2010年12月4日公開 アメリカ=イギリス 108分
老婦人サラ・パルフリー(ジョーン・プロウライト)は、最愛の夫に先立たれ、娘エリザベス(アンナ・カートレット)から自立した生活を送るため、ロンドン市内のクレアモントホテルへ長期滞在に訪れる。想像とはかけ離れた設備に落胆しつつも、ドレスアップして夕食のテーブルについた彼女は、滞在