AKIRA-NEWS by goo

Tcupサ終のため2022年春に移籍しました。岩手盛岡のことやサッカーなどスポーツのことを書きたいと思います。

嘘と罠!?スティングハメられる

2008-11-04 12:10:38 | ザ・ハングタン
マッキーこと牧村環は盛岡市の大通りで通り魔を目撃した。ちょうどスティングこと原俊彦も一緒だった。
「バッキャロー!!」
そう言ってマッキーは通り魔に何かをぶつけた。そしてスティングも通り魔を追いかけたが、裏通りで見失った。
「袋小路だったら警察を呼べるのにな」
ところが、通り魔は菜園の袋小路で女学生を陵辱してしまった。それをスティングは見ていたが、通り魔の男に飛び掛ろうとしたら逆に怪我してしまった。

そのことを知ったマッキーは翌朝盛岡学園の理事長室に呼ばれた。
「まったく情けないですな、通り魔に甘い考えは通用しません」
「はい」
「しかも袋小路で女学生に陵辱、それを目撃した男も襲われ…」
「それって」
「スティングだ。まったく…」

というわけで、ハングタンたちはさっそくスティングに話を聞くことに。ウイングこと高橋弥生はスティングが怪我したところをいじり回す。
「ほれ、ほれ」
「痛いよ、弥生ちゃん!本気で死ぬかと思ったんだから」
さらにエースこと荒川まどかがスティングに蹴りを入れた。
「こりゃダメだ」
さて、マッキーとショパンこと横田夏子はスティングの話を聞いた。左目のところにあばたのある、メガネをかけた男だということははっきりしている。
「でも、それだけじゃ不十分ですよね。もっとこう…手とかほっぺとか」
「あっ!」
「何か思い出したわ」
「そのあと菜園のネットカフェに消えていった…」
スティングが追いかけたときにはすでに通り魔はネットカフェに消えていた。
その話を聞いてホワイトこと白澤美雪がメモを取り出して読んだ。
「ということは、菜園のネットカフェですね。今あるのは2軒ですから…」
ということで、マッキーは生徒指導の一環と言う名目でネットカフェに調査しにやってきたが…生徒たちが遊ぶもんだからもう気が気でない。

ところが、その頃警察はスティングを通り魔事件の重要参考人として連行した。スティングは警察に通り魔の話をした。
「菜園のネットカフェに逃げ込んだんだよ」
「それを見ただけなのか?まさかわざと怪我したとかじゃないだろうね」
「はい」

夕方、清水町のマンションの1階。大谷と表札のかかった一室にハングタンが集まった。
「原君が捕まったの」
ショパンから出たこの言葉に生徒たちは驚いた。
「それでね、ゴッドはもし原君からハングタンのことが出るようだったら原君とは絶交しなさいって言ったの」
「そんな」
「どうして」
生徒たちは泣きついた。しかしショパンは生徒たちを振りほどく。
「本来ハングタンというのはあたしたちの秘密裏の姿なの。それが表に出たらどうなるかしら?」
そこへなんとスティングがやってきた。
「もしハングマンの存在が表に出たら、殺されるな」
「えっ?」
「だから捜査に役立つ情報しか教えなかった」
「よかった…」
スティングは盛岡中央署の松田と言う刑事にこってり油を絞られたことを話す。警察は前科者リストなど洗い出しているが多分該当者はいないだろうと言った。
「僕が言ったあの特徴も盛岡中央署のデータにはなかったからな」
ここでスティングはまた思い出した。確かネットカフェのところで店員は通り魔の男のことを中沢だと言っていたのだ。そして中沢と言うのは盛岡中央署の中沢住民課次長の息子なのだ。
「警察に話しても取り入ってもらえないからね、この話」
ついにハングタンは中沢勇一の捜索に全力を傾けることになった。

中沢勇一の父・吉春は原俊彦の釈放を知って愕然としていた。
「勇一が最近帰りが遅かったりしているが、まさかそんなことは…あの原と言う男、また何かやるに違いない」
そして松田と高橋を呼び出して原俊彦をマークするように指示した。

そうとも知らないスティングは、途中経過をウイングとアローこと斉藤葵に伝えていた。そこへ松田と高橋がやってくる。
「原俊彦、売春の現行犯で逮捕する」
高橋を見てアローは逃げ出したが、ウイングは白を切っていた。
「えっ?」
「ま、松田さん。それって別件逮捕であの事件のことを…」
すると高橋は勘違いを認め、逮捕しなかった。しかしスティングは冷や冷やしただろう。
その後マッキーから電話が入り、中沢勇一を確認したからすぐに盛岡駅に来いと言われ、盛岡駅に向かった。

