月刊も含め週刊漫画誌が全盛期だった頃
何の漫画だったのか、何に載っていたのかすら忘れたのに
その詩だけが記憶に残り
社会人になり自分で本を買えるようになってから
買った・・・詩集。
『記事にならない事件』
見ましたか? とある森かげ
しなやかに伸ばした少女の腕から
枝が伸び 葉が生えて
みるまに いっぽんの木になってしまったのを
見ましたか?青年がその木のそばで
紺の上着を脱ぎ捨てた
とみるまに鳩になったのを
(電話のベルは 鳴りっぱなし 鳴りっぱなし
誰も出ない 誰もいない 今日は日曜日)
郊外電車にあかりがつくと
人たちはそそくさとまたにんげんを着て
ビジネスの街に帰ってくるが
聞きませんか?この頃近くの牧場では
休日のあと 見慣れぬ馬が
一頭や二頭 きまってふえているという話を
(電話のベルは 鳴りっぱなし 鳴りっぱなし
誰も出ない 誰もいない 月曜日が来ても)
「日本の詩集20 新川和江詩集」
角川書店:発行
昭和48年7月初版
昭和50年9月第3版
『比喩でなく』より『記事にならない事件』
8月10日心筋梗塞で亡くなられた、と新聞記事で知りました。
(享年95歳)
私の中の思い出のひとコマです。
素敵な詩に感謝しています。
ご冥福をお祈りいたします。