大澤朝子の社労士事務所便り

山登りと江戸芸能を愛する女性社労士が、
労使トラブル、人事・労務問題の現場を本音で語ります。

◆定額残業代導入の注意点は

2017年10月02日 13時49分32秒 | 賃金
残業代を定額で支払う、いわゆる「定額残業代」。
導入すれば、給与計算的には「楽」かもしれないが、導入には注意点がある。
最近、最高裁の判例も出て(平成29年7月7日。第二小法廷)、関連して厚労省も7月31日、通達を出している。

<定額残業代採用時の注意点>
「時間外労働等に対する割増賃金を基本給や諸手当にあらかじめ含める方法で支払う場合には、
・通常の労働時間の賃金にあたる部分と
・割増賃金に当たる部分とを
判別することができることが必要である」(H29.7.31基発0731第27号)

具体例をみてみよう。
(例)月平均所定労働日数20日、1日の所定労働時間数8時間、1か月平均所定労働時間数160hの場合
・基本給300,000円、職務手当20,000円
・時間外手当20hの定額残業代を支給する場合=2,000円×20h×1.25=50,000円(320,000÷160h=2,000円(単価))
基本給300,000円職務手当20,000円時間外手当(定額残業代)50,000円 合計370,000円
このように、基本給いくら、諸手当いくら、定額残業代何時間分でいくら、と明確に数字を区別しなくてはならない。
無効とされる悪い例は、「基本給35万円に残業代が含まれる」などと、ざっくりと表現する場合などだ。
これでは、残業代が何時間分なのか、いくらなのか、さっぱり分からない。

更に「定額残業代」を導入する場合は、大事なことがある。
「割増賃金に当たる部分の金額が労働基準法第37条等に定められた方法により算定した額を下回るときは、
その差額を支払わなければならない。」(H29.7.31基発0731第27号)
定額残業代は、定額残業代を下回る時間の時間外労働であったとしても、そのまま定額を支払うが、
時間外労働が定額残業代の設定する時間外労働数を上回るときは、その差額を支払わなければならない。

就業規則には、何時間分の定額残業代を支給するのか、また、
実際に残業時間が定額残業代を上回って行われた場合は差額を支給する、などを明記しておきたい。

<まとめ>
定額残業代を導入する場合は次の3点すべてを明示する必要がある。
(1)定額残業代を除いた基本給等(所定労働時間に対して支払われる通常の賃金)の額を明記
(2)定額残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法(定額残業代の部分)
   〇〇手当(時間外労働の有無にかかわらず、〇時間分の時間外手当として〇〇円を支給)
(3)定額残業代を超える時間外労働、休日労働、深夜労働に対しては割増賃金を追加で支払う旨

以上が明示されていない場合は、残業代支給について無効と判断される場合がある。
定額残業代の導入は慎重に行いたい。


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◆最低賃金とは何か

2017年09月19日 11時36分21秒 | 賃金
<最低賃金とは何か>
最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額をいう。
最低賃金より低い賃金で労働契約を結んでも、それは法律上無効とされ、最低賃金と同額の賃金を
支払ったものとみなされる。

最低賃金には2種類ある。
①都道府県ごとに決められる地域別最低賃金
②産業ごとに決められる特定(産業別)最低賃金

特定(産業別)最低賃金の「産業」の種類は、都道府県ごとに定められている。
また、特定(産業別)最低賃金地域別最低賃金よりは高く決められている。
ちなみに、埼玉県の場合は、非鉄金属製造業、輸送用機械器具製造業、各種商品小売業など6業種が指定されている。

地域別最低賃金にと特定(産業別)最低賃金の両方が該当する場合は、高い方が最低賃金となる。

<最低賃金の適用>
最低賃金は、正社員、パート、アルバイト、派遣労働者などその種類を問わず、すべての労働者に適用される。
ただし、特定(産業別)最低賃金については、18歳未満及び65歳以上、雇入れ後3か月未満の技能習得中の者、軽易作業従事労働者には適用されない。