盛岡駅南口のレストランで中沢勇一は食事をしていた。確かにめがねをかけており、左目の近くにあばたと呼べるものがあった。
「間違いないわね」
「だとしたら彼も僕を知っているはずだ」
しかし中沢はスティングの顔に気がつかなかった。スティングはあの袋小路で影になっていた上、いつものくせで下を向いた格好だったのがかえって幸いしたんじゃないかと言った。
「それじゃ、いくわよ」
マッキーとショパンが中沢を呼び出し、南口の駐車場へ。そこにアロー、ホワイト、エース、ウイングも待ち構えていた。中沢は恐怖のあまり逃げようとしたが、ここでスティングも現れた。
「僕ちゃん、君の顔をよく知ってるよ」
「知るか、そんなこと」
「菜園のネットカフェのところまでついてきたんです」
「ふざけんな!」
中沢は鉄パイプを持ってスティングとショパンに襲い掛かるが、そこへウイングの流れ弾が飛んでくる。中沢は流れ弾に当たって伸びてしまった。
「さぁて、これからどうしましょ」

中沢はハングタンたちにまた囲まれた。
「君たちは何者なんだ」
「あたしたちはハングタン、あんたのような悪党を始末するのが仕事よ」
「今回は…これ」
ウイングがとげのついた爆弾ボールを投げつけた。
「このボールには火薬が詰められています。これが爆発すると…」
マネキン人形はウイングの投げたボールに当たって爆発した。
「しかもとげつき。とげがあるってことは当たったら即死ですよ」
「…いやだ!」
マッキーとショパンは恐怖におびえる中沢を残して立ち去った。中沢は恐怖のあまり声が出なかった。
「もしも爆弾の犠牲になりたくなかったら、あなたが通り魔、売春、強姦などしたことをしゃべりなさい!」
ウイングが爆弾を投げつけた。しかし中沢は何もしゃべらない。仕方がないのでウイングがもう一球投げる。とげが中沢のめがねを破壊、ここにきて中沢はとうとう自白してしまった。
「助けてくれ、うわっ」
「ダメですよ、最後までちゃんとしゃべらないと」
「言う、言う。だからもう…」
「そうですか、わかりました」
しかしウイングはもう一球投げるモーションを起こした。
「あの夜も、むしゃくしゃしてたんだ。上司には色々言われ、親父にも説教され、酒を飲んだと言うとまた何かかにか…」
中沢のこの自白は盛岡駅滝の広場のスピーカーに大音量で流されていた。そうとも知らずに中沢は自白を続けた。
「むしゃくしゃして通り魔やった奴いるだろ、あれを模倣したくなったんだ。警察に親父がいる役所勤務の地方公務員がやったとかなれば大変な騒ぎになるからな」
それを聞いた市民は激怒した。
「なしてやんだ」
「ふざけんな!」
とうとう中沢は箱の中から脱出した。しかしすでに中沢の周りは警官が包囲。
「勇一!よくもわしの顔に泥を塗ってくれたな」
「親父!親父も同罪だ」
「馬鹿もんが」
中沢吉春は不甲斐ない倅の頬を叩いた。そして中沢勇一はパトカーで松田と高橋に連行された。

数日後、岩手県警の本部長の会見が行なわれた。中沢吉春は依願退職、またスティングを誤認逮捕した松田と高橋も減俸となった。
「ふぅ、危なかったな。危うく君たちに消されるところだったよ」
「そんな危ないこと、絶対にしたくなかったのよ。でも警察内部、それに身内がやったっていうのは盲点よね」
「飼い犬に手を噛まれる、なんてね」
するとウイングがマッキーの指をしゃぶっていた。それを見たマッキーがたまらず
「バッキャロー!!」
ウイングの天然ぶりにはもうスティングもショパンも苦笑いだ。

殺戮のリセエンヌ・生徒会選挙買収事件

2008-10-31 03:49:29 | ザ・ハングタン
もうすぐ生徒会役員の改選。文化祭が終わったら生徒たちはそのことばかりである。

現生徒会長の太田カナは次期会長に2年A組のクラス委員の佐藤光明を推薦する。しかし現書記の榎田俊はそれが納得できない。
それを知った生徒会担当教諭団は臨時の生徒総会を開くことにし、新年度生徒会役員選挙のことについて議論しようということになったのである。

「でも榎田君だけだったらわかるのよ」
カナは斉藤葵と高橋弥生に愚痴をこぼしていた。
「ほかに誰かいるわけ?」
「A組で佐藤君とトップ争っている網浜裕太君でしょ、1年生でアイドルと言われてる清川枝織ちゃんでしょ」
「クラス委員の鼻を明かすために対抗馬に…なんて馬鹿な子なのかしら」
葵は憤慨した。これじゃどこかの総裁選挙じゃないか。
「確かに無競争よりは候補が集まってやったほうがいいとは思ってるけど」
「役員人事で先生まで動員するんじゃ、やってるほうも大変だよ」

その夜、佐藤光明の家に電話がかかってきた。
「佐藤光明君、今度の生徒会長選挙への立候補を辞退しろ。さもないとお前の親が酷い目に遭う」
そんな脅迫電話に光明は屈しなかった。しかし光明の父がまさかりを持った若い男に襲撃される。挙句のど元に迫ろうと言うところで女の悲鳴が…

翌朝、佐藤家は険悪な雰囲気だった。佐藤博光が斧で襲撃されたということで、光明は学校どころではなかった。
「僕、今日学校休みます」
光明は2年A組の担任の和田秀明に電話し、本日欠席することを伝えた。

