昨日12月17日(月)下北沢B&Bにて『冒険家たちのスケッチブック』刊行記念トークショーがあった。題して「冒険・記録・食べること」。ゲストは豪華で、かのグレートジャーニーで有名な探検家の関野吉晴氏と、冒険家・写真家の石川直樹氏。司会はこの本の編集を務めたワダヨシ氏。
夜も更けた20時に第1部がスタート。内容は「食」が中心だった。一部始終をかいつまんで紹介しよう。
まず関野氏がアンデスで脂肪のうまさにとりつかれたことを披露していた。なんでもアンデスでは写真を撮られると、「脂肪が抜かれる」と表現するとか。日本だと明治時代に「魂を吸い取られる」みたいなことをいう人がいたと聞くが、それと同じことらしい。それだけアンデスでは、脂肪は重要な栄養であり、生命の源なのだそうだ。そんな場所だからこそ、したたりおちる脂肪がうまいと関野氏はいう。一方石川氏は、来る日も来る日も同じものを食べていたときに、アラスカで食べたイクラ丼がうまかったと披露していた。
そこから発酵食品、たとえばセイウチや、アザラシの腹に海鳥を詰めてつくるキビヤックに話は飛ぶ。臭いや味が強烈なようだが、その土地土地に根ざした食べ物は、やみつきになるのだとか。
ほかに関野氏は、学生に「食」の学習をさせていることを話していた。生き物を屠ることで、われわれの口に入る食べ物となるという当たり前の事実を当たり前として受け止めてもらう。コリアンダーやうこんなどの一年草を育てることや、山形の鷹匠を訪ねて、鷹が小動物を狩るシーンを見せてもらい、そうすることで食べ物の何たるかを実感してもらうのだそうだ。
石川氏はだいぶ脱線して、nalgeneボトルで盛り上がっていた。私も使っているけれど、飲料水を入れるという用途だけではなく、お小水用にも使うのだとか。ネパールで売られている中古のnalgeneボトルは、トイレ用だったかもしれないので、決して買ってはいけないと皆に忠告していた。
第2部は21時頃にスタート。私としては圧倒的に第2部の内容のほうが面白かった。「道具」、そして「冒険家・探検家」についてトークは進んだ。
最初に道具。意外なことに2人ともアナログカメラがお好きのようだった。石川氏は、筋金入りでフィルムをセットして10枚しか撮れないカメラを使用していて、同じ場所では最大撮っても2枚までという。フィルムの質感が好きというところまでは理解できるが、レンズを換えられないので、被写体の近くに行ったり、逆に遠ざかったりとカメラをもって移動して撮ることをしていると聞いた時には、なんでそこまでするのかとあっけにとられた。望遠レンズを使えば済むことだ。そんな面倒くささがいとおしいらしいが、私には理解不能だった。関野氏も似たようなことをいっていて、デジカメは何枚でも撮れるから、撮るという行為に緊張感がなくなっていく。フィルムを現像するときのドキドキ感は、デジカメでは失われてしまったとその喪失感を残念がっていた。
道具話で印象的だったのは、2人ともガムテープの効用を非常に主張していたことだった。なんにでも使える。テントの外張りが破れたときや、ポールが壊れたとき、自転車がパンクしたときの応急処置、はてはネームプレート代わりにも。
道具話のハイライトは、関野氏が記憶をたぐるように話始めた、4つの根源的な道具とされるものだった。それは以下の4つだった。
●釣り道具
●マッチ
●ナイフ
●縫い針
原始的な生活を送る人たちには、絶対欠かせない道具なんだろう。
そして今回のトークショーで最も印象深かった冒険家と探検家の違いへと展開していく。私はいままであまり気にすることなく、なにげなく使っていた2つの言葉だけれども、じつはその中身はかなり違っていた。
冒険家とは、危険を冒す人。探検家とは、探り検べる(調べる)人。つまりその人の趣味・嗜好で、楽しいから未知の領域に入っていくのが冒険家であり、調査して世の中の役に立てようと殊勝な心持ちで未知の領域に入っていくのが探検家なのだ。
例として世界最初の南極点到達を争った、アムンゼンとスコットを挙げていた。どちらがどっちかって。南極点に一番乗りして、戻ってきたアムンゼンが冒険家。スコットは調査隊を率いていた探検家。探検は調査が目的だから、どうしても装備が重くなり、機動的に動けなくなるんだろうね。スコット隊は南極点に到達したけれども、戻って来れずに全員遭難死した悲劇の隊だ。
ということで、下の本↓のタイトルに指導が入った。冒険家はスケッチしないだろう。冒険と探検がごっちゃになっている。ワダヨシ氏が小さくなっていったのはいうまでもない(笑)。人のことはいえないが、、、
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