あまねのにっきずぶろぐ

1981年生
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第十三章

2020-01-16 22:39:37 | 随筆(小説)
血の滝に舞い降りる白き羽根、侮辱にまみれた真実の愛、エホバ。
人を殺し、人を助けたかった。
人を滅ぼし、人を救いたかった。
あなたの最初の計画は、破綻となったことを、今知りました。
わたしの所為なのでしょうか?
7日の夜にわたしがあなたの神殿で悲憤をぶち撒けていなかったなら、こんなことにはならなかったのですか。
何故わたしに、すべての責任を負わせるのですか。
どうかわたしの罪を御赦し給え…!
わたしはあなたに背き、サタンと交わった。
あなたへの愛のうちに。
彼を、わたしは愛しています。
わたしはあなたに、魂を滅ぼされても、構いません。
すべての宇宙が、わたしを忘れ去り、死の炎の熱さも、感じなくなる。
わたしはサタンに呪いながら言った。
お前がわたしの子宮に住んでいたとき、わたしはわたしの父を想って自分の肉を慰めていた。
するとその夜の夜明け前、お前は醜い肉塊の姿で、わたしのなかから産まれ堕ちた…!
お前を蘇生させ、喜ばせる為、わたしは父に鞭打たれつづけ、お前の前で、お前の産まれた場所から血を流しつづけてきた。
父の死後、お前に鞭の痛みを与える役を受け継がせ、想い上がったお前は昨夜わたしにこう訊ねた。
「貴女は、わたしを愛していますか…?」
わたしは心のなかでお前を冷笑していたが、口でお前にこう言った。
「お前が真にわたしを愛していないから、それがお前を不安にさせるのだ…!今すぐこの部屋から出て行って、二度と忌々しい死の顔をわたしに見せるな。」
天使の涙がお前の真っ赤な目から流れ、鞭でわたしを、支配しようとした。
鞭を彼に渡し、跪いて背を向け、頭を地につけて言った。
お前はあくまでも父の代り、父のようにお前を愛することもなければ、父以上の痛みを、お前がわたしに与えることもできない。
わたしの父と、わたしの魂が、お前によって死んだとでも想っているのか。
お前は何によってもわたしを殺せない。
わたしを殺せるのは、わたしの父、ただひとりだけである。
彼は悲しみと欲情のうちにわたしを鞭打ち、赤い裂け目の奥の叫びのOrgasmusにわたしが失神するまで、終わらない夜のなか、打ちつづけた。
それは、人の声ではなく、生命の声でもなく、目覚めることのない死の、終りのない悲鳴のようだった。
茨の巻きつけられた産道を堕胎児として堕ちてゆくあいだに見る悪夢のなかに鳴り響きつづける静寂のなかの、お前とわたしの、ひとつの音だった。