佐藤博光は北愛病院に入院していた。
「で、昨夜は何時ごろ襲われました?」
「確か10時過ぎ…銀河鉄道の最終の八戸行きに乗りましたから」

その事件について原俊彦が記事を東北日報に出していた。
「まったく、我が子でなくても愛のない馬鹿野郎が増えてしまったじゃないか」
そう言って出さなかった没原稿を破り捨てたところに横田夏子が。
「もう、どうなってんのよ」
「先生」
「あんたのことじゃないのよ、斧で人を殺めようとしたんだから」
「このことか」
そして東北日報の巣子での斧通り魔事件記事を見せた。
「襲われた佐藤さんって、佐藤光明君のお父さんなの」
「佐藤光明?誰だ」

夏子は俊彦を盛岡学園の高等部最上階へ。もちろん理事長室だ。
「次期生徒会長の最右翼である佐藤光明の父親が襲われた。もちろん通り魔の可能性もあるが、巣子のあの近辺で通り魔をやるような人はいないらしい」
ゴッドこと大谷正治理事長が事件の説明をする。
「したがってこの事件の手がかりはまったくない。北盛岡署もお手上げみたいだ」
「確かにそうですね、北盛岡署は全国で多発する斧による殺人や通り魔騒ぎと関連付けているようですが」
「そこよ」
牧村環が佐藤光明がカナの推薦で次期会長に立候補することを説明した。
「ところが佐藤君の対抗馬として同じクラスの榎田俊が立候補の意思、ということなのよ」
「榎田…まさかちょっとすれ違っただけでオーラのある、メガネの」
俊彦は榎田俊と面識があった。夏休みエリート体験ツアーに同行した際に一緒になっていたからだ。
「あの榎田君も出てくるのか」
「このままじゃカナのメンツ丸つぶれなの」
しかし俊彦は生徒会役員と今回の事件が絡むと言う確証がないのなら、と断った。
「あら、いつもはすぐに乗ってくるはずなのに」
俊彦が帰ろうとするとき、ゴッドはこう言った。
「もし生徒会選挙立候補者の身内にまた何かあったら…それでは遅すぎるんだ」

榎田は中学時代のクラスメートの遠藤通と話していた。
「さすがは先輩だよな」
「でも、これで佐藤が辞めるかどうか」
「あとは和田先生に頼んで会長候補を俺にしろと言えば」
榎田は担任を買収して選挙人を自分の思い通りにしようとした。

その夜、今度は中野の公園で若い女性が襲撃された。そこへなんと国分繁治がやってきたのだ。
「待て!」
「誰だ」
そして繁治は襲撃犯をとっちめようとしたが、男は106号の市内方面へバイクで逃亡。
「ちくしょう」

盛岡学園の理事長室に俊彦と繁治がやってきた。
「夜更けにシゲから電話が入ったんで、話を聞いてみると襲われたのは武田恵理のお姉さんだったらしいですね」
「武田みゆき、23歳。市内の会社に勤めるOL。妹の恵理は盛岡学園の2年B組の生徒で、次期生徒会役員選挙の執行委員候補として名前が挙がっているひとりです」
そして俊彦はゴッドの昨日の言葉を思い出し、今回の生徒会役員選挙が2つの事件を解く鍵だと考えた。さっそく俊彦は環に選挙のことを聞き出した。
「立候補予定者は会長3人、副会長5人、執行委員は9人、書記と会計は各5人、総会運営委員4人、全部定数を超えてるの」
「そのうちの2人の候補の身内が被害に遭ったと言うわけか」
「そうなの」
「ところで佐藤君は?」
「僕はテロに屈しない、とか言って立候補する構えよ」
そのことを聞いた俊彦は、あとのことをハングタンに任せることにした。

榎田と遠藤は佐藤博光を斧で襲撃した先輩の松島と公園の水飲み場ではしゃいでいた。
「でも佐藤の奴立候補するって。まだまだこっちにはからくりがあることも知らないで」
「和田先生も一枚かんでいるって知ったら、さすがのあいつも吠え面かくよ」
そこに偶然弥生と白澤美雪が立ち寄ってしまった。
「ねぇ、弥生。こんなに寒いとこってはじめてでしょ」
「うん」
二人は榎田たちに気付かないふりをしていた。

夜、環と俊彦は例の地酒バーで弥生と美雪が見たことを話した。
「で、松島先輩って言ったんだね」
「そうよ」
「でも盛岡学園の3年に松島っていないんじゃ」
「そう、だから多分」
「榎田か遠藤の出身中学調べようよ」
「あ、そっか。榎田と遠藤の出身中学ね。確か同じはず」
ということで二人は矢巾へ。そして松島有希子と言う女子生徒の話を聞いた。松島先輩はこの人ではないか。
「バレー部出身、当時身長166センチ…これなら」
「もしもヒールとかで少し背伸びすれば佐藤君のお父さんが間違えても仕方ないわ」
というわけで、二人はさっそくハングタンに連絡して松島有希子を探すことにした。おそらく次のターゲットは1年B組の藤原若菜、佐藤光明と親しいと言う噂もあり、今度の選挙では総会運営委員に立候補している。しかも矢巾出身だ。

