大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆急増している社労士数 

2014年04月02日 12時23分41秒 | 近頃思うこと
所属する埼玉県社会保険労務士会から「45周年記念特別号」が届きました。

バブル崩壊後、企業のリストラが進んだ影響でしょうか、社労士資格を取る方が急増
していることは、これまで会が発表する数字を見れば一目瞭然でしたが、

「45年記念特別号」の統計数字を見ますと、
私が開業した平成5年頃の埼玉県社会保険労務士会の個人開業会員数は、約500人。
20年あまりが経過した平成25年の個人開業会員数は、約1200人。

実に2.4倍も増えています。

500で分け与えあっていた顧客数を、今では1200で分け合っていかなければ
ならない現実――。
その中で着実に顧問先を増やせていけるのか、はたまたその逆か。

社労士業界は、今、熾烈な、あまりにも熾烈な競争激化の中にあると言えるでしょう。

それでも、後から後から開業する人は増えるばかり……。
聞けば、開業10年くらいでも数件の顧問先しかない、という話も耳にします。

女性の個人開業会員も増えています。
育児休業法が施行され、育児休業期間中に社労士資格を取って
開業する女性が増えてきているのが影響しているのも大きいようです。

この点も競争相手の激化に拍車をかけています。

私の例をご紹介しましょう。
社労士資格は取ったけれど開業リスクは負いたくないという方もいらっしゃることも事実。
そういう方は、社労士資格を生かして「就職」される方も多い筈。
私の場合、
社労士有資格者を採用した顧問先から、「給与計算」業務を引き上げられました。
大口の給与計算でしたので、そのために事務所を広めのところに移転した後に、です。
「後の祭り」(微笑)。

開業社労士との競争。
社労士有資格者との競争。

既存の開業社労士も手をこまねいていると、今に新規参入者にじわじわと
顧客を奪われかねない状況に陥りましょう。

くわばら、くわばら。

今日も、うちの事務所には、出そう出そうと思っていた「DM]印刷物の
段ボール箱がまだ積まれたままです。
出そうにも、後から後から顧客のいろいろな要望に応えているうちに、
時は過ぎ去るばかり――。

年金手続一つとっても、一生懸命、誠心誠意仕事をしていますので、
業務の質ではどこにも負けない自信がありますが、流石に、500が1200という数字
を見せつけられますと、今さらながら「もっと危機感を持とう!」と自分自身を
叱咤激励するきょうこの頃です。

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◆NHK経営委員の「男は外、女は内」発言に私も一言

2014年01月29日 10時58分19秒 | 近頃思うこと
NHK経営委員の女性大学教授の発言が物議を醸しだしているとききました。
「男は外(会社)、女は家庭」という趣旨の発言をしているとか(朝日新聞)。

ご自身も大学教授をしながら1男1女を育て上げた方ということですので(同)、
立派に「女も会社」で生きてこられた方ですのに。

私自身は、「男は会社、女も会社」の価値観で生きてきて今日に至っていますが、
仕事柄、健康保険の「被扶養者届」を毎日のように作成していて分かるのは、
ほとんどの家庭が「男は会社、女は家庭」だということです。
基本的には、旦那さんが主な稼ぎ頭で、奥さんは家庭と両立し易いパート勤務か
専業主婦の方がほとんど。フルタイムでバリバリ働いている方はごくごくわずかです。

●厚生労働省発表「厚生年金保険・国民年金事業の概況」平成25年10月現在

※1 国民年金第2号被保険者数 39,772,715人

※2 厚生年金保険被保険者の標準報酬月額 男 347,928円 女 234,248円

※3 国民年金第3号被保険者数 女 9,381,596人 男 111,321人

(※1 おおよそ常勤状態にある会社員、公務員の総数)
(※2 会社員の賃金の男女格差は約67%)
(※3「国民年金第3号被保険者」とは、配偶者に扶養されている年収130万円未満の者。
第3号被保険者は、配偶者の加入する健康保険(共済組合)の被扶養者となる。)

私自身は、育児休業法や男女雇用機会均等法のない時代に「子育て」と
「仕事」を両立?? させてきた年齢層なのですが、
うちの子供がまだ小さかった頃、クラスのほとんどのお母さんはパート勤務か専業主婦の方
でした。今でもあまり変わらないですね。

ただ、問題は、そこにはないと思います。

日本では武家社会が長く続き、鎌倉時代から江戸時代初期に至るまで、
男が武器を持って戦場で戦い、ある者は首を取られ、領地を追われ、或いは切腹し、
男が政治・経済を動かしていました。
この長い歴史の中で、女はどうしても社会の一線では活躍しにくく、「家」では
親に従い、夫に従い、舅・姑に従い、老いては子に従うことが「美徳」とされてきました。

