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日本半導体の周辺産業 【連載】半導体一筋60年⑪

2024-08-01 05:30:13 | 半導体一筋60年

【連載】半導体一筋60年⑪

日本半導体の周辺産業

釜原紘一(日本電子デバイス産業協会監事)

 


半導体業界の「川上」と「川下」

 これまで半導体についての説明は、主に半導体製品(半導体デバイス)そのものについてでしたが、今回は半導体の周辺産業について説明します。周辺産業によって日本の半導体産業が依然として世界に大きな存在感を持っていることが分かるでしょう。

 半導体(に限りませんが)の製造過程を川の流れに例えて、川上産業とか川下産業と呼ぶことがあります。材料を投入してそれを加工し、完成させ機器に組み込み最終製品として世に送り出すという流れが考えられますが、材料の部分が「川上産業」であり、機器(テレビ、パソコンなど)を作る部分を「川下産業」と呼ぶ訳です。以下は川上産業についてのお話です。

半導体材料には何があるのか

①化合物半導体
 半導体デバイスの材料としては、先ずはシリコンがあります。シリコンウエハの日本メーカーで代表的なのが、信越化学と(株)SUMCOです。これらの2社で世界の60%近くのシェアを持っています。
 シリコン以外に化合物半導体と呼ばれるものがあります。代表的なものはガリウムヒ素(GaAs)、インジウムリン(InP)、窒化ガリウム(GaN)です。
 これらの材料にPN接合を形成し電気を流すと光を発します。すなわち発光ダイオード=LED(Light Emitting Diode)ができます。化合物半導体の材料によって赤、緑、青の光を発するダイオードができますが、各種の表示装置に多く使われています。
 3色を組み合わせると白色の光ができるので、近年蛍光灯に代わって照明に多く使われています。寿命が長く、省エネにもなるので、自動車のパネル表示、ヘッドライトやテールランプなどにも使われ、信号機もLEDへの切り替えが進んでいます。

 上記以外で近年注目されている化合物半導体に炭化ケイ素(シリコンカーバイトSiC)があります。これはパワー半導体に使われ、インバーターの小型軽量化や性能向上に寄与し、電気自動車や車両用に需要が拡大しています。化合物半導体の主な日本のメーカーには、住友電工半導体材料(株)、古河電子(株)などがあります。

②リードフレームとパッケージ(外装部品) 
 ICの組み立て工程では、先ずチップをリードフレームに接着(銀ペーストなどで)します。リードフレームメーカには、新光電気工業、後藤製作所(三菱マテリアルの子会社)等があります。
 リードフレーム上のチップを保護する為に、エポキシ樹脂でモールドしたりセラミックパッケージに入れたりします。パソコンの心臓部に当たるMPU(マイクロプロセッサー)はチップが大きく電極も多数あるので、大型のセラミックパッケージが使用されています。この分野では京セラやイビデンが大きなシェアと持っています。

▲各種ICパッケージ(京セラ)

▲ICパッケージ基板(イビデン)

ICパッケージ(日本特殊陶業)

▲リードフレーム(後藤製作所のHPより)

▲リードフレーム(新光電気(株)HPより)

 

③化学薬品、ガス類
■高純度ガス
 加熱したシリコンウエハに酸素を流して表面に緻密な酸化膜を形成する事からウエハ工程が始まります。その過程やその後のプロセスで各種薬品やガスが使われます。
 高純度ガスのメーカーでは、(株)ADEKA、エア・ウオーター(株)、関東電化、住友精化などがあります。
■フッ化水素酸
 2019年に日本政府が韓国に対して輸出管理強化をしましたが、当時の日本のシェアは80%以上でした。主なメーカーはステラケミファ(株)、森田化学、ダイキンです。
■フォトレジスト
 感光性の樹脂で、微細パターン形成に不可欠な材料です。これも日本メーカーが90%以上のシェアを持っています。韓国に対してフッ化水素酸と同様の処置を取り、サムスンは大いに弱ったと言われています。
 日本メーカーにとっても大口顧客に売れないのは痛し痒しではありますが。主なメーカーはJSR、東京応化、信越化学、住友化学、富士フィルムなどです。

