猫の「変食」(前篇)

 猫の中には、変なものを食べるのがいるようである。「変なもの」というのは、食べ物というカテゴリーの中でたとえば珍味みたいなもの、というのではなくて、全然食べ物ではないもの、という意味で使っている。そういうものを食べてしまう猫を私はいままでに三匹知っている。
 一匹目は、初代家猫タヌキの兄弟・ゲリスンで、なぜか発泡スチロールみたいな合成樹脂を好んで食べた。その頃タヌキ、ゲリスン兄弟は家の外に父が作った猫ハウスに寝ていたのだけれど、ある日、猫ハウスに敷いた毛布を干そうとハウスの屋根を開けてみたら、保温のために壁の内側に貼り付けていたオレンジ色の発泡スチロールのマットが、半分くらい齧られてなくなっていたのである。このほかゲリスンは、おもちゃとして与えたゴムのトカゲもしっぽのほうから半分くらい食べてしまった(気づいて慌てて取り上げたけれど)。
 二匹目は、タヌキがつれてきたプリンの子供の、アニちゃんという大きな黒猫である。あるとき、夜中に父がトイレに起きたところ、アニちゃんの口からひもの端がはみ出しているのに気づき、びっくりして引っ張り出してみると、ぞろぞろと喉の奥から30センチくらいの長さのひもが出てきた。このアニちゃんは、ゲリスンと違って変なものを食べる常習犯というわけではなくて、どこか抜けたようなところのある猫だったから、何か勘違いでもしてひもを飲み込んでしまったのかもしれない。

(三匹目は次回です~)
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