どこまでが夢でどこからが現実なのか最後まで判然としないように描かれている。
二転三転する現実認識。
ちょっと風変わりという友枝の人物設定、なぜ、鏡の中の自分の風貌が変わっていたのか、そして、本体と鏡の像の乖離の原因は?
夢と思っていたが、友枝は殺人を犯してしまったのか、その筋書きの動機は?曖昧模糊とした不可思議な世界に誘われ、楽しめる作品となっている。

しかし、前回の「断層顔」は何となく分かる気はするが、今回の「不思議なる空間断層」というタイトル、なぜ断層なのか解せません。
緻密な伏線が張られてあるわけではないのだが、(ああ、そのような事情が考えられないこともないな)という後付の説明に作者のストーリーテラーぶりを見る思いはする作品でした。
コメント
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