大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆年金記録原簿の正確さよりマイナンバー?

2019年01月31日 10時26分44秒 | 公的年金等
今日は、基礎年金番号の大切さをお話しましょう。

公的年金では、年金加入日や加入期間、保険料の納付状況などが「年金原簿」
に記録されています。この年金原簿は、将来、私たちが年金を受給するときの
根拠となる記録です。
そのため、国(厚生労働大臣)は、年金原簿を記録しなければなりません(国年法14条、厚年法28条)。

年金原簿には、どのようなことが書かれているのでしょうか。

■年金原簿に記録されている内容
<厚生年金保険>(法28条、法施行規則89条)
1、氏名
2、資格の取得及び喪失の年月日
3、標準報酬月額及び標準賞与額
4、基礎年金番号
5、生年月日、住所
3、被保険者の種別及び基金の加入員であるかないかの区別
4、勤務先名称
5、基金加入員である時の基金の名称
6、保険給付に関する事項

<国民年金>(法14条、法施行規則15条)
1、氏名、性別、住所
2、資格の取得及び喪失の年月日
3、種別の変更
4、保険料の納付状況
5、基礎年金番号
6、給付に関する事項
7、保険料免除に関する事項
8、基金の加入員であるときは加入年月日

■基礎年金番号よりマイナンバーを書かせたい?
厚生年金保険の資格取得届には、これまでは、「基礎年金番号」を書くことになっていましたが、
現在は、「マイナンバー」又は「基礎年金番号」を書かせる様式に変更されています。

記載欄には、「マイナンバー又は(極小さく)基礎年金番号」となっていますので、
無意識のうちに、基礎年金番号を書かず、マイナンバーを書いてしまいそうです。

覚えていますか? かつて、国民全員に付された「住基番号」。
でも、まったく使われず廃れてしまいました。
今度こそ、マイナンバーでは失敗したくない。国民に書かせましょうとばかりに、
無駄に、ほとんど使われない雇用保険でも、また年金でも、手続の際に書かされています。

年金分野では、マイナンバーで「住民票」の添付が不要になる効果があるようです。
ただし、私自身は、自身の年金請求の際に、戸籍謄本と住民票を提出しましたが、
大事な自身の年金を間違いなく受給するためと思えば、何の不便も感じませんでした。
むしろ、他人のなりすましを防ぐことができる最大の防御だと安心して手続きができました。

不特定多数の人に自分のマイナンバーを開示するリスクよりも、
住民票を提出する方がよっぽど安心だと思います。皆さんは、どう思われますか?

いち早く国民総背番号制を導入した米国や韓国では、
なりすましにより、年金を他人に奪われた被害が問題になっていると言われています。
日本でも、マイナンバーで年収も住所も氏名も何もかも分かってしまいますから、
あれもこれもマイナンバーを使って事務手続きをすることが安全なことなのか、疑問に思います。
使うなら、所得隠しや脱税分野だけで使って欲しいですね。

ほとんど使わない雇用保険でマイナンバーを強制的に書かせたり、
基礎年金番号をないがしろにしてただマイナンバーを書かせて資格取得届・喪失届を出させたり、
これは、国民の幸せのためというより、国の「意地」のようなものでしょうか。

■資格取得届には、基礎年金番号を!
年金原簿は、国民一人ひとりについて、大切な財産、宝です。
数年前に問題になった「宙に浮いた(持ち主が分からない)年金番号」を少しでも無くし、
本来の持ち主の年金権に結び付けてあげなければなりません。

今でも、複数の年金番号を持っていて番号を統合していない、又は、かつて持っていたにもかかわらず、
何もしなくて放置している(宙に浮かせている)方が、結構いらっしゃいます。

資格取得届には、マイナンバーではなく、必ず、基礎年金番号を書き、自分自身の年金記録を守りましょう。

当事務所では、手続の際に、持っている年金手帳を全て出していただき、
各年金番号が基礎年金番号に統合されているかどうかを、必ず年金事務所で確認してもらっています。

そして、年金番号が基礎年金番号に統合されていなかった場合は、統合してもらいます。
これで、その方の過去に払った保険料の分の年金が増えます。

こういうことは「電子申請」ではできませんね。
氏名も、住民票の漢字で使っている「髙」「﨑」「栁」などの文字は使えません。
年金分野では、電子申請は、年金記録を守るという観点からは欠点のある手続といえましょう。

「ひとり一人の年金権を守る」。
これが社会保険労務士としての責務だと思っています。

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◆みなし労働時間制労働者まで労働時間把握?働き方改革実務の矛盾

2019年01月25日 12時02分47秒 | 労働基準
働き方改革関連では、平成31年4月1日から、
高度プロヘッショナル以外のすべての労働者について、
1か月単位で労働時間を把握しなければならなくなります(労働安全衛生法66条の8)。

かつ、月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が80時間を超える労働者に、
労働時間に関する情報を通知しなければならなくなります(労働安全衛生法施行規則52条の2第3項)。

対象労働者は高プロ以外の「全ての労働者」ですから、
・管理監督者
・事業場外のみなし労働時間制の適用を受ける労働者
・裁量労働制(専門業務型、企画業務型)の適用を受ける労働者
・派遣労働者
・海外派遣された労働者(短期海外出張労働者に限る)(基発1228第16号(H30.12.28))
も当然に対象となります。

ここで特に人事担当者を悩ましているのが、
「そもそも事業場外のみなし労働時間制の労働者は、労働時間を
算定し難いため、みなし労働時間の適用を受けているのであって、
労働時間を把握することが出来ない。
もし把握することが出来た場合は、その時点で労基法みなし労働時間制の
対象外労働者になってしまう」という疑問です。

労働時間を算定しがたい労働者にまで労働時間を把握しろと義務付ける矛盾。
法の主旨には賛成するが、法令順守を真剣に考えている人事担当者ほど迷い、悩んでいるのもまた事実である。

4月1日の施行日はすぐ目の前だ。

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