ふくちゃん脱走未遂事件

 もう長いあいだ、外の世界への興味は失っていたようにみえたふくちゃんなのに、なぜかここ最近、脱走熱がぶり返したのか、庭を囲む塀の向こうにむかって、にゃあにゃあ鳴いてばかりいる。
 ふくちゃんの脱走経路は、エアコンの室外機から、一階分の高さのトタン屋根の上に登り、そこから塀を伝って隣家の屋根へ渡るというもので、前回脱走してからというもの、屋根に上れないようネットを張っていたのだけれど、そのネットと屋根の樋を結びとめていたひもがいつのまにかボロボロになっていて(時間の経過のためか、それともふくちゃんがかじったのか)、先日そのすきまからとうとう屋根の上に登ってしまった。
 これがみゆちゃんだったら、そのまますぐに塀を越えて脱走してしまうのだけれど、ふくちゃんはまだ脱走しなれないためか、登ったそのあたりでうろうろしていた。ちょうど日曜日で夫が休みだったので、脱走経路を絶つため塀際に夫を配置し、私はふくちゃんの説得に当たった。
 脚立に登って屋根の上を見ると、ふくちゃんは家の排気口のあたりに座っている。ちょうど朝日がまともにふくちゃんの顔に当たって、瞳孔が線のように細くなり、非常に悪猫面に見えた。が、そこは単純で可愛いふくちゃん、おやつのカリカリを取り出してみせて、ニャーと鳴いてすぐに寄ってきたところを捕まえた。目の前のことしか見えないというか、おやつを見ると、もう脱走のことは忘れてしまうのかもしれない。みゆちゃんならありえない。おやつを見せようがおもちゃで釣ろうが、惑うことなく行ってしまう。思慮深いみゆちゃん。
 脱走防止ネットは修復したけど、あいかわらずふくちゃんは、室外機の上から伸び上がってニャーニャー鳴いている。おまけに、みゆちゃんまでふくちゃんの脱走熱がうつったのか、木に登って脱走防止の猫返しをゆすったりするし(みゆちゃんの脱走経路は、庭木→塀→隣家)、落ち着かない。
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