猫ブラシ事情

 近頃みゆちゃんは、ブラッシングがお気に入りである。
 私の机に上ってくると、まず右側に座って足元の引き出しに鼻を近づけ、中に入っているおやつを催促する。そしておやつが済んだら、今度は机の左側に置いてあるブラシのところへ行って、前足でこれよこれよと引っかいてブラッシングを要求する。
 私がブラシを手に取ると、からだをくねくねさせてブラシにすり寄せてくる。狭い机の上であっちへ行ったりこっちへ行ったりところかまわず体当たりするので、立てて並べてあるスケッチブックを押し倒しそうになったり(これは間一髪受け止めた)、くねらせたしっぽで一輪挿しをひっくり返しキーボードを水浸しにして壊してしまったこともあった。
 しまいには、ペンやメモを蹴飛ばしながらわずかなスペースに横になるので、伸びたみゆちゃんの背中や横腹にブラシをかけてやる。細かい毛がたくさん抜けて、ブラシに絡まりきらないのが飛散し、季節柄、蒸し蒸しして汗ばんでいる私のブラシを持つ右手の甲や腕にまとわりついて、まるで西洋の毛深い男の人の腕のようになってむずむずするが、みゆちゃんはご満悦の様子で、目を細くして微かにごろごろのどを鳴らしているので、私はブラシをかけ続ける。やがてみゆちゃんの純白の毛が、ますます輝いて、夏の雲のように眩しく、粉雪のようにふわふわになるので、私はうっとりしながらブラッシングのご奉仕をする。

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 ところで、ふくちゃんのほうは、以前ブラシをかけてやろうとするとすぐにブラシにじゃれ付いて、噛みついたり蹴飛ばしたりして全然だめだったのだけれど、最近になってようやくブラシをかけると気持ちがいいということがわかったらしく、大人しくするようになった。
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