大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

派遣労働者の同一労働同一賃金(どうする退職金)

2019年11月26日 10時07分35秒 | 派遣業
派遣労働者の同一労働同一賃金で揺れ動く派遣業界。

前回にも書きましたが、派遣労働者の退職金については、
局長通達が示す各制度、メリット・デメリット両方ありますが、
ここへきて、局長通達が示した3つの選択肢のうち、
(2)「前払い」に注目が集まっています。

当初「これはありえないでしょう」と思っていた「前払い退職金」ですが、
なんと、前払いを選択する派遣会社さんが多いようです。

前払いを選ぶと、
・割増賃金の算定基礎になる
・社会保険料等のアップにつながる
・受け取る本人は税制の優遇制度を受けることはできない
など、デメリットはあるのですが、
少しでもいい人材を確保したい派遣会社さんとしては、
前払い退職金で「時給をアップ」し、
人材を確保した方が得策と考えるようです。

確かに、受け取る側としては、例えば3年後の退職金よりも、
今の時給アップの方に魅力を感じるのはやむを得ないでしょう。

「退職金」は、局長通達(2)前払い退職金に
業界の足並みが揃いそうな気配です――。

お問い合わせは、
派遣業許可、助成金、就業規則の社会保険労務士大澤事務所へ



派遣業の同一労働同一賃金(退職金の前払いの場合)

2019年11月12日 11時20分12秒 | 派遣業
派遣労働者の同一労働同一賃金のうち、「局長通達」「3 退職金」について

■退職金前払いを選択する場合の注意点

局長通達の「3 退職金」では、次の3つのいずれかを労使で選択することとされている。
① 退職手当制度を設ける(勤続年数に応じた基準内賃金の支給率等)
② 退職金の前払い
③ 中退共、確定給付企業年金、確定拠出年金等に加入する

①の場合は、別添4(各種統計)を参考に一般労働者の退職金制度と同等以上の退職金制度を設ける。
②は、一般基本給・賞与等の6%増しの賃金を毎月支給するいわゆる「前払い退職金」制度。
③は公的な企業年金に加入する(掛金の割合は賃金の6%以上とする)。

■上記3択の各メリット・デメリット

<税法上、割増賃金、社会保険料等>
派遣労働者側からみれば、退職時に①又は②を受け取る場合は、退職金として、所得税法上の優遇措置が受けられる。
しかし、在職中に「前払い」として退職手当を受け取ると、原則として給与所得となり、税制上の優遇措置は受けられず、
毎月の給与所得として課税される。
企業側にとっても、前払い退職金の部分は「賃金」に該当し、労基法の割増賃金の算定基礎に算入される。
企業側の負担は、雇用保険料、社会保険料のアップにも及ぶ。

<人材獲得策>
派遣労働者にしてみれば、3年後や5年後にもらえるかもしれない退職金より、今もらえる給与が
高い方がいいと考える人もいるだろう。
他社との人材獲得競争の点では、メリットは小さくないと考える派遣会社もあるようだ。

<企業の損金扱い>
ちたみに、①は、将来の退職金のために企業が社内に資金プールしておくことが必要となるが、
この場合、当該額は、退職給付会計上、損金扱いとはならない。
一方、③の場合は、企業が負担する掛金は、原則として損金扱いとなる。
国税庁https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/5231.htm

以上のように、局長通知「3退職金」には、重要な問題がはらんでいる。
労使で十分協議し、会社の将来を見据えた制度設計を心掛けていただきたい。

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派遣業の同一労働同一賃金(派遣先均等・均衡方式か労使協定方式か)

2019年11月11日 19時58分29秒 | 派遣業
令和2年4月1日から、派遣業の同一労働同一賃金が施行される。
当事務所では、現在、派遣元事業主さんから「相談」の依頼が殺到している。

今後、一つひとつ問題を整理しながら、発信していきたい。

■「派遣先均等・均等法式」と「労使協定方式」のどちらを採るか

派遣労働者について、派遣元事業主は、基本給、手当、賞与等賃金全般について、
派遣先の通常の労働者と実体が同一であれば同一の、違いがあれば違いに応じた支給をしなければならない。
これを「派遣先均等・均衡方式」という。今回の派遣法改正の根本的な考え方だ。
そのため、派遣元は、派遣先から、その通常の労働者に関する詳細な賃金情報を提供してもらう必要がある。
以下の賃金以外の情報も同様だ。
イ 教育訓練
ロ 福利厚生施設(更衣室、食堂、休憩室)
ハ、休憩、休日、休暇
二、安全衛生
ホ、災害補償

一方、派遣元事業主が労使協定方式を採用する場合は、法に適合した労使協定を締結すれば、上記と
同等の措置をしたものとみなされる。
すなわち、毎年出される局長通知により、同種の業務に従事する「一般の労働者の平均的な賃金」
の額と同等以上の賃金の額とすることになる。
この賃金の額は、職務の内容、成果、意慾、経験等により改善されるものでなければならない。
また、公正に評価し、決定されるものでなければならない。

派遣先は、派遣元事業主が「派遣先均等・均衡方式」をとっているのか、それとも「労使協定方式」
をとっているのかで、発注の可否を考えてくるはずだ。
派遣先が大企業の場合は(派遣先の)「通常の労働者」の賃金が高いので、必然、派遣労働者の賃金も
高くなる(派遣料金も高騰する)。
また、自社で「比較対象労働者」を選んで派遣元事業主に、賃金等の「情報を提供」しなければならない。

これが、「労使協定方式」の場合は、情報の提供は原則として「教育訓練、福利厚生施設」に限られる。
しかも世間一般の平均的な賃金だから、企業規模に応じての賃金額の差は出にくい。

派遣先は、派遣会社を決める時、その会社が「派遣先均等・均衡方式」か「労使協定方式」かを
確認してから発注・依頼をしてくるだろう。

派遣元事業主は、どちらの方式をとるのか、生き残りを掛けた選択を迫られている。

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