ご近所猫さん

 近所に住んでいる大きな黒猫が、よく家にやってくる。開けている窓に向って、みゆちゃんとふくちゃんがしっぽをぼわぼわに膨らましていると思ったら、黒猫が、窓の外にあるエアコンの室外機の上に登って、網戸越しにこちらを見ているのである。
 みゆちゃんはしっぽを膨らます程度で比較的冷静さを保っているが、普段大雑把な性格のふくちゃんのほうがこういう状況に抵抗力がないらしく、フーッとかニィアオゥゥゥゥとか大騒ぎである。以前にも裏の塀の上をこの黒猫が通過したことがあって、そのとき庭にいたふくちゃんは、耳を倒し目を見開き、がたがた震えて動けなくなってしまった。
 私が窓から顔を覗かせると、黒猫はちょっとためらうようにしてから窓のそばを離れる。でもたいていはそのまま遠くまで逃げるわけでもなくて、前に止めてある車の下でしばらく寝そべっている。
全身真っ黒ではなくて、首の下にツキノワグマみたいな模様がある。薄緑色の真ん丸い目をしていて、愛嬌のある顔をしているが、通りを向こうへ小走りに走っていくうしろ姿は、やはり野良猫らしく毛並みがぱさぱさしていて、野良生活の苦労が滲んでいるような、哀れな感じがする。
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