そんな「美徳」が明治、大正、昭和と続いてきたのですから、なかなかこの「ハンディ」を
覆すことは至難の業といえましょう。

私自身も暮らしの中で体験するのですが、残念ながら女は世間では軽く見られ、
時にはからかわれ、時には一人前以下に見られるということがしょっちゅうあります。
若い頃はそんな態度に接すると、黙って耐えていたのですが、
今では耐えないことにしています。時には言い返したり(笑)。

ところで、仕事柄、顧問先の多くの従業員さんと接する機会があります。
経理の方、総務の方などが多いのですが、仕事の現場では、男女で実力に差があることは
ありません(きっぱり)。
当然ですが、周りの男性よりも優れている女性も幾人も見てきました。

そういう方を見ていますと、私自身も勇気を与えられ、もう少し頑張ろうかと
少し元気になります。

冒頭の発言の趣旨は、少子化の問題でおっしゃっておられるようですが、
韓国、日本など男女差別が大きい国ほど少子化が問題となっていることを思えば、
やはり、それらの歴史的価値観が解消されない限り、少子化の問題も解決の糸口が
見えにくくなっているのではないでしょうか。

上記の「国民年金第3号被保険者数」の男女別数を見て分かる通り、
現在の日本では、ちゃんと「男は会社、女は家庭」を守っているのですから。


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◆人件費の無駄って?

2013年12月02日 14時36分20秒 | 近頃思うこと
昨日の日曜日は、久しぶりに「大中寺」から「大平神社」(栃木県)へ
歩いてきました。

「大中寺」は、上田秋成「雨月物語」にも一説書かれていますが、
大平山、晃石山などを縦走する時などによく立ち寄る名古刹です。
「開かずの雪隠」とか、いろいろ怖いお話のあるお寺なのですが、
付近には鎌倉街道も残っていますし、山歩きの帰途などによく立ち寄ります。
昨日も、鬱蒼とした杉木立の境内には、誰一人いませんでした(こわーい)。

「人材」が企業資源にとって一番重要な要素だと分かっていても、
「人件費」はなるべくかけたくない、と思うのは人情。
人件費をかけたくないという(経営者の)方は、例えば、

1、給与を時給にする。
2、なるべく短期の有期雇用契約にする。
3、非正規で雇い、後で正社員登用をうたう。

などとするでしょうが、
こうしますと、あたかも人件費は安く済むように見えますが、
従業員の出入りが多く、年がら年中「採用」活動することになったりします。

採用にかける「お金」も人件費コストといえますが、
このあたりの計算は案外タンパクで、

1、求人媒体への登録費用
2、職安へ求人を出しにいく手間・人件費
3、採用面接の時間・手間
4、合否連絡の時間・手間
5、新人への既存従業員の教育の手間・人件費
6、契約更新の面接や書類作り

など、目に見えない形でコストがかかっています。
しかし、目に見えないため、本人は気づきにくいのかもしれません。

傍目では、そこまでして「有期雇用にしたい?」と不思議ですが、
求人広告を見ますと、例えば、女子の事務職などは有期雇用が本当に多い。
統計でみても、有期雇用の職種で一番多いのが「事務職」でその次が
「販売職」ですので、これが世の中の採用の実態といえば、まあ、
致し方ないのでしょうか。

日本の賃金は諸外国に比べても1.5倍も高い、といわれれば、
肯首せざるを得ませんが、せめても、有期雇用契約が状態となって
いるこの状態、なんとかならないものでしょうか。
そんな会社、とても伸びる企業には思えませんが。

――さて、大平神社は今が見ごろの紅葉。見はるかす関東平野を
眼下に、茶店に頼んですするお茶や団子の味もひとしおで、あとは、
静かな山道を陽が傾きかけた大中寺の駐車場に向かいました。

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◆公開企業と労務管理

2013年11月27日 10時35分05秒 | 近頃思うこと
名だたる公開企業の不祥事が、毎日のように新聞紙上を賑わせています。
一般的に、公開企業は一流企業と認識されていますので、
相次ぐ不祥事は、社会に与える影響が大きいといえます。
その道義的責任も問われます。