まずは実家の近い白澤美雪と斉藤葵が矢巾まで同行することを決めた。高橋弥生はIGRいわて銀河鉄道の厨川駅から盛岡駅まで、荒川まどかは盛岡駅から矢巾駅まで遠目の警戒。
「とりあえず夏子さんにも協力してもらいますから」
一方、松島の携帯に電話。相手は何と和田だった。
「和田さん、どうしたんですか」
「松島君、あと一人だ。どうしてもあと一人」
「どういうことですか」
「実はわたしと君の秘密を知ったのがいるんだ」
松島は和田の話を理解できなかった。そこで午後6時に盛岡駅のフェザン南館で会うことにした。しかしその声は繁治に筒抜けだった。

午後6時、IGRの駅ではハングタンの護衛で藤原若菜が改札を出た。一方の松島有希子は和田秀明を待ったが、いくら待っても来ない。
「和田さん、遅いわ」
「残念ですが、和田秀明さんは来られないそうです」
そう言って繁治が弥生と一緒に松島を連行。当の和田は夏子に呼び止められたところを美雪とまどか、そして俊彦に倒された。
「これで役者はそろった」

暗室の中で和田と松島はぐるぐる巻きにされた。
「ここはどこだ」
「なんなのよ、あたしは盛岡学園と関係ないのよ」
そこへハングタンたちが現れた。
「あたしたちはハングタン」
「あたしたちは神の使いなの」
「あんたたちのようなひどい人たちを処刑するわ」
「あたしたちは死刑執行人よ」
「あんたたち、覚悟しなさい」
しかし和田も松島も何も自白しない。そこでギロチンを用意。
「断頭台の露と消えるの。マリー・アントワネットみたいにね」
「いやよ、そんなの」
「いやなら今回の事件のことを白状して」
すると松島は泣いた。それを見た和田は松島をかばいながらこう言った。
「彼女は関係ないんだ。佐藤や武田に選挙出馬をやめさせろと言ったのは榎田と遠藤だ」
すると松島は激怒。
「ひどい!そのためにあたしに佐藤博光さんを襲わせようとして…あたし怖かったんだから」
「ふざけるな!」
痴話喧嘩を続ける二人をあざ笑うかのようにハングタンたちは去った。

翌朝、朝礼ということで和田と松島の自白テープが流された。榎田と遠藤はそれを聞いてびっくりした。
「ふざけるな」
「エリートがのし上がるためには多数派の論理が…うぐっ」
「選挙は自己中心派のゲームじゃないんだ」
「何がゲームだ、この世の選挙なんて信念より己の力だ」
しかし和田の自白テープで選挙に自分が当選したら自分が学園の生徒たちのリーダーとなっていろいろな行動をすると主張していたことを知ると、
「…なんてことだ。自分のライバルを蹴落として、力に任せておけばすべてうまくいくと思っていたはずなのに…」
榎田も遠藤も観念した。そこへ環が現れたが、
「バッキャロー!!」
とあっさり罵倒されてしまった。

昼休み、環、美雪、弥生、まどか、夏子がお弁当を食べていた。そこへ俊彦と繁治が。
「しかし参ったよ。ゼブルージャの次期監督候補に俺の名前が載っちゃって」
盛岡ジャーナルの紙面にちゃんと「盛岡FC新監督人事で原俊彦氏入閣か?」と載っていた。それを見た俊彦は
「選挙は立候補するのも一苦労だけど、投票する人も大変だよ」
そうぼやいていた。

教え子の母が殺人者に!?母恋い捜査線

2008-10-29 17:30:23 | ザ・ハングタン
アローこと斉藤葵が市内のスーパーで同級生の河井みずきの母ますみを見ていた。
「あ、こんにちは。みずきちゃんのお母さんですよね」
「あら、斉藤さんところの」
アローはますみのレジで2500円の買い物をした。
「大変ねぇ、会社の事務所暮らしと言うのも」
「でも慣れましたから」
そう言ってアローはスーパーをあとにした。

その夜スーパーでレジ打ちの店員が殺された。そして警察は河井ますみを容疑者として逮捕した。
盛岡学園高等部、3年B組の教室でもみずきが酷い仕打ちを受けていた。それをアローとホワイトこと白澤美雪がなぐさめていた。
「なんとかならないかしら」
「警察はすぐにみずきちゃんのお母さんを…」
そしてアローとホワイトはA組のエースこと荒川まどかとともにマッキーこと牧村環に相談する。
「なるほど、事件の全体像はぼんやりとだけどわかってるのよね。だけど河井の母が殺人犯にされているとなると」
そこに男の声が。スティングこと原俊彦だ。
「河井母子がかわいそう」
「誰がうまいこと言えと?」
「それはともかく、河井ますみはシロのようだ」
「どういうこと?」
「実は河井ますみの目撃情報があったので逮捕したらしいとのことだが、それがガセじゃないかってことなんだ」
スティングはメンバーに資料を見せた。
「にもかかわらず警察はスピード検挙をめざして明日にも送検するつもりだ」
「そんな」
「とにかく関係者をターゲットにしてみた」

