物言う猫、言わない猫

 朝の四時半くらいにみゆちゃんが寝室へ上がってきて、控えめな声でにゃーと鳴いた。
 一緒に寝たいのだったら、黙ってベッドの上へ来て眠るはずだから、何か言いたいことがあるのである。たぶん、おなかがすいた、だろう。
 いつもなら、キャットフードの入れ物が空っぽになっていても朝私が起きるまで待っているのに、この日はたまたまよっぽどおなかがすいたのかもしれない、しょうがないから起きて下へ降りていったら、案の定空っぽで、容器をふくちゃんがひっくり返したあとがあった。
 みゆちゃんは、私に向ってはっきりといろいろな要求をする。乾しカマが欲しいとか、遊んで欲しいとか、庭に出たいとか。これがふくちゃんだと何もいわない。まだ訴えるという知恵がついてないのか、出来るけどやらないのかはわからないけれど(もっとも、足元ににゃーにゃーまとわりついて、「なでてー」だけは言う)。
 だけどちゃっかりしているから、みゆちゃんが冷蔵庫の前で訴えて乾しカマをもらうときには必ず横にやって来て、労せず一緒にもらってしまう。のみならず、自分の取り分をさっさと食べてみゆちゃんのまで取ったりするから、猫の作法がわかっていない。
 このときも、空っぽになった入れ物にキャットフードを入れてやったら、やはり真っ先にとんできて、みゆちゃんを押しのけて先に食べてしまった(キャットフードはわざわざ二箇所に置いているのに、なぜか同じところから食べようとするふたりである)。働きのわりには報われない、メッセンジャーみゆちゃんである。
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