大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆もっともっと残業削減

2013年09月30日 23時30分09秒 | 労働基準
埼玉県さいたま市の社会保険労務士の大澤朝子です。

近頃は、割増賃金の支払いで頭を悩ましている経営者の方は多い。
なぜなら、労働局のあっせん、労働審判、割増賃金専門弁護士事務所の
台頭など、使用者を取り囲む労働者側の「訴え機関」が増大しているからです。

使用者からのご相談の多くは、割増賃金未払い問題で、そのような問題で
労働者から訴えられないにはどうすればいいのか、そんな質問が多く
寄せられています。

勢い、あの会社もこの会社も「定額残業代」制度へシフトすることが多くなり、
それはそれで一つの対策とはいえますが、ちょっと待ってください。
そもそも、その残業は本当に必要だったのですか?

●もっともっと残業削減
割増賃金の支払いにびくついている使用者は多いですが、肝心の、
そもそも「残業を減らす」という基本中の基本を忘れている方が多い
のが残念でなりません。

平気で、残業命令も出さずに、労働者の好きなようにタイムカードを
押させ、どこからどこまでが本当に残業時間なのか、
その残業は必要だったのか、残業野放し又は管理意識が飛んで
いる使用者の方がいらっしゃいます。

そんな会社は、早晩、「割増賃金未払い」問題で訴えられるでしょう。

「残業の野放し」--。非常に残念な「習慣」です。

残業は削減しましょう。
1日15分でも30分でもいいんです。
「無駄な」残業は、有意義に減らしましょう。

●残業削減は意識の問題
そもそも残業は、労働契約における特別の「業務命令」であり、その業務命令を
出さずには「使用者の指揮・命令に基づいて労務を提供する」という労働者の
労働契約上の義務が成立しません。

よく「15分でも残業になればいい」と、15分を過ぎてからタイムカードを
押して残業代を稼いでいる者がいる、と憤慨している使用者の方が
いらっしゃいますが、それは、あなたが「残業命令」「業務命令」も
出さずに、野放しで残業を許容しているからです。

ここは、本来の姿に戻って、残業を許可するときは、しっかりと、
「残業命令」又は「残業許可」を出さないといけません。
すなわち、「業務命令のない残業は残業として認めない」。
もし必要があって残業しなければならないときは、
しっかりと、上長判断により残業許可を出してください。

残業は、努力又は工夫によって減らすことができます。
「残業削減キャンペーン」をはりましょう。

●誰でもできる残業削減
少しの工夫で1日15分の残業を減らすことができれば、
10日で150分、20日で300分(5時間)、1年で60時間の残業を
減らすことができます。これを10人でやれば年間600時間の削減です。
30分削減だと、10日で300分、20日で600分(10時間)、1年120時間
の削減です。10人でやれば年間1200時間削減です。

従来からある「ノー残業デー」などという実行不可能? なことを
言っているのではありません。会社での残業を減らす代わりに
家での持ち帰り残業が増えたなどとなると元も子もありません。

大切なのは、会社が「残業削減」のキャンペーンをやるという厳然たる事実。

自分たちも少しの工夫で残業を減らさなければならない、としたら、
その班、そのグループごとに少しは意識の改善がみられるはずです。

・残業許可の適正な申請
・上長による適正な残業管理
・残業命令のない「残業」は認めない(ダラダラ残業の削減)
・一人一人の残業削減目標づくり
・残業を月〇時間減らした人への奨励金
・残業削減キャンペーンのキャッチフレーズの募集
・残業削減ポスターの募集
・残業削減のコツ、アイデア募集

思いつくままに書いてもまだまだ出てきそうです。
残業削減キャンペーンは、ダラダラ残業を減らします。
全員参加型で、あなたの会社でも、「残業削減キャンペーン」を
やってみませんか。

割増賃金を「定額残業代」で、などという話は、それからでいいのです。

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◆小規模企業でも取り組み易いヒヤリ・ハット活動

2013年09月27日 13時56分30秒 | 安全衛生
顧問先の労災保険の請求は日常茶飯事といっても過言ではありません。

「そんなに労災事故ってあるんですか?」
と思われるかもしれませんが、ごく小さな負傷は日常茶飯事です。

1社でみれば数年に1件くらいかもしれませんが、労災申請を扱う社労士事務所
では、あの会社でも、この会社でもと、日常合わせると結構な件数になってしまいます。
不思議なもので、1回起きると、その会社では何度も起きるということもあります。

小さな負傷…。
例えば、作業中、何かを取ろうとして床ですべって転んで手や足を骨折。
何かが倒れてきて足に当たり骨折。
自転車に乗るとき、カバンのひもがひっかかって、自転車ごと転倒…。

一つひとつは取るにたらない「事故」でも、例えば「骨折した」となると、
休業日数も多く、作業の停滞、人員配置の見直しなどが迫られることもあります。

●ハイリッヒの法則
しかし、上のような取るにたらない小さな事故をほっておくと、
ある日突然、大きな事故が起こるかもしれません。
1つの重大な事故の陰には29の軽微な事故があり、その29の軽微な事故
の陰には300の危険(ヒヤリ・ハットした経験)が潜んでいると
言われているからです(ハイリッヒの法則)。

●ヒヤリ・ハット活動
300のささいな“ヒヤリ・ハット”を無くせば、重大な労災事故を防ぐことができる…。
作業現場、運転現場等では、ハイリッヒの法則から、ヒヤリ・ハット運動に取り組む
ことが作業場等での基本中の基本とされています。

