平成12年夏。県営大宮球場(埼玉)。
――朝からギラギラと太陽の熱が肌を刺すその日、
第82回全国高等学校野球選手権埼玉大会決勝戦が行われた。
栄えある決勝のグラウンドに立つのは浦和学院高校と春日部共栄高校。
試合開始1時間も前から球場に駆け付けたのは、
今年、浦和学院高校に親族が入学したからで、いわば父兄側の応援団。
3塁側ベンチ裏にはまだ客もまばらで、通路暗がりを見ると、
浦和学院の選手たちが、しゃがりこんでキンピラごぼうに、
梅干し程度の貧弱な弁当をかきこんでいる。
(選手のお母さんたちが手作りしたものだ)
試合開始前。浦学の選手たちがウオーミングアップのため
グラウンドに出てきた。
整然と並んできびきびと行動する選手たち。
どの顔も「絶対に勝つんだ。勝って甲子園に行くんだ!」という
気概に満ち満ちている。無理もない、過去3年間で、2度決勝戦で
敗れ、甲子園の切符をあと一歩のところで逃していた。
――今年こそ。
今年こそ甲子園に。学校関係者、先生たちの思いも同じだったと聞いている。
そんなことを思いながら選手たちの動きを追っていると、
ウオーミングアップ、シートノックが終わり、
突然、選手たちが自分達のグラブを一列にきれいに並べ、
きっちりと並んで最後の軽ランニングに入った。
そのグラブの並べ方といったら尋常ではない。
「一糸乱れず」といった言葉が当てはまる。
小さいところに神宿るというが、どんな些細なことも
きっちりやる、そんなことをこの学校の指導者は生徒に教えている。
同校の監督は社会科の先生だと聞いている。
県内で甲子園常連校として常に大会上位に名を連ねる高校だが、
強いのは、こんなところにあるのだろうか……。思わずにはいられない。
試合は2対1サヨナラで、浦和学院が勝った。
炎天下での熱戦だった。
勝に沸く3塁側スタンド。ふと見ると、生徒席にいた先生たちも泣いている。
甲子園常連校は、先生たちもつらい。
帰り際、春日部共栄高校の吹奏楽部応援団を乗せたバスが
静かに球場を出て行った。生徒たちは皆ぐったりと疲れ果て、
頭を垂れるように座っている。
(ご苦労さん。いい応援だったよ。)
この年、浦学のエース坂元君はヤクルトへ入団。
その坂元君の1年下の投手大竹君の時は甲子園には行けなかった。
そして、浦学の成績も低迷気味。
その大竹君は広島に入団し、ご存じの活躍ぶりである。
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