テキスト主体

懐中電灯と双眼鏡と写真機を
テキスト主体で語ろうとする
(当然、その他についても、語ったりする)

組織の中の双眼鏡

2013-05-16 23:06:24 | 双眼鏡 望遠鏡
民生用の双眼鏡では、ズームや、高倍率など、本来見え味とは相反する要素がセールスポイントとなるため、売れ筋双眼鏡が高性能双眼鏡になるわけではありません。
実質、光学機器を製造開発するには、硝材の確保や金属加工技術など、様々な要素が必要で、高性能を追求すれば、価格も高価になりがちです。故に、コストとセールスポイントをともに要求される民生用途だけではいまの高性能双眼鏡はほぼあり得ず、高性能=高価、な製品しかあり得なかったでしょう。しかしながら、望遠鏡と双眼鏡は、主に軍用、官用の分野で発達してきました。特に戦場の双眼鏡は、古くは騎兵が主流の軍隊でも馬上から素早く敵を発見するために重用され、近代に”砲”が開発されてから、着弾観測(=照準の修正)用として、高性能な製品が要求され、また索敵用としても主要兵器の一つとして、あまねく軍用双眼鏡が世界中に行き渡るようになっています。
突出した高性能と、軍という大きな組織で使用されることによる量産効果は、本来の役割以外(索敵、観測)にもたとえば野鳥観察用途、民生用の天文双眼鏡などを産み、その他の業務用、航海用などとともに、現在の需要を作り出してきました。受動索敵用の兵器としては、未だに非常に高性能なものの代表である双眼鏡ですが(というか、受動索敵兵器としてこれより優れたものは赤外線暗視装置、水中で使用されるパッシブソナーくらいしかありません)、やはりもっとも多く数が装備されるのは、独立して行動する分隊、小隊の頭数が一番少なく、兵員数が多い陸軍でしょう。
先日、勝間光学機械さんで販売された、中近東用のカーキ一色の双眼鏡、聞くところに因ると、数千台の受注が有ったらしく、恐らくは数万人規模の陸軍を保持する国への納入品かと思いますが、拙ブログでタマに云うところの、距離感の一方的な喪失、を可能にする兵器が大量に使用される様子は、想像すると圧巻です。