スティングがターゲットにしたのは店長の藤井宣明、人事課長の古川浩、レジ係の宮沢理香子の3人だ。それぞれの関係についてスティングは説明した。
「店長の藤井は殺された原田良子さんと付き合っていたのではないかと噂になってた」
「それで?」
「藤井は古川に頼み込んで原田を正社員にしようとした」
「なるほど、それで藤井さんと古川さんが…」
「古川は河井ますみとどっちを正社員にするかで迷っていたらしい」
「…藤井の肉体関係を理由に」
「で、宮沢理香子は?」
「実は宮沢が垂れ込み電話の主として浮上しているんだ。あのとき事件を目撃しているのかも知れない」
「ということは、宮沢が殺したということも」
「それも考えられる。とりあえず宮沢理香子はショパンが見張っている」

あのスーパーでショパンこと横田夏子が宮沢理香子を見張っていた。
「あれが宮沢理香子ね」
宮沢理香子のレジ打ちを見ながらショパンも指を動かしていた。そこへスティングからの無線が入った。
「こちらショパン、どうぞ」
「宮沢理香子は?」
「ずっとレジ打ちをしているわよ」
「OK,そのまま続けて」
そしてショパンは宮沢理香子の情報を再度確認した。
「宮沢理香子、28歳。花巻高校時代にバレーボールで全国大会出場、現在は開店から毎日4,5時間の労働のあと近くのスポーツセンターでママさんバレーに合流、か…」
店内では理香子がママさんバレーの仲間の買い物の精算をしていた。

一方河井母子はマッキーが尾行した。
「おっ、きたきたきた」
河井ますみは家からどこかへ向かっていた。

さて、これでスティングは藤井と古川に喰らいつけばいいだけだ。
「店長が出てきたぞ」
藤井がタクシーに乗った。そこでタクシーの番号をメモした上で、スーパーの本社まで追跡した。
「ここが本社か。きっと古川だ」
まさにその通り。藤井は古川と部下の関英二に宮沢理香子の話をした。
「宮沢はわたしが見てきた中でも優秀な部下だと思います。ただ…」
「わかってる、原田良子を殺した一件だろ。それは河井ますみの犯行と言うことでかたがついているんだ」
「関君、君の事は一切感づいていないようだ。安心したまえ」
「はい」

古川と関と別れた藤井は本社をあとにして街のほうへ歩いていった。するとそこに河井ますみの姿が。それぞれを尾行したマッキーとスティングもいた。
「ごめんね、みずき」
そう言ってますみは包丁を取り出した。それを見たマッキーはすぐに道端の石を拾ってますみにぶつけた。
「誰よ」
「バッキャロー!!」
そしてマッキーがカモフラージュのために藤井に突進した。それを見てスティングは藤井に抱きついた。
「藤井さん、危ない!」
しかしスティングはマッキーと一緒に藤井に襲い掛かった。そして藤井は泡を吹いて倒れた。
「あとは古川との関係だな」

いよいよ第一ハンギング。藤井は古川と関に原田良子も河井みずきも、そして宮沢理香子も人事部長の裁量で決められると言われたことを話した。
「俺は妻を亡くして、この店長の地位が虚しく思えたんだ。だから退職するつもりでいたんだ。人事部長の古川とは同期入社で、最初は同じ厨川店で働いていたんだ」
「厨川店か、ずいぶん前に閉店したな」
藤井は4年前に妻を亡くし、その後店の女性店員に手を出していたようだ。その中に先ほどの3人もいた。
「ちょうどスーパーは整理案でわたしの店が閉店することになっていた。だからその際に市内店に転勤させる社員を何人かリストアップしたんだ」
そして古川が藤井の心の弱みに付け込んで工作をしたという。自分や関はそこに加担しただけで、すべての計画は元はと言えば古川の考えだったのだ。
「それと、原田君のことなんだ。彼女は店の売り物をくすねてはあちこちにばら撒いていたらしい」
「それって、どういうことよ」
「実は原田君、梁川の上流の根田茂の人たちに食べ物を送り届けていたらしい。よく見たらそれは期限間近の売り物だった」
藤井は泣いていた。これを自分たちが正しい方法でできたら、そして根田茂の人たちに自分たちの商品を手に取れるようになれたら。それを思うと残念な気持ちだった。
「原田君はわたしと付き合っていた。でも殺していない、殺したのは古川と関君だ」
「これで決まったな」
「ところで、宮沢理香子は?」
「…先生が見張っているはずだが」
そしてスティングはショパンに連絡。しかしショパンからの連絡では宮沢理香子は体育館に向かっただろうとのことである。
「藤井店長の青山店から体育館まではそんなに距離はない…しかし」
「何か不安でも?」
「帰りに古川と関が襲ってきたらどうする?」
「帰りに?」
マッキーはひらめいた。バレーの練習のあとの帰り道で生徒たちと合流し、青山駅まで護衛すればいいのだ。
「そこで古川と関は一網打尽、そして藤井店長の声を聞かせれば…」
「なるほど」
マッキーは携帯電話で生徒たちに連絡、体育館に集まるよう呼びかけた。ただし高橋弥生には今回連絡していない。

