医療ジャーナリスト・油井香代子さんは、白井健康元気村が主催する健康教室・終活教室の講師を何度も務め、また本ブログへの寄稿でもお馴染みです。そんな油井さんが『日刊ゲンダイDIGITAL』に10月16日から19日にかけて「整形外科医が教える体メンテナンス」を4回に分けて連載されました。腰痛や肩こり、骨や関節、あるいは筋力が衰えて要介護になる心配をしている人が多いことか。そうならないためにも体のメンテナンスが欠かせません。
では、どうすればよいのか―。油井さんの取材に応じた整形外科医が、わかりやすいヒントを与えてくれました。初回と第2回目に冲永修二氏(東京逓信病院整形外科医)、第3回目と第4回目には千葉白井病院の整形外科専門医で人工関節センター長の加藤敦史氏が登場します。とくに加藤医師には、白井健康元気村の玉井秀幸村長をはじめ、何人かの「村民」もお世話になっているので、ご存じの方も少なくないでしょう。
本ブログでは『日刊ゲンダイDIGITAL』に発表した油井香代子さんの連載を毎週日曜に4回に分けて転載することにしました。初回は慢性の腰痛に悩む人へのアドバイスです。
整形外科医が教える体メンテナンス⑴
変わってきた「慢性腰痛」の治療法
医療ジャーナリスト・油井香代子
▲白井健康元気村の健康教室で講演する油井香代子さん(白井市文化会館、2023年1月15日)
9月後半まで続いた猛暑の影響で、何となく体の調子が悪いという人も多いかと思います。この時期の不調は「秋バテ」と言われていますが、年間を通して日本人の体の不調で多いのが腰痛と肩こりです。
厚労省の調査(令和4年国民生活基礎調査)では、有訴者率(病気やけがなどで自覚症状がある人)のトップが腰痛、2位が肩こりと上位を整形外科関係の不調が占めています。
にもかかわらず「腰痛・肩こりは年のせいだから仕方ない」と、放置している人も多いのではないでしょうか。
長年、腰痛・肩こりの患者を診てきた整形外科専門医の冲永修二氏(東京逓信病院整形外科)は「腰痛も肩こりも病名ではなく症状名。原因はさまざまなので、まずは原因を見つけ、それに応じた対処をすることが重要です」といいます。
腰痛の原因には、椎間板ヘルニアや変形性腰痛症といった整形外科の病気の他に腎臓や子宮など内臓の病気や心因性のもの、まれですががんの転移や大動脈解離など命にかかわる病気が隠れていることもあります。
「元となる病気を治すことが最優先なのは言うまでもありませんが、実は、腰痛でもっとも多いのが、検査しても原因がはっきりしない『非特異的腰痛』なのです」(冲永医師=以下同)
このタイプの腰痛は、痛みの持続期間で2種類に分けられ、痛みが1カ月以内のものを急性腰痛といい、ぎっくり腰はこれに含まれます。痛みが3カ月以上のものが慢性腰痛です。
「急性腰痛は鎮痛薬やリハビリといった従来の治療を行いますが、慢性腰痛は最近、治療法が変わってきています。というのも、痛みが長く続く原因の一つが痛みを感じる脳の神経の変化にあることがわかってきたからです」
そのため、従来の治療以外に、脳神経に作用する薬などを使い、とくに重症の場合は心療内科、精神科と協力して治療を行うようになってきたそうです。治療の進歩で長引く腰痛から解放される人も増えています。
「慢性腰痛の患者さんには、痛くなるのが怖くて体をあまり動かさない人が多い。それが筋肉や神経、さらには体全体の衰弱につながり、やがてささいなことで痛みを感じるようになる。こういった悪循環が起こることもあるのです」
その悪循環を断つ方法として冲永医師が勧めるのが運動療法です。
「人により症状や原因が違うので、専門医のアドバイスで行うようにしてください」
腰痛のための運動には筋肉を鍛えるための腹筋や背筋運動、柔軟性を高めるための腰・背中・太ももの裏側のストレッチなどがあり、これらを組み合わせて行います。運動療法は整形外科医や理学療法士の指導で行うことが大切です。=つづく(『日刊ゲンダイDIGITAL』10月16日公開)
長野県生まれ。信州大学人文学部卒業後、明治大学大学院修士課程修了。医療・健康・女性問題について新聞や雑誌などに執筆する他テレビ・ラジオなどで医療問題を中心にコメントや解説も行う。2007年よりイー・ウーマン「働く人の円卓会議」議長を務める。著書に「医療過誤で死ぬな」(小学館)、「あなたの歯医者さんは大丈夫か」(双葉社)など多数。