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マンション崩落の衝撃 【連載】腹ふくるるわざ⑭

2021-07-01 04:23:02 | 【連載】腹ふくるるわざ

【連載】腹ふくるるわざ⑭

マンション崩落の衝撃

桑原玉樹(まちづくり家) 

 

 

6月に崩落事故が相次ぐ

 この6月、世界各地で建物の倒壊や崩落事故が続いた。同月9日には韓国・光州市で撤去作業を進めていた5階建ての建物が崩れ、市内バスが下敷きに。死者9人、重傷者8人の計17人の人的被害が発生する。
 韓国メディアによると、下請け業者がビルの低層階から掘削機を使って作業を始めたことが、ビルの倒壊につながったとか。本当だとすると解体工事の作業手順を無視したあきれた事故だ。

▲韓国のビル倒壊事故(6月9日、『東亜日報』より)


 中国でも同様の事故が起きる。湖南省で21日、7階建てマンションが倒壊し5人が死亡した。倒壊したマンションは、住民たちが自分たち建てたということで、地元当局は建物の構造に問題がなかったかを含め、倒壊した原因を調べている。
 住民に設計、建設を仕事とする人がいたか知らない。自分たちで建てる根性は見上げたものだが、倒壊するとはいかにも中国らしいではないか。


▲6月21日に起きた中国の倒壊事故(ANNニュースより)

フロリダのマンションが一瞬に

 なかでも衝撃的だったのは、米国フロリダでの12階建マンション「シャンプラン・タワーズ・サウス」の崩落事故である。6月24日、そのマンションの一角が一瞬で崩れ落ちたのだ。粉じんが舞い上がり、さらにその数秒後には別の部分も崩落する様子を監視カメラがとらえていた。
 ちなみに、事故が起きたのは、マイアミ近郊のリゾート地サーフサイド。1960年代当初、『サーフサイド6』というテレビ番組があったことを年配の方なら憶えているだろう。若くてリッチな3人の私立探偵が活躍する人気シリーズだった。
「サーフサイド6」と命名されたのは、ヨットハーバーの6号埠頭に停泊しているハウスボートを探偵事務所にしていたからだ。
 そのテレビ番組はともかく、事故が起きたマンションの5キロ北にはトランプタワーが3棟も建っている。そんなリゾートマンション群で起きた崩落事故だった。

▲ 崩落マンションの位置(グーグルマップ)


▲サーフサイドのマンション群(グーグルアースの写真画像)

▲トランプタワーが3棟も立ち並ぶ(グーグルストリートビュー)


 では、崩落したマンションを詳しく検証してみたい。

【物件名】Champlain Towers South(シャンプラン・タワーズ・サウス)
【竣工】1981年
【構造・規模】鉄筋コンクリート12階建て
【総戸数】136 戸(分譲マンション)
【価額】150平米前後の部屋が65万ドル(1ドル110 円換算で7200万円)程度。マイアミの物件としては高級とは言えないまでも、決して安価な物件ではない。


▲シャンプラン・タワーズ・サウスのバルコニー(best of Luxury Realty 社不動産情報より)


▲同マンションの室内(best of Luxury Realty社不動産情報より)


▲崩落前の全景(グーグル・ストリートビュー、2014年5月撮影)

 このマンションが一瞬のうちに崩れ落ちたのである。監視カメラの動画では、まず海側の一角(56戸)が崩壊し、その直後に陸側右部分の床が雪崩のように崩れた。


▲崩落前(グーグルアース、1985 年撮影)

▲崩落後(時事通信)

 

いくつもの原因が重なったかも

 崩落原因については、次のようにいろいろ言われている。
1)大規模修繕工事にむけた事前調査では、バルコニーや駐車場の壁や柱、プールのスラブ面などに複数の亀裂や損傷が見つかったほか、防水にも問題があった。これらが影響したのでは。
2)事故当時、屋根の改修中だった。それが事故と関係しているのかも。
3)以前から重大な構造上の問題が指摘されていた。
4)1993年から1999年の間にマイアミビーチ西部は年間約2ミリの割合で沈下していた。建物の一部だけが沈下して、建物にストレスが加わり亀裂が生じることもある。
5)駐車場の柱の一部はひび割れにより鉄筋が露出した状態で、エポキシ接着剤を注入して補修工事を行ったが、技量が不足していたため失敗に終わっていた可能性も。
6)コンクリートと鉄筋の付着に問題があったのではないか。
7)隣接地の建物の建て替え工事によって重機の振動でマンションに亀裂が入っていたのではないか。
8)海の近くなので塩害によりコンクリートが劣化した可能性も。
9)外壁のメンテナンスを怠ったため、水漏れやひび割れが起きていた影響ではないか。

 私は、これらが複合して起きたのではないかと思っている。
 先に紹介した地図や写真でもわかるように、当地は砂州の上に建設された街だ。隣接地(南)の建て替え工事は 2014 年ころから始まって数年を要したようだが、基礎工事に際しては地盤を掘り下げている。崩落マンション敷地の地下水も工事個所に向かって流れ、それに伴って地盤を形成する砂層も流れただろう。プールや駐車場の床面に多数の亀裂が入っていたらしいが、地下の砂が流れた結果、不等沈下したためではないだろうか。
 また柱や梁にも亀裂が多数あったという。崩落マンションは海岸沿いに立地する。塩風に乗って塩分が柱などの亀裂に入り、鉄筋を腐食させたのではないか。そのため亀裂はさらに拡がり、鉄筋は細り、鉄筋とコンクリートの付着も弱まった。
 地震国日本と違って柱と梁はそもそもの設計基準からして細い。しかも鉄骨は一切使わずに鉄筋だけ。これでは倒壊に際しても粘ることなく一気に崩落するのは当然かもしれない。

白井市は大丈夫か?

 さて、ひるがえって白井市の集合住宅は大丈夫だろうか。
 私の住むマンションは柱と梁に鉄骨も使っているし、フロリダのような細い柱のピロティーはないし、柱と壁が組み合わさっていて、見るからにごつい。また白井駅圏の集合住宅は公団が建設したものが多い。新耐震基準ができた昭和56(1981)年の直前に建築されているので心配される方もいるだろう。

 しかし阪神淡路大震災では、神戸市役所の中間階が潰れるなど倒壊した建物が多かった中で、(手前味噌だが)公団住宅では、旧耐震基準の建物でも窓枠の周囲に亀裂が入った例はあったものの、損壊や倒壊はなかった。
 また白井市の防災計画では、白井市の地下5キロと浅いところでМ(マグニチュード)7.1 の地震が発生した場合の震度は6強と予測し、千葉ニュータウン区域内での建物倒壊危険度は最低の1(0~3%)としている(下図)。とりあえずは安心してもよさそうだ。

▲白井駅圏の建物全壊率(白井市建物倒壊危険度マップ)

 

【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】

昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員。


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