子猫が来た!

 先週、実家でひと休みしていたら、子どもと一緒に外に出ていた母が慌てた口調で、「ちょっと、早く来て、猫、猫」とインターフォンで知らせてきた。
 新しい猫が訪ねてきたのかしら、それとも少し前に父が言っていた黒白の猫かしら、などと考えながら出て行くと、子どもの手を引いた母が庭に立っていて、その反対側の手には、茶色い小さなふわふわしたものが乗っていた。
 びっくりして近づくと、子猫をぽんと渡された。その軽いこと、ふわふわなこと。近頃感じていた日常生活の疲れやストレスが、瞬く間に消えた。
 茶トラの子猫である。手に乗るくらい小さい。
 これどうしたの、と聞くと、庭の金魚にえさをあげていたら、表で鳥だかなんだかよくわからない鳴き声がしたので、見に出てみると子猫がいたと言う。近くにカラスの姿が見えたから、危なくて、ともかく捕まえて連れてきたらしい。
 そばに箱があったから見て来て、というので、行ってみたら、学生アパートの前に、底に断熱材を敷いてタオルと古着をかぶせた段ボール箱が置いてあった。箱の横には黄色いスープの入ったお皿があって、お皿の内側のスープの境界に蟻がずらりと並んで、たかっていた。
 子猫はどうやら捨てられたらしかった。
 部屋に連れて帰って缶詰をあげると、おなかが減っていたらしくて、夢中で食べた。食べ終わったらおもちゃでひと通り遊んで、そのあと疲れて、私の手の中でごろごろのどを鳴らしながら、眠くなって寝てしまった。
 当然、実家で飼うことになった。名前もキキに決まった。母が鳥と間違えたように、ぎーぎーと猫らしくない変な声で鳴くのである。だから「ギギ」はどう、と言うのを、ギギでは呼びにくいからキキになった。
 こんなに小さい子猫を飼うのははじめてである。人懐っこくて、呼ぶとやって来て、こちらが差し出した指にピンク色の鼻をすりつける。小さな小さな鼻である。ふわふわの柔らかい毛に、可愛い手。華奢な体。危なっかしいような頼りなさで、歩いたり跳ねたりする。この世に、こんな可愛らしいものがあるものかと思うくらい可愛い。

     *     *     *     *     *

 子猫を可愛い可愛いと言っているけれど、浮気をしているのではないよ、みゆちゃん、ふくちゃん。子猫の可愛さはすごいけれど、家に帰ってみゆちゃん、ふくちゃんのどっしりした背中を見ていると、やっぱり大人の猫が、心落ち着くなあと思うのである。


(イラストはイメージです。キキとみゆちゃんふくちゃんは実際は会っていません。)


写真。







遊びつかれたのニャ。
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