会津天王寺通信

ジャンルにこだわらず、僧侶として日々感じたことを綴ってみます。

『比叡のこころ講座ブックス』で葬儀と戒名を解説 柴田聖寛

2020-09-23 18:18:10 | 天台宗

 

 皆さんは皆さんは仏教について疑問を色々と持っていられると思いますが、天台総合研究センターが出している冊子『比叡のこころ講座ブックス1「道を楽しむ」』をお読みになることをお勧めします。同センターは平成24年4月から京都の仏教大学四条センターで公開講座を開催しており、一冊目の講演録である『道をたのしむ』は平成28年3月にまとめられました。齋藤圓眞同センター長は「はじめに」において「ご担当の吉澤健吉氏(京都産業大学文化学部教授、元京都新聞総合研究所所長)と吉田実盛氏(叡山学院教授)の両研究員の熱心な取り組みに敬意を表する共に、快く会場をご提供下さる仏教大学様に心から御礼を申し上げる次第であります」と書いておられます。
「道をたのしむ」の「葬儀のあり方と戒名」の章では、第2回「比叡のこころ」講座で、吉澤健吉同センター研究員が「現代における葬儀の変容」というテーマで講演された内容と、「お坊さんにここを聞きたい」という題で、吉澤同センター研究員、天台宗大僧正の小林隆彰同センター長、天台宗兵庫教区の真光院御住職、叡山学院教授の吉田実森同センター研究員の3人による座談会でのやり取りが活字になっており、ぜひ皆さんに知ってほしいことばかりです。
 吉澤同研究員は「クリスチャンとして育ちましたが、仏教は大好きで本籍クリスチャン、現住所仏教と言っています」と自己紹介をしながら、近頃葬儀そのものが変わってきていることを問題視し、場所が自宅やお寺から葬儀会館を利用するようになり、「直葬」といって通夜や葬式もしないで斎場で焼いてしまう例が増え、その上散骨ということになれば、お墓もいらなくなってしまうことに言及されています。そうした風潮に対して、伝統仏教としてはどう対応していくべきかを問うたのでした。
 吉田同研究委員は「きょうお話しすることは、多分に地域性があり宗派性もあります。ですから私の言うことのなかで、自分のところで可能かどうかを考えていただき、いいなと思われたら菩提寺やご家庭でご相談していただき、参考になることはしていただけたらと思います」と前置きしながら話をされました。
 お寺との関係については、吉田同研究委員は、事前に葬儀の相談することを提案されています。天台宗では、亡くなってすぐに、臨終行儀としての枕経の念仏を唱えるからです。近親者が「阿弥陀さんのお迎えが来ますから」と耳元で言うのです。まずはお葬式をしますという宣言の式が行われるのです。
 それから葬儀と告別式という段取りになりますが、この二つを区別して、厳粛に執り行われるべきなのが葬儀であると指摘されています。49日にも重要な意味がありまして、私たちの細胞が死に絶えることで、魄(体)から魂が離れていくまでの日数を考慮したのでした。そして、百カ日法要、一周忌法要、三回忌法要と続くのです。
 吉田同研究センター職員は結論として、仏事の意義を説いておられますが、私の考えも一緒です。「仏教は死後の法要がたくさんある。しかも追善法要までしてお布施を巻き上げるのかと思われる人もいるかもしれません。そうではなくて、ご遺族の悲しみのケアも込めて亡くなった方をお送りすることを真摯に考え、そういう法要をつくり上げたという歴史があるということをご認識いただきたいと思います」
 また、なぜ戒名が大事かということに関しては、小林同センター長が分かりやすくお話をされています。「命が終わっても、それが終わりではなく、次がある」のが仏教であることを指摘されています。お経を上げるのも、次に行こうとしているから、励ますためにお釈迦様の教えを送ってあげるわけです。戒名が規則であることも強調されています。「(次の世界)でどんな生き方をしたらいいかという宗教的な目標を持っていただき、亡くなったあとの死後の世界においてもこの名前で供養を続けていくというかたちで戒名は生きていくわけです」
 時代が目まぐるしく変わっていくなかでも、信仰をかたちにした大切なものは守り続けていかなくてはなりません。そのことを理解してもらうことも、天台宗の一僧侶としての私の使命ではないかと思っています。

        合掌

 


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