半導体の製造装置メーカー

 半導体の製造には多くの製造装置が使われます。その装置は多くの種類があり、全てを取り上げる訳には行きませんので、ここでは大手の製造装置メーカーについて主な製品を説明しましょう。

■ディスコ
 ウエハ工程が終了すると一枚のウエハに数十~数千あるチップを切り出す必要がありますが、その工程をダイシングと言い、そのダイシングマシーンでは(株)ディスコが圧倒的シェア(70~80%)を持っています。

▲ダイシングマシーン(ディスコのHPより)

 

■東京エレクトロン
 コータ/デベロッパー(フォトレジストの塗布と現像を行う装置)、プラズマエッチング装置、成膜装置(トランジスタの絶縁膜を作る装置)、洗浄装置などで高いシェアを誇っています。
■アドバンテスト
 半導体の測定器メーカーで、自動メモリテスターでは世界ナンバーワンクラスです。  
■SCREENホールディングス
 シリコンウエハの洗浄装置、液晶用大型ガラス板の洗浄装置を製造しています。
■日立ハイテクノロジーズ
 走査型電子顕微鏡、プラズマエッチング装置などを製造しています。
■ニコン、キャノン
 ニコンは半導体露光装置ステッパーを日本で初めて製品化しました。その後露光装置で高いシェアを続けていましたが、主な出荷先である日本メーカーの低迷と共にシェアが低下しました。
 次世代露光装置(EUV)の開発競争でオランダの会社ASMLに負けてしまった事が響いて世界でのシェアは低下しています。キャノンも同様の道を辿っています。
■レーザーテック
 マスク検査装置で高いシェアを持っています。EUV露光装置に対応した装置も用意してい
ます。今後微細化が進むにつれ検査はますます重要になってくると考えられます。
   
 以上半導体周辺産業について大まかに述べましたが、半導体を製造するための産業の裾野は広く、これらをほぼ全て持っている国はそんなにはありません。これが日本の強みだと言われています。
 しかし、日本の半導体製造装置のシェアは近年低下傾向にあるのが現状です。さらに先端分野の技術導入を封じられた中国が自力開発に力を入れているので、油断できない状況であることは間違いありません。

 

【釜原紘一(かまはら こういち)さんのプロフィール】

昭和15(1940)年12月、高知県室戸市に生まれる。父親の仕事の関係で幼少期に福岡(博多)、東京(世田谷上馬)、埼玉(浦和)、新京(旧満洲国の首都、現在の中国吉林省・長春)などを転々とし、昭和19(1944)年に帰国、室戸市で終戦を迎える。小学2年の時に上京し、少年期から大学卒業までを東京で過ごす。昭和39(1964)年3月、早稲田大学理工学部応用物理学科を卒業。同年4月、三菱電機(株)に入社後、兵庫県伊丹市の半導体工場に配属され、電力用半導体の開発・設計・製造に携わる。昭和57(1982)年3月、福岡市に電力半導体工場が移転したことで福岡へ。昭和60(1985)年10月、電力半導体製造課長を最後に本社に移り、半導体マーケティング部長として半導体全般のグローバルな調査・分析に従事。同時に業界活動にも携わり、EIAJ(社団法人日本電子機械工業会)の調査統計委員長、中国半導体調査団団長、WSTS(世界半導体市場統計)日本協議会会長などを務めた。平成13(2001)年3月に定年退職後、社団法人日本半導体ベンチャー協会常務理事・事務局長に就任。平成25(2013)年10月、同協会が発展的解消となり、(一社)日本電子デバイス産業協会が発足すると同時に監事を拝命し今日に至る。白井市では白井稲門会副会長、白井シニアライオンズクラブ会長などを務めた。趣味は、音楽鑑賞(クラシックから演歌まで)、旅行(国内、海外)。好きな食べ物は、麺類(蕎麦、ラーメン、うどん、そうめん、パスタなど長いもの全般)とカツオのたたき(但しスーパーで売っているものは食べない)


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