公開企業の法令順守、道義的責任を「労務管理」の立場から言えば、

・労働基準法等労働法令を順守しているか。
・就業規則、社内規程は実務に即して適性に作成・運用されているか。
・36協定の提出その他、労働時間管理が適正に実施されているか。
・安全衛生体制が正しく運用されているか。
・労使間の紛争のない適正な人事管理が行われているか。
・男女機会均等、非正規雇用、高齢者雇用の適正な措置が布かれているか。
・労働社会保険への適正な加入が実施されているか。
・情報管理は適正に行われているか。
云々

といえましょうが、わけても、就業規則・社内規程の整備は、冊数も多く、
パート就業規則、嘱託就業規則、賃金規程、出向規程、退職金規程、
育児・介護休業規程、慶弔見舞金規程、出張旅費規程、そのた総務関連
規程も含めれば、多大な量になってしまいます。

もちろん、それらを作成・運用する前の諸制度の整備が肝心なのですから、
膨大な時間と手間が必要です。
最近では、セクハラ防止、パワハラ防止などの配慮義務も加わっています。

相次ぐ事件により、コンプライアンス経営が至上命題となっている今、
公開企業には単に法令違反をしないというだけでなく、公開企業として、
他の企業の模範となるような「品格」ある経営が求められているといえます。

こと「労務管理」という視点からみれば、他の不祥事と共に、
割増賃金不払い、社会保険未加入などの不祥事も、まだまだきこえてきます。

一般消費者を「騙していた」などは論外ですが、自社の従業員も「騙していた」
などということにならないよう、社労士としても、企業様の立場に立って、
手助けしていければと考える日々です。


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◆もう一度観たい高遠城の桜

2013年03月10日 01時16分17秒 | 近頃思うこと
社会保険労務士の大澤朝子です。

事務所のある旧大宮市では、ようやく梅が満開となっています。
ふくよかな梅の香が漂う市民公園が近いので、昼休みに観に
行ったりしています。
この地では、梅→ハクモクレン→桜と決まった順番で開花してくれるので、
これから1か月間は、花の咲くのが頼もしく、目の疲れを癒してくれます。
極めつけは桜で、盆栽町、大宮氷川神社周辺で満開となると
仕事で車を走らせるのも楽しみになってきます。

桜といえば、名所旧跡いろいろあれど、3年前に行った
伊那・高遠城は、特に強く印象に残っています。

高遠城は、戦国時代、武田方の最後の砦として、織田軍5万の兵に対し
わずか3000で立ち向かって全滅した城で有名ですが、
(以後武田方は滅亡へと向かう。)
その後も江戸時代は普通に幕藩体制の中にあって、
廃藩置県まで城は存続したようで、
桜は、明治8年に旧藩士の方々が高遠城の馬場にあった桜を移植して
育て、今のような桜の名所になったのだそうです。

高遠城の桜は「タカトウコヒガンザクラ」というそうで、
ソメイヨシノよりもややピンクがかった色が、武田方3000の
血の色のようだと言われてみれば、確かにそのようにも思えてもきます。

東京・八王子城は今ではハイキングコースとなっていますが、
ここは、小田原北条氏の支城で、秀吉軍の小田原攻めの折、わずか1日で
全滅した山で、例えば夏場などにこの山に登ると、
なんとはなしにここだけ異常に蒸し暑く、イヤな雰囲気を感じた
時がありましたが、それもその筈、1日で全山死体の山になった
とは、後で知りました。

高遠城は平山城で、城から降りて一旦街に出、市街地から
もう一度反対側に登りかえして小高い地に登ると(由緒ある神社、寺院
がある)、目の前に広がる全山桃色の山が、そんな悲劇を思わせないくらい
穏やかに華やいで見え、いつまでも飽きないで眺めたことです。

当日は、信州そばをいただき、武田勝頼母墓なども見学し、
(高遠城は武田方の領地になるまでは諏訪氏の城。勝頼母は諏訪氏。)
桜茶やまんじゅうなど、町の方々の温かい接待まで受けて帰途につきました。

町には、携帯を見ながら自転車に乗っているような人は一人もおらず、
桜の時期だけ臨時駐車場となる高遠中学校のグラウンドでは、
先生・生徒が総出で観光客をもてなしてくれました。
その清々しい態度のこと。
中央自動車道から高遠に向かって延々と車を走らせてきた苦労? が
報われた思いです。

大袈裟に言えば、まるで織田軍に果敢に戦って散っていった人々の
気概が今日までも引き継がれているのではないかと思わせるような。
……こんな素朴で清冽な町が今の日本にあったのかと、
こちらもなんとなく心が洗われるような気がしたものです。

開花の時期は4月中旬だそうですが、もう一度行きたい桜の名所
といえば、真っ先に高遠城を挙げたいと思います。

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