あの日は、少し寒かった、金曜日。
連休前の昼下がりだった。
大渋滞の道路。
フロントまであふれるホテルの宿泊者。
ヘルメットをかぶった帰宅者の波。
駅の通路に座り込んだ、帰宅困難者の列。
呆然とうずくまっていた、卒業式帰りのはかま姿の女の子。
テレビの向こうでは、
積み木を崩すように、街が飲み込まれ
大きな製油所が、何時間も燃え続けていた。
何もかもが本当でないような気がした。
何もかもが本当であってほしくなかった。
でもすべては、ほんとうだった。
新聞の広告で見た言葉。
「ボランティアの皆さんは“忘れない”といいます。
私たちは“忘れられない”んです」。地元のひとの言葉。
3月11日が、まためぐってきました。
午後2時46分。祈りを捧げる。
いまの私には、それしかできませんでした。