理香子は古川が迫っていることなど知らずにバレーの練習をしていた。古川は体育館の入口まで来ていたが、そこにママさんバレーの取材と言う口実でスティングとショパンがやってきた。
「あれれ?お客さん、ジャストスーパーの方ですか」
古川は肝を冷やしたが、すぐにトイレのほうに消えていった。それからショパンは女子更衣室で待機、スティングは男子トイレを見張る役だ。
「古川はトイレ長いのか?まさか…」
そして古川がなかなかトイレから出ないのを気にしたスティングはトイレに突撃、すると古川はロープを持ってスティングに襲い掛かった。
「貴様、藤井店長をどこへやった」
おろおろするスティング。しかしすぐに古川に文句を言う。
「青山店の閉鎖と藤井店長の退職を知っている関係者、そして宮沢理香子がバレーボールをやっていることを知っている本社の社員、それはあなたしかいない」
「何だと!?」
古川は逆上してロープをスティングの首に巻きつけた。するとスティングは馬鹿力でロープに噛み付いたのだ。
「古川さん、藤井さんはすべてを話しましたよ。そして宮沢理香子を消そうということも」
「…待て、待て」
古川が浮き足立っている隙にスティングはロープをほどいた。さらにスティングが入口に走り去ったときには生徒たちが包囲していた。
「携帯電話からすでに警察に送信されていますよ」
「古川さん、あなたもしゃべってください」
「よくも…よくもみずきのお母さんを」
アローは古川を殴ろうとしたが、マッキーに静止された。
「お前たちは何者だ」

「あたしたちはハングタン」
「あんたたちのような無法者を裁く美少女処刑人よ」
「藤井さんの身柄はあたしたちが警察へ届けました」
それを聞いた古川は観念した。古川は原田良子の横領を見逃した過去があったが、数日前に原田は古川に正社員の話はなかったことにしてくれと言われたらしい。その前の日にはますみが原田から横領のことを聞く場面にも遭遇している。
「実は、良子君の横領は俺の横領だったんだ。盛岡市内のへき地の人たちに食料を届けたい、しかしこのご時勢だ、どうすることもできずにわたしがやってしまった…それを良子君は見てしまった」
「そうだったの」
「そして河井ますみさんとのいさかいを利用して罪を着せた、そうでしょ」
「バッキャロー!!」

古川はこの第二ハンギングで逮捕された。藤井は酌量の上放免され、中野店の店長兼市域配達主任となった。また、青山店は閉店するものの、月が丘店として新装開店することも決まった。河井ますみと宮沢理香子は新店舗で働くことになり、つなぎの期間中野店でご厄介になった。
「お母さん!」
「ごめんね、心配かけちゃって。勉強どうだった?」
河井母子は無事再会を果たした。それを見たマッキーは感動のあまり泣いてしまったが、そこへスティングがやってくる。
「母親の無実が証明されて、どーんと晴れハレって」
「何よ」
「それにジャストスーパーが青山から月が丘になって、先生もよかったんじゃないの?」
「べ、別に」
「宮沢理香子は月が丘店開店まで中野店で働く傍ら、根田茂方面の配達サービスなども手伝うことになったらしいよ。河井ますみは宮沢理香子が働けないときだけ来ればいいって言ってたし」
「そう、よかったね」
宮沢理香子は今日も配達に出た。106号線から根田茂へ右折し、根田茂・砂子沢地区の住民に新鮮な県産生活財を届けるのだった。

番外編・ハングタンの日常

2008-10-27 18:46:12 | ザ・ハングタン
岩手県盛岡市に住む「ザ・ハングタン」のみなさん。そのくらしは如何なものか。

学校の仕事を終えた牧村環先生は、バスケ部の教え子高橋弥生を連れて河南のほうにあるマンションへ。今日は酒飲みの予定もないので車で行くことにした。
環「しかし盛岡の道路って狭いよね。東京や新潟より狭いもん」
弥生「あたしも、確かに福岡のほうが広いなって思いますよ」
ぼやきはその程度にして、牧村環と先輩の横田夏子が共同生活を送っているマンションの一室。そこには夏子と友人の原俊彦がいた。
環「あら」
俊彦「マッキー、それにキャプテンも」
夏子「やぁ、あなたが弥生ちゃん?」
弥生「はい」
そして俊彦はみんなのために麺料理をごちそうすることにした。それはじゃじゃ麺だったが盛岡のじゃじゃ麺とは少し違っていた。
俊彦「弥生ちゃんに合わせたから」
ということで、福岡出身の弥生のために地鶏の卵と麦味噌を用意してつくったのだ。
夏子「おいしい。それにいつもの店より細い」
俊彦「それも計算済みだよ、博多っ子は細麺だからね」
弥生がおいしそうに食べていると、俊彦がいきなりストップをかけてしまう。
弥生「んも~、人がせっかく食べているところに…」
俊彦「いいものごちそうしてあげる」
すると丸鶏スープに卵と丸鶏の肉を加えたスープが完成。
俊彦「チャンチータン、つまりすべて鶏のスープさ」
弥生「うわぁ、おいしそう」
弥生はこのスープも平らげた。
俊彦「水炊き風味だよ。岩手じゃなかなか食えないから」
夏子「鶏肉も柔らかくていいわ」
環「中華スープって本当はこんなシンプルな味なのね」
俊彦「一昨日取材した養鶏場から、丸鶏と卵もらったからさ」
夏子「すごい」
環「では、ありがたく頂戴します」
俊彦「10個までですよ」
環「いいもん」
先生と俊彦のハチャメチャをよそに、弥生はスープを飲み干しましたとさ。

