あるサッカー評論家の話。
「・・・まったく、ここのサッカーにボロクソ批判できるやつはほかにいねぇのかよ」
そう言ってスポーツバーに入り浸りの男。
すると隣の席に喪黒が・・・
「どうしました?」
「い、いやぁ」
そして男は喪黒にすべてを打ち明けた。
「わたしは評論家と名乗ってはいますが、監督とかコーチがやりたいんです。でもサッカー経験がないものですから・・・」
「よろしい、ではあなたを監督にして差し上げましょう」
そして翌日、男はある地方のアマチュアクラブの監督に就任することになった。
「このチームは半世紀も地方のサッカーを牽引したチームなのです。こんなチームの監督になれるんですから、堂々と胸を張ってください」
「でも昨日も言ったとおり、経験がないですから」
「いいえ、あなたの情熱と理論なら絶対に勝ちます。あなたは名将になれる」
ドーン!
いよいよリーグ戦開始、男が率いるチームは順調に試合を消化していった。
そんなとき、喪黒さんがスタジアムに現れる。
「おや、どうですか」
「おかげさまで絶好調です」
「そうですか。ただしひとつだけ忠告させてください」
「・・・」
「あなたの考えをチームに押し付けないようにしてください」
「は、はい」
リーグ戦もいよいよ佳境。首位直接対決となった試合を前に監督がTVに出てこんな発言をした。
「もうここまで来たからには上のカテゴリーを目指しますよ。だってサッカーチームというのは常に上を目指してこそ存在価値があるんですから」
その画面を喪黒が見ていた。
局からの帰り、男は喪黒と会う。
「約束を破りましたね。あなたの考えをチームに押し付けてはいけないと言ったはずですよ。それなのに」
「い、いや。わたしは一般論を言っただけで」
「確かにどこのチームにも上を目指す権利があればいいのですが、それができないのが現実なのです」
「そんなもん、否定してやる」
「おやおや、もう自分は神であるかのような振る舞いをしていますね。仕方ありません、責任をとってもらいますよ」
ドーン!
結局試合に負けた監督は解任された。そして東京のTVに出ようとしても門前払い・・・
「監督はあくまで人間であって神ではありません。ペレだってジーコだってミスはするんですからね、ホーッホッホッホッホッホ」