大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆65歳以上で退職された方の高年齢求職者給付金

2014年01月24日 18時57分24秒 | 退職、解雇
先日、顧問先さんで、「あわや、手続き漏れ!」に遭遇しました。

「遭遇」といいますのも、へんな話ですが、
長い間顧問になっていただいている会社さんの、とある超ベテランの従業員さんが退職されました。

実は、「長い間お世話になりましたが、私、退職しました」と、
ご本人から当事務所にご挨拶のお電話をいただいておりました。

その時は、「本当ですか! それはそれは淋しいことですね。長い間お疲れ様でした。」
なんて申し上げて、そのまま何も考えずに「いよいよ○○さんも、退職か・・・」なんて
感慨にふけっていたものでした。

数日後、ふと思い返しました。

その従業員さんは、65歳以上の高齢の方で、勤務時間も短くなり、社会保険は
とうの昔に喪失していましたが、週20時間以上の勤務時間でしたので、
雇用保険の資格はそのまま残っていたのでした。

「あれ、○○さんの雇用保険の資格喪失届を出さなきゃいけなかったんだ」
なんて、ふと思い返して、その会社さんの総務の方へ電話しました。

「えっ? 雇用保険の資格喪失手続ですか?。」と総務さん。
「そうなんです。○○さんは雇用保険の加入は続いていましたので。」

すると、「でも、65歳以上だから雇用保険料は給料から引いていませんよ。
○○さんは、雇用保険の資格はないんですよ。」(きっぱり)と申しますので、
「いえ、いえ、高年齢だから雇用保険料は労使共に免除になっていますが、
それは保険料が免除になっているだけで、雇用保険の資格自体は続いているのですよ」と私。

「え、そうなんですか! 気が付きませんでした。」

ということで、ようやくご理解をしていただき、その従業員さんの雇用保険の資格喪失書類を
作成いたしました。

65歳前から雇用保険に加入している方は、そのまま継続して65歳以後も勤務を
続けている場合は資格は続いているのです(週所定労働時間が20時間以上の場合)。
ただ、4月1日において64歳に達している人は、4月分から雇用保険料が労使共に免除になっています。

実際に給料から雇用保険料が引かれていないのですから、65歳以上も勤務継続している
方でも、総務さんは、なんとなく、雇用保険の資格も喪失しているような錯覚に
陥ってしまうのでしょう。

ちなみに、今回退職された65歳以上の従業員さんの場合は、
退職後失業していれば、「高年齢求職者給付金」を受給できます。
被保険者期間が1年未満の方で「30日分」、1年以上で「50日分」。
今回、高年齢求職者給付金を計算してみましたところ、
詳しくは書けませんが、20数万円あまりでした。

さっそく、離職票を提出し、ご本人へお送りいたしました。
なんだか、会社さんからのいいプレゼントですね。

65歳以降の高齢で退職された方の中には、会社さんも雇用保険の資格喪失を出し忘れて、
結構、そのままになっているケースがあるかもしれません。
ご本人も「高年齢求職者給付金」が受給できる場合があるなど思いもよらなかったり……。
もらい忘れも、結構あるのではないでしょうか。

私も仕事をしていく中で、顧問先の従業員さんから学ぶこともあり、
長いお付き合いの間には、労基署や年金事務所の調査などもあったりでと、
大袈裟に言えば、○○さんとは、一緒に荒波をくぐってきたようなところもあります。

本当にご苦労様でした。これからもお元気で。

離職票を作りながら、こんな想いにひたったのも、なんだか初めてのような気がします。


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◆「退職」問題にはくれぐれもお気を付けて

2013年04月26日 00時01分18秒 | 退職、解雇
こんばんは。社会保険労務士の大澤朝子です。

やはり4月はてんてこまいです。

雇用促進税の計画届の提出、
労働者派遣事業の定期報告、
労働保険事務組合への委託替え、
等が集中します。

これらに、通例通り新入社員の入社、
年度末退社の方々の離職票提出などなど、
行事、手続きが目白押しになります。
法改正があって実務取扱いに変化がみられるのもまた4月。

そんな中、それに輪を書けるように、数々の難題・奇題?
が顧問先及び従業員さんから投げかえられ、それらの処理のための
悪戦苦闘の毎日といった今日この頃です。

そして、これでもかというばかりに
顧問先に労使トラブルの発生――。
身体、心がいくつあっても足りない時期で、GWを挟んで
一体乗り切れるのか否か、少々心もとない気さえします。

さて、労使トラブルで思いますのは、
何と言っても労使互いの「人」としての信頼性、誠実さなどを
大事にしたいなあ、という当たり前の気持ちです。

「労働法の知識が云々」といったことは二の次のことで、
つまるところは、人の「心」「気持ち」のありように集約します。

世の中には、労働者をごみ屑か何かのように使い捨てに
しているような会社さんがある反面、
これまでお世話になった会社や社長さんを裏切って、
だまし討ちのように、行政機関に行って叩き続ける
蛇か吸血(金)鬼のような元従業員さんもいらっしゃいます。

どちらも「人」としては悲しいほど救えないですが、
そんな人がうようよいるのが世の中の常で、会社と労働者の
トラブルは永遠に解決し得ないテーマと申せましょう。
言ってみれば、これは嫁と姑、嫁と小姑との関係に似て、
もって非なるもの、絶対に解決し得ない問題ではあります。

労使トラブルの当事者態様を見ていて、
ここでひとつ、中小企業の社長さんに申し上げておきたいことが
あります。

あなたが従業員さんを信頼している度合ほど
相手はあなたを信頼していません。

あなたが雇用保険や労災保険の知識が乏しいのと同じように
相手も知識が乏しいこということはありません。否。相手の方が
自身の利益のために、あなたが経営に力を注いでいる間に、
ネットで密かに勉強? したりしています。