翌朝、環と俊彦は弥生を連れて朝市へ。そこで地物を買いに行こうというわけだ。
俊彦「この時期は大根とか出回りますよね。うちでもやってるけど」
環「そっか、普段は家庭菜園もやってるんだっけ」
弥生「ええ~?」
そう言ってるうちに環は野菜や魚を購入。俊彦は自販機の野菜ジュースで覚醒するというわけだ。
弥生「先生、お持ちしましょうか?」
環「べ、別にいいですよ」
俊彦「じゃ、俺が」
環「そう?それじゃお願い」
環は俊彦に魚のバッグを渡した。もっとも野菜の籠は自分で背負ったが。
弥生「先生、今日は何をご馳走してくれるかな~」

こんな人たちです。

やってきたサムがストーカーにされる

2008-10-23 18:17:55 | ザ・ハングタン
現在記事にしたばかりの越乃松露をちびちびと飲んでいます。これからラジオのCS中継ですが…仮優勝粉飾V(とは言え1-1ですからこれからです)なるか?

さて、新潟から秋田新幹線でサムこと土谷好雄がやってきた。
「岩手も久しぶりだな。盛岡は地震でぶっ壊れてないだろうけど」
そんなことを言っていると、駅の改札にマッキーこと牧村環が。それを見たサムは人目をはばかるようにマッキーの待つ南口ではなく北口へ消えていった。
「もう、相変わらずなんだから」

サムはIGR線で玉山区渋民へ。ここにスティングこと原俊彦の自宅兼事務所がある。スティングは新酒の仕込みが始まったと言う記事を書いていた。
「さて、来週から酒ネタか。納豆は厳禁だな」
そう言ってスティングは酒を飲みながらパソコンのキーを打っていた。そこへサムの呼び鈴が鳴ったからさぁ大変。
「好雄です。開けてください」
スティングの母が出てきて、好雄をスティングの部屋へ案内した。
「俊彦、土谷さんって人が」
「サム?」
サムは新潟土産と称して自著「鮭と酒。Gozzo-Sake」と塩引き鮭と村上の地酒をスティングにプレゼントした。スティングも母と一緒に岩手の名産品でもてなす。
「でも、俺も鮭の子だからな」
サムの言う鮭の子とは新潟の鮭の収益金で育った子供たちのこと。新潟県民にとっても鮭は郷土の魚である。
「だどもよ、三陸の鮭もうめぇよ」
「んじゃ聞くけど、人工孵化は村上が最初だって知ってるか」
「知ってるよ。僕村上に行ったことあるから」

さて、その夜仙北町の駅近くでサムそっくりの若者がひとりのOLを追いかけていた。
「さぁて、いつものように」
そう言ってサムそっくりの若者はOLを尾行。さらには写真を撮っていた。
翌朝、スティングのもとにパトカーがやってきた。
「なんなんですか、いったい」
そこへ刑事が。なんと昨夜サムが仙北町の北上川河川敷でOLを強姦したという。
「冗談じゃありませんよ、土谷さんは…確か最終のIGRで帰りましたから」
「それを証明する人は?」
「僕と母です」
刑事はスティングの母にも事情を聞いた。とりあえず警察はサムを重要参考人として捜査することにした。

そのサムはなんと盛岡学園の校庭でフットサルをエースこと荒川まどか、ウィングこと高橋弥生と楽しんでいた。
「さぁ、鹿谷選手のPK。ゴレイロは倉石」
(本名ばらしていいのか?)
そこへスティングがやってきた。そしてスティングはサムにお礼を言いながらも警告した。
「しばらくは学園の寮にこもってろ。理由はあとで先生たちから聞くといい」
「どういうことだ」
「お前はやってない。だから今はじっとしてろ。でも逃げるな」
スティングの言うことを理解できていないサム。するとマッキーがサムをどついてきた。
「バッキャロー!土谷さん、どうして北口から出たの」
「原の兄貴に会うためだよ、渋民だったら北口から出たほうがいい」
「あ~、そっか」
盛岡駅には改札口が二つあるが、IGR(いわて銀河鉄道)線に乗るためには北口から出るのがいいのだ。
(それだったらマッキーもわかっているはずだが)
「でも、そんなに血相変えて…」
そしてマッキーは朝のニュースでさきほどの強姦事件の重要参考人が公表されたとサムに伝えた。
「よく聞いてね。昨夜仙北町のほうへふらふらと歩いていたってことないよね?」
「ああ」
「よかった。これであのラジオのニュースは間違っていることがわかったわ」