ヒヤリ・ハット活動とは、全員で、自分が経験した「ヒヤリ・ハット」経験を
抽出し、そのような危険が起きないようにするには職場や作業をどう改善したらいいのか
を話し合い、その職場なりの決定の意志のもとに改善案を実施に移すことです。

●小規模事業所でもヒヤリ・ハット活動
小規模事業所ですと、なかなかこのような運動を展開するのは難しいと考える人は
多いかもしれません。
しかし、その一方で、大企業に比べて、会社としてまとまりやすいので、全員が
一丸となって取り組むことができるというメリットがあります。

●簡単なヒヤリ・ハット活動
小規模事業所でもできる簡単な活動の例を紹介しましょう。

・現状把握 どんな危険が潜んでいるか。
・本質追及 その危険の本質・影響は何か。
・対策樹立 危険をなくすにはどうしたいいのか。
・目標設定 話し合った内容をまとめ、重点目標を掲げる。

この4段階の活動は、班ごと、グループごとなど、比較的小さな集団の中で実施し、
アルバイト、パートを含めた全員が参加して話し合い、目標設定をします。
全員で決めた目標は、ポスターにして貼る、朝会で複数回に渡って確認するなど、
日常的に、全員参加型、見える化で進めていきます。
この、“日常的”、“見える化”がこの活動では大切なことです。

このような活動を定期的に進めていきます。

●ヒヤリ・ハットを無くす職場の力
どうでしょう。これならあなたの職場でもできそうではありませんか。
「イヤー、うちの職場ではちょっと…」と
二の足を踏む方は、例えば、
4S(整理、整頓、清潔、清掃)の推進などはどうでしょう。
これらの活動もヒヤリ・ハット活動に通じるものと思います。

ヒヤリ・ハット活動は、何よりも、費用がかかりません。
業種も問いません。
班ごとに活動を発表し合い、「優秀」な班には「表彰する」なども、
職場内にこの活動を定着させる工夫の一つと言えるでしょう。
コミュニケーション・ツールとしてもいいのではないでしょうか。

あなたの会社でも取り組んでみませんか。


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◆統計から見る育児休業(「初めての産前産後・育児休業」連載その1))

2013年09月26日 11時05分45秒 | 産前産後・育児休業等
最近、人事パーソンの方から、
「当社で初めて産前産後・育児休業取得の社員が出ることになりました。
どのような手続きをしたらいいのかアドバイスください。」
とのご質問を受ける機会が多くなってきました。

そこで、少しずつ、それらの注意点や手続きのコツなどを
書き溜めていきたいと思います。

●はじめに

最近、育児休業を取得する人が増えてきたと感じています。
当事務所での手続実績では、健康保険の出産手当金を受給する人は、
ほとんどの人が雇用保険の育児休業給付を受給しています。
そこで、まず、雇用保険制度の統計から、どのくらいの人が
育児休業を取得しているのかみてみることにしました。

厚生労働省「労働統計要覧」を見ますと、「J 社会保障」の項目の中に
雇用保険の「育児休業給付」を受給した人の数や受給総額などが載っています。

全雇用保険の被保険者数約3,857万人(H23)に対し、育児休業給付を受給した
被保険者数は約22.4万人(同)、育児休業給付の支給総額263,161百万円(同)。

同じく平成23年の数字で、雇用保険の一般被保険者が失業し、
失業給付(基本手当)を受給した人の数を見てみますと、
受給者数は約1,643万人、支給総額904,702百万円です。

雇用保険制度では
・全被保険者数と育児休業給付の受給者数の割合 3,857対22.4(100対0.5)
・基本手当受給者と育児休業給付受給者の割合 1,643対22.4(100:1.3)
・基本手当総額と育児休業給付総額の割合 904,702対263,161(100:29)

と、こんな風に比べてみますと、いかに育児休業給付の支給額が
大きいかがわかります。
ちなみに、育児休業給付の支給額は、育児休業前賃金の50%。
育児休業は最大で1年6か月受給できますので、
90日分とか150日分などという失業給付(基本手当)に比べると、
大変厚遇されているといえます。

続く


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◆悪いこともあれば、いいこともある・・・

2013年09月04日 23時19分44秒 | 近況
社会保険労務士の大澤朝子です。

6月、7月は、1年で最も忙し時期。
労働保険料の申告、社会保険算定基礎届の提出と重要行事が
押し詰まっています。

そんな中、スポットで、割増賃金請求され事案が飛び込んで来、
まったくブログどころではない状況が長い間続いてしまいました。

長い間、お休みしてしまいました・・・。

新規再スタートは、的を絞って書き連ねていきたいと思っていますから、
これまでとは違ったブログになるかもしれません。
希望的観測ですが。

さて、この夏は、「割増賃金請求され事案」に心も体もすっかり
グタグタなりました。
いえ、弊事務所に相談を持ち込んだ会社様の事案ですが・・・。

割増賃金未払いの事業所には優しく、社労士には辛く当たるという
そんな監督官もいることにも気付かず、まだまだ自分は甘いと、歯ぎしりしきり。
言ってみれば、修行が足りないということでしょう。

まあ、悪いこともあれば、きっといいこともある。
そう信じていきましょう。

そんな中、今年のお盆休みは、秋田へのお墓参りに行く途中で、
平泉は中尊寺に行ってきました。
感想は・・・、松尾芭蕉のようにはいきませんでした。

どこへ行っても「人」「人」「人」の群れ。
金色堂も「人」を見に行ったような感じでした。

思索にふけることも、静けさに聞き入ることも、それは
勝手な想像でした。

さて、2学期も始まったことですし、ここらでアクセル踏みこんで
行きましょうか。

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