夢々、昨日までボーナスまで支給していた元従業員が、
嘘八百、だまし討ち的手段を取って、役所を使ってあなたに
切りかかってくることはない、と思わないでください。

勿論、全員がそうだとは申しません。ごく一部の方でしょう。

しかし、相手には、職安、労基署、労働局、労働審判といった
はけ口&「駆け込み寺」? が揃っています。
これは、あなたにはない彼らの「強み」です。

特に、「退職」問題には十分にお気を付けいただければと思います。

「退職届」はどのような時でも、必ず取っておいてください。
「退職届」を取っておかなかったばかりに、後で「解雇」と主張
されて困った例は今ままでイヤというほど見てきました……。
この問題には、お金になる「枝」もたくさん用意されています。
慰謝料、賃金保障、解雇予告手当、休業手当云々。

くれぐれもお気をつけて。


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試用期間を設けないと、3日で解雇のバイトでも、解雇予告手当30日分

2012年12月25日 00時22分29秒 | 退職、解雇

社会保険労務士の大澤朝子です。

本日は、たった3日で1か月分の賃金をもらった、というお話です。

 

態度が悪くて悪くて、どうしようもないアルバイトさんがいました。

入社3日目。堪忍袋の緒が切れて、上司はこの人を即刻「クビ」にしてしまいました。

そのアルバイトさん、どこから聞いてきたのか、ひどく知識が豊富。

会社に対し、解雇予告手当(平均賃金の)30日分を請求してきました。

 

<質問>

会社は、解雇予告手当を支払わなければならないでしょうか?

 

<回答>

就業規則または労働契約書「試用期間」が明確に定められており、

かつ、入社14日以内ならば、使用者に解雇予告手当の支払い義務はありません

定められていなければ、使用者に支払い義務があります(労基法第21条第四号)。

 

「試用期間」が労働契約上明確であり、引き続き14日を超えて

雇用した場合は、たとえ「試用期間中」であったとしても、使用者に

解雇予告手当の支払い義務が生じます(同)。

 

この会社、就業規則もなければ、労働契約書もかわしていなかった・・・。

つまり、そもそも「試用期間」なるものは、存在していなかったーー。

 

こうなると、使用者側に解雇予告手当の支払い義務が生じます。

3日しか来なかったアルバイトさんですが、労基署に駆け込み、

解雇予告手当30日分を手に入れてしまいました。

即日解雇の解雇予告手当は、「平均賃金」の30日分ですから、

3日働いて、ほぼ1か月分の賃金を得た勘定になります。

 

こういうこともありますので、当事務所で作成する就業規則、雇用契約書の雛形には、

必ず「試用期間」を入れています。

アルバイト、パートでも労働基準法上の「労働者」に変わりありません。

多様な雇用形態を持つ会社さんでは、きめ細かな注意が不可欠といえましょう。

 

<参考>

労働基準法第21条

「前条の規定(編注:解雇予告手当の規定)は、左の各号の一に該当する

労働者については適用しない。但し、第一号に該当する者が1箇月を

超えて雇用されるに至った場合、第二号若しくは第三号に該当する者が、

所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合又は第四号に

該当する者が14日を超えて引き続き使用されるに至った場合においては、

この限りではない。

一 日日雇い入れられる者

二 2箇月以内の期間を定めて使用される者

三 季節的業務に4箇月以内の期間を定めて使用される者

四 試の使用期間中の者

 

 

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明日から来なくていい!・・・分かりました。は、解雇?

2012年12月04日 00時08分38秒 | 退職、解雇

中小企業の社長さんで、こんな経験はある人、いませんか?

ちょっと生意気、問題行動あり。謙虚さなし。世の中で自分が

一番エライと思っている若者^-^従業員。

腹立ちますよね・・・。

ある日、堪忍袋の緒が切れて・・・

「明日から来なくていい!」と、つい言ってしまった・・・。

敵もさるもの、奥底では喜んでいますよ。そして、大抵、こう言います。

「わかりました」

荷物たたんで、とっとと出ていきます。そして二度と出てきません。

そして、次なる行動は2パターン。

1、内容証明郵便で慰謝料または解雇予告手当を請求してくる。

2、労基署へ行って不当?「解雇」を訴える。

慣れてる方は、1がダメなら2に進む、というパターンもあったりします。

読者は、これを「解雇」と思われますか?

大抵の方が間違って認識しているのですが、これは「解雇」ではありません。

使用者の「明日から来なくていい」という「退職の勧め」に対し、

「わかりました」と言って、本当に出てこなくなるのは、

労働者側の「同意・承諾」です。

当事務所のホームページ「退職、解雇とは?」に書いてあります通り、

使用者の「退職の勧め」に対し、労働者側が同意したのですから、

これは、立派な「勧奨退職」。解雇ではありませんので、お気をつけて。

従いまして、使用者には解雇予告手当の支払い義務はありません。

間違って、従業員さんから請求されるままに「解雇予告手当」を支払ってしまった・・・

なんていう方、おられませんか?

ま、過去のことは済んでしまったこと。明日のことだけを考えましょう。

そんな従業員さんでも必ず「いいところ」を認めて、伸ばしてあげてください。

そんな暇はない? ま、ものは考えよう。怒りの炎を燃やすより、

少しでも「いいところ」を見つけてあげると、こちらも嬉しくなりませんか。

はい、これ、私自身の経験談でもあります。

怒るより、褒めろ。

最近、特に気を付けていることなんです。

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