金剛流、豊春会「秋の能」プログラムとチケット
会社の研修とはいえ、せっかくの京都滞在。京都を堪能しなければ!
ということで、まずはここのところ関心を深めていた能を観ようと思い立った。最近では、新潮新書の安田登『能 650年続いた仕掛けとは』を読んでいて、観たいな気分がかなり高まっていた。ネットで調べてみると、平日の公演は残念ながら皆無。土・日であっても公演は限られていた。いくつかの候補から、京都でしか観賞できない金剛流の公演に的を絞った。
検討の結果10月15日(日)の公演がいいなと思ったのだが、ネット予約は1週間前まで。7000円の公演料に逡巡し、もたもたしているうちに1週間を切り、明後日に迫っていた。ダメ元で前日の14日(土)に金剛能楽堂に電話をしてチケットの有無を聞いてみた。そのときに電話応対してくれた方にこう言われた。
「こちらでは、空きがあるかどうかわからへんのでな、お弟子さんの(たしかにこう聞こえた)“みちはる”さんとこに電話して聞いてみてください。いないこともあるので、そのときはFAXでお願いします」
教えてもらった電話番号にかけてみると、重々しい口調でご本人が電話口に出た。これ幸いとチケットがとれるかどうかを確かめると、だいじょうぶです、会場に直接お越しくださいとのことだった。
この電話の後に、所用で大阪に行くことになっていた。ついでに梅田の紀伊國屋書店に寄り、能の本を物色する。その中からカラフルで、わかりやすく、能の謡いが60も収録されている『能の名曲60選』をチョイスした。さっそく京都に帰って、パラパラページをめくっていると、なんと金剛流のところに、豊嶋三千春(てしま・みちはる)という名前が出ていた。“みちはる”さんいうのは、もしかしてこの人か。金剛能楽堂のサイトで改めて確認してみると、出演者で、しかもシテ(主役)、能楽界の大御所、その人だった。ひえええ。そんな方がチケットの問い合わせの電話応対をしているのか。もう遅いが、今さらながらに恐縮し、光栄に思ったのだった。
当日は雨がそぼ降るなか、烏丸中立売上ルの金剛能楽堂に赴いた。受付に行くと、封筒に「東京○○様 お電話ありがとう御座いました」の文字が躍っていた。記念にとっておかなければ(上の写真)。本公演の能は「斑女(はんじょ)」と「紅葉狩」。「斑女」は、狂女もので舞がメインになる。「紅葉狩」は公演回数が多いポピュラーな能。平惟茂(これもち)が高貴な女じつは鬼神が優雅に紅葉狩をしているところに遭遇し、正体がわかって退治するというもの。「紅葉狩」も舞はみどころだが、笑ってしまったのは、舞の間、侍女たちが脇に控えているのだが、明らかに足がしびれていて体が揺れていたことだ。最後舞が終わって退場の段になって、ひとりが完全に動けなくなっていた。それでも能の歩き方はすり足だから、うまくごまかしてゆっくりと舞台から下がっていった。とんだハプニングだったけれども、まあ、ご愛嬌。能は知れば知るほど、すばらしい。日本の伝統美を知りたいあなた、教養人を目指すあなた、お奨めです!
能 650年続いた仕掛けとは (新潮新書) | |
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