【連載】腹ふくるるわざ(54)
白井に追い風吹くか?
公示地価発表で
桑原玉樹(まちづくり家)
全国的に3年連続上昇
国土交通省が公示地価を発表した。概要はこうだ。
●全国平均、三大都市圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。
●地方圏平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇した。全用途平均・商業地は上昇率が拡大し、住宅地は前年と同じ上昇率となった。
●全国の地価は、景気が緩やかに回復している中、地域や用途により差があるものの、三大都市圏・地方圏ともに上昇が継続するとともに、三大都市圏では上昇率が拡大し、地方圏でも上昇率が拡大傾向となるなど、上昇基調を強めている。
白井に追い風吹くか?
白井市の土地価格は、30数年前のバブル崩壊以来下落を続け、近年は底を打ったように低迷していた。昨年やっと上昇に転じたが、まだ千葉県平均を下回っていた。
しかし今年はちょっと様子が違う。私が住む白井市南山地区では6.2%の上昇。隣の池の上地区では7.2%にもなる。市川市(10.6%)やつくばエクスプレス開業以来人気沸騰の流山市(10.1%)には及ばないものの、千葉県(4.3%)や東京都(3.4%)を上回った。嬉しい限りだ。
▲白井市と印西市の公示地価の推移
▲公示地価の位置図
首都圏の30キロ圏にありながら、他の30キロ圏の住宅地に比べて白井駅圏は著しく地価が安い。
京成沿線にある八千代市八千代台駅圏の3分の2。つくばエクスプレス柏の葉キャンパス駅圏、東武東上線上福岡駅圏、西武新宿線所沢駅圏の2分の1弱。京王線聖蹟桜ヶ丘駅圏、小田急線新百合ヶ丘駅圏、東急田園都市線長津田駅圏の3分の1だ。
鉄道のブランド、沿線のイメージで地価が形成され、実際の住みやすさが反映される度合いは少ないようだ。
▲沿線別住宅地の公示地価
白井市は、住みやすさでは決して引けを取らない。しかし、世間的には正当に評価されていない。ニュータウン開発で安い土地が大量に供給され続けていたことも公示地価に影響を与えているだろう。
昔学校で習ったように、新規宅地供給が大量にあれば「需要‐供給」の関係から土地価格は下がる。そのため中古住宅が売れなくて困っていた。しかしニュータウンの大量供給も終わった。
これからは全国的地価上昇の流れに乗り、中古不動産の売買も活発になることだろう。この結果、人の流動が進み、まちの高齢化に歯止めがかかって欲しいものだ。また企業の投資も進み、新たな雇用や関連業種が創出されるかもしれない。バブルにならない程度に地価上昇が持続することに期待したい。
外国資本の進出に懸念
そんな中、全国の地価上昇率のトップ10は北海道や沖縄など地方が独占していた。住宅地では北海道の富良野市北の峰町(27.9%)、千歳市栄町(23.4%)、帯広市大空町(20.4%)や沖縄の宮古島市(21.2%)などだ。
円安を利用して外国資本がジワジワと我が国土を侵略しているようで怖くもある。だけど、TVのワイドショーでは「地方の発展が進んで歓迎!」というノー天気なコメンテーターもいた。
▲全国の公示地価上昇率トップ10
【桑原玉樹(くわはら たまき)さんのプロフィール】
昭和21(1946)年、熊本県生まれ。父親の転勤に伴って小学校7校、中学校3校を転々。東京大学工学部都市工学科卒業。日本住宅公団(現(独)UR都市機構)入社、都市開発やニュータウン開発に携わり、途中2年間JICA専門家としてマレーシアのクランバレー計画事務局に派遣される。関西学研都市事業本部長を最後に公団を退職後、㈱千葉ニュータウンセンターに。常務取締役・専務取締役・熱事業本部長などを歴任し、平成24(2012)年に退職。現在、印西市まちづくりファンド運営委員、社会福祉法人皐仁会評議員、「ダーツの会」会長。