いよいよ読書の秋到来ですが、皆さんはどんな本を読んでいられますか。私は養老孟司氏の『バカの壁』『いちばん大事なこと』を再読しています。いずれも2003年に出版されベストセラーになった本です。とくに『バカの壁』は流行語にもなりました。
最近になって多様性ということがしきりに口にされますが、私からすれば、それは様々な考え方を尊重することが前提でなければなりません。しかし、そこに立ちはだかるのが偏見と、自分だけが正しいという思い上がりです。それを払しょくしなければ、かえって、多様性は混乱を生むだけです。それを教えてくれるのが『バカの壁』です。とくに人間というのは、自分が知りたくないことについては自主的に情報を遮断してしまいます。そのことを養老氏は問題にしたのでした。
物を知っているというのは、もともとはコモンセンス、つまり常識があるということでした。物知りということではなく、正しい判断力があるということなのです。NHKなどのマスコミの報道に振り回されている人たちは、コモンセンスをもう一度再確認すべきではないでしょうか。マスコミとて絶対の存在ではないのです。
養老氏によれば、カール・ポッパーという哲学者は「反証されない理論は科学的理論ではない」と述べています。「全ての白鳥は白い」ということを証明するためには、たくさんの白鳥を発見しても意味がなく、「黒い白鳥は存在しないのか」という厳しい反証にさらされるというのです。
確実なことというのは、あくまでも探し続けるからこそ意味があるのであって、それをイデオロギーとして他人に押し付けてはならないのです。
また、養老氏は『いちばん大事なこと』では、環境問題の難しさについて触れています。人間の力で感染症や自然破壊を阻止できるというのは、まさしく一方的な見方であり、「自然に本気でつきあっていれば『ああすれば、こうなる』が通らないことが体験できる」と書いています。結論的には「環境を破壊しない」ということにつきるのですが、人間はもっと謙虚にならなければならないのです。この二冊の本をぜひ手に取ってもらえれば、と願っています。世界が違ったものに見えてくるはずですから、
合掌
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