逆に言えば、地域別最低賃金は、18歳未満であろうと、試用期間中であろうと、原則としてすべての労働者に適用される。
もっとも、労働能力が低い人などの場合は、都道府県労働局長の許可を受ければ、最低賃金を下回る特例許可賃金が可能だ。
例えば、精神又は身体の障害により著しく労働能力が低い人、試用期間中の人、軽易な作業、断続的労働に従事する人などだ。

<最低賃金の対象となる賃金は何か>
最低賃金の対象となる賃金は「毎月決まって支給される賃金」で、基本給、各種手当などである。
しかし、精皆勤手当、通勤手当、家族手当、時間外・深夜・休日手当、臨時手当(結婚手当等)、賞与などは除かれる

<最低賃金に違反した場合>
最低賃金以下の賃金を支払った場合は、50万円以下の罰金と規定されている(最低賃金法40条)。


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◆定年再雇用後の賃金の決め方

2014年12月19日 10時57分56秒 | 賃金
60歳以降再雇用された嘱託等の高齢従業員の賃金は、
老齢年金の在職中支給停止や雇用保険の高年齢雇用継続給付があり、
企業の賃金管理に大きな影響を及ぼすため、軽々しく考えてはいけない。

公的給付の有効な利用は、企業にとって、賃金コスト、社会保険料などの法定福利費の
軽減などにも役立っている。

○60歳台前半
賃金と年金の合計が月28万円を超えると、その超えた部分につき一定の支給停止が
あるのはご存じの通り。
賃金が75%未満に下がると高年齢雇用継続給付が受給できる場合もある。

○65歳以降
賃金と年金の合計が月46万円(年度により変更有)を超えると、その超えた部分
につき一定の支給停止あり。

一般的に言えば、60歳の定年到達後は嘱託再雇用となることが多いが、その働き方
と年金や雇用保険の受給パターンは次の通りである。
カッコ書きは分かりやすいように説明を入れたが、実際にはもっと多様なことが想定される。

a.社会保険に加入を続けるくらい働くのか(年金の支給停止を受けるか・受けないか)
b.雇用保険に加入を続けるくらい働くのか(高年齢雇用継続給付を受けるのか・受けないのか)
c.老齢年金の繰り下げを選択するのか・しないのか(65歳以降の年金受給に影響)
d.老齢年金の繰り上げを選択するのか・しないのか(60歳台前半及び後半以降の年金受給に影響)

60歳以降の平均的収入パターンを想定すると、次の通りとなろう。
もちろん、社会保険や雇用保険の加入要件に該当する働き方か否かで
収入パターンは違ってくる。

・年金受給までは、「賃金+高年齢雇用継続給付」の2つの収入。
・年金受給以後64歳までは「賃金+年金(一定の支給停止あり)+高年齢雇用継続給付」の3つの収入。
・65歳以降は、「賃金と年金」の2つの収入。

年金と高年齢雇用継続給付は、「賃金」の額に応じて支給停止や給付額等が
決まるので、定年再雇用後でも、従業員側の手取り額は思ったより減じない場合がある。
而して、賃金をいくらにするとどの程度年金支給停止があり、どの程度高年齢雇用継続
が出るかをシュミレーションできるから、効率的な「賃金管理」ができるともいえる。

ただし、注意も必要だ。
確かに、シュミレーションしてみると、公的給付を用いて効率的に賃金管理はできるが、
人事評価など合理的な処遇がないような(金額のみをいじった)「行き過ぎた管理」は、
従業員のモチベーションを下げるなどの弊害も生みやすい。
また、定年再雇用後の働き方は、人によりまちまちなため、会社側が一方的に
その選択肢を狭めたりすることも避けたい。

65歳まで、原則雇用は義務化され、定年後の賃金管理は企業の賃金コストを左右する。
長期勤続の功労に報いた合理的な処遇ラインを見出す努力が必要となろう。


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