退職間際に、残りの年次有給休暇を全部請求して、
「今日から、私、出てきません。」と「退職届」を社長の机の上に
置いて突然職場からエスケープしてしまうなどのケースがある。
年休の残日数から「退職日」を設定してくるので、使用者側としては
手の打ちようがない。
使用者側も、例えば定年まで勤め上げたような長期勤続者には、
消化できなかった年休を全て付与し、長期勤続の功労に報いる用意はあろう。
中堅以上の企業では慣例となっているところも多い。
冒頭のケースは、例えば、勤続数か月や2~3年で他社へ転職していくなどの場合などに、
小規模企業などで多く見られる現象だ。
小規模企業には人材の余裕がなく、急な、人ひとりの欠員が、業務に大きな影響を与える
ことが多い。
年次有給休暇は、労働基準法第39条に規定されている強行規定だから、
もし、労働者が、残り30日間の年次有給休暇を「今日から全部」請求
したとしても、事業の正常な運営を妨げるなどを理由とする使用者側の「時季変更権」に
合理的な理由がない限り、労働者の指定する時期に与えなければならない。
注意して欲しいのは、「年休取得日」は「労働義務がある日」に付与するということ。
従って、労働義務のない「公休日」や「退職日以後の日」などは、
そもそも年次有給休暇の請求の権利自体がない。
労働者も使用者も知らないで勘違いしていることが多い。
ところで、年次有給休暇の本来の目的は、休息により今後の勤務に備えるものである。
退職日に合わせて取る年休については、制度の本来の目的を逸脱し、権利濫用と捉え
かねない部分もあるから問題が複雑だ。
退職日に合わせた「いきなりの年休請求」は、信義則上、一定の制約は
違法とはならないであろうとの見解もある。
「退職届」提出後、労働者の2週間の労務提供義務を根拠として、14日間について
年次有給休暇を付与することは違法ではないという判例も出ている。
労働基準監督署に上記「14日間」の可否について意見を求めると、
「労使よく話し合って決めてください。」との回答を得ることがある。
根本は、年次有給休暇を定期的によく消化させ、いきなり退職を迫られても、
それほど業務に影響が出ないように、普段から工夫しておくことが必要といえる。
それができなかった場合は、例えば、どうしても残った未消化の年休分を
「退職金」として支払うという手段もある。「退職」の場合に限られるが。
何はともあれ、労働基準法第39条第6項に規定する「指定有給制度」などを利用して、
普段から年休消化を促進し、未消化年休が「溜まらない」工夫をしておくことは、
冒頭のような困ったケースを出さない一つの工夫だろう。
★労務相談、就業規則、助成金、派遣業許可、給与計算
起業支援、パート雇用、社会保険手続ならこちら
“企業と人のベストパートナー”社会保険労務士大澤事務所
にほんブログ村
「今日から、私、出てきません。」と「退職届」を社長の机の上に
置いて突然職場からエスケープしてしまうなどのケースがある。
年休の残日数から「退職日」を設定してくるので、使用者側としては
手の打ちようがない。
使用者側も、例えば定年まで勤め上げたような長期勤続者には、
消化できなかった年休を全て付与し、長期勤続の功労に報いる用意はあろう。
中堅以上の企業では慣例となっているところも多い。
冒頭のケースは、例えば、勤続数か月や2~3年で他社へ転職していくなどの場合などに、
小規模企業などで多く見られる現象だ。
小規模企業には人材の余裕がなく、急な、人ひとりの欠員が、業務に大きな影響を与える
ことが多い。
年次有給休暇は、労働基準法第39条に規定されている強行規定だから、
もし、労働者が、残り30日間の年次有給休暇を「今日から全部」請求
したとしても、事業の正常な運営を妨げるなどを理由とする使用者側の「時季変更権」に
合理的な理由がない限り、労働者の指定する時期に与えなければならない。
注意して欲しいのは、「年休取得日」は「労働義務がある日」に付与するということ。
従って、労働義務のない「公休日」や「退職日以後の日」などは、
そもそも年次有給休暇の請求の権利自体がない。
労働者も使用者も知らないで勘違いしていることが多い。
ところで、年次有給休暇の本来の目的は、休息により今後の勤務に備えるものである。
退職日に合わせて取る年休については、制度の本来の目的を逸脱し、権利濫用と捉え
かねない部分もあるから問題が複雑だ。
退職日に合わせた「いきなりの年休請求」は、信義則上、一定の制約は
違法とはならないであろうとの見解もある。
「退職届」提出後、労働者の2週間の労務提供義務を根拠として、14日間について
年次有給休暇を付与することは違法ではないという判例も出ている。
労働基準監督署に上記「14日間」の可否について意見を求めると、
「労使よく話し合って決めてください。」との回答を得ることがある。
根本は、年次有給休暇を定期的によく消化させ、いきなり退職を迫られても、
それほど業務に影響が出ないように、普段から工夫しておくことが必要といえる。
それができなかった場合は、例えば、どうしても残った未消化の年休分を
「退職金」として支払うという手段もある。「退職」の場合に限られるが。
何はともあれ、労働基準法第39条第6項に規定する「指定有給制度」などを利用して、
普段から年休消化を促進し、未消化年休が「溜まらない」工夫をしておくことは、
冒頭のような困ったケースを出さない一つの工夫だろう。
★労務相談、就業規則、助成金、派遣業許可、給与計算
起業支援、パート雇用、社会保険手続ならこちら
“企業と人のベストパートナー”社会保険労務士大澤事務所
にほんブログ村