そしてマッキーたちハングタンはゴッド・大谷正治にこのことを伝えた。
「土谷さんはあたしの知人でもあり…」
「それがどうしたというのかな。ハングタンにはそんな友人や身内の情はふさわしくないと思うけど」
生徒たち「…」
そしてゴッドは非情な通告を出した。
「それなら構わないが、もしそれで土谷と言う男が逮捕されたとしよう」
「逮捕されると、どうなるんですか?」
「もし彼の口からハングタン、あるいは…」
ショパンこと横田夏子は驚いた。今まで今年度の生徒たちには「ザ・新選組」のことは知らせてなかったのだ。
「わたしたちのことがすべて暴かれたら、その場合土谷、さらには原俊彦も消せ」
「…そ、そんな」
「多分土屋さんはシロです」
「そうですよ」
「俊彦さんも関係ありませんから」
ハングタンたちの泣き喚く有様にとうとうゴッドも折れたようだ。
「そうか、では土谷がシロだと言うのなら何をすべきか」
「土谷好雄を騙る不届き者をハンギングすべきかと」
「確かにそうだ。しかし…」
「何ですか?」
「だとしたら土谷は何をしていたのか、本人に説明してもらう必要がある」
マッキーは任せてと胸をたたいた。

盛岡学園の寮にいたサムにハングタンたちが話を聞く。
「で、昨夜は本当に夜まで渋民の原さんのうちにいたってわけ」
「そうだよ。それなのに犯人呼ばわりされたら…」
サムは泣いていた。

一方である女が電話口に出て、さきほどのサムに似た若者と会話していた。
「これで原俊彦も信用ガタ落ちですな。我々の苦しみを味わうときが来たようです」
「了解(豚肉万歳)」

サムが盛岡学園の寮にこもりっきりなのを知ったスティングはショパンと一緒に料理をつくっていた。
「あいつ新潟だろ?先生がよく知ってるんじゃないかって」
「ああん、頼りすぎないでよ」
そうして出来上がったのは三陸の塩鮭と宮古の「千両男山」の吟醸粕でつくった三平。サムはそれを喜んで食べた。
「一度新潟に来いよ。来年は牧村ちゃんも帰郷して国体選手なるかもしんないから」
「へぇ~、そんでなくても新潟来るときは鮭飲むけどなぁ」
「話をそらすなよ、牧村先生が新潟で出るのか、岩手で出るのか、それはわかんないけど」
「ま、あのセンセのことだし」
「マッキーのことは学校でなんとかしますから」
「弥生ちゃんにもよろしく」
そしてスティングは部屋を出た。スティングはサムに似た若者を探しに行ったのだ。

その夜だった。弥生とアローこと斉藤葵が仙北町駅前を歩いていた。
「で、寮は昨日から土谷さんが入っているの」
「そうなんだ、だから今日は葵の家でルームシェアなんだ」
「まぁ、どっかの高校が野球部の留学でゴタゴタしたせいよ。あれで寮生が減っちゃったんだから」
そこへ例の若者が詰め寄ってきた。その気配に二人は気付かなかった。
「でも葵のおじさんの会社って都南よね、だったら次の駅じゃないの?」
「本当はね。でもこっちから降りたほうが近いから」
おしゃべりに夢中でストーカーに気がつかない二人、しかしストーカーの後ろにスティングがついた。そしてスティングはストーカーの気を引く作戦に出た。それは…
「スリだ!」
そう言ってスティングはストーカーに接近。そして二人もストーカーをコテンパンに伸した。
「確かに土谷さんに似ているな」
「じゃ、昨夜起こった事件のことを話してもらいましょうか」
しかし男はスティングを指差してこう言った。
「原俊彦!お前のせいだ。お前が変な記事を書くから、俺たちは…」
「どういうことだ、説明しろよ」
そして男はある雑誌の記事をスティングに見せた。
「震災復興を利用した悪辣詐欺」
この記事を書いたのは確かにスティングとサムだった。若者は上野貴夫25歳。スティングに批判されて会社が倒産したから風評被害の責任を取れとスティングに迫った。しかしスティングは記事の根拠を説明したのち、それ以上に被害を受けた人間に対する悲愛
を批判した。
「上野さんは東京の方みたいですね。これじゃ被災者の気持ちがわかるはずもない」
「そういう思い込みがいけないんだ!これだから東北人はいつまでたっても負け犬なんだよ」
上野はスティングを殴った。スティングは道端に倒れこんだ。

翌日、スティングの部屋で臨時作戦会議が開かれた。
「上野貴夫がストーカーなのは間違いない。ただ、まだ警察は物証をつかんでいない」
「それに上野の単独犯行にしては過激な強姦だった」
「…そんな、その人は女性の敵です」
「そうだ。そして僕やトシに挑戦してきた、それを考えても上野の背後に誰かいると考えたほうがいい」
そしてスティングは原稿用紙に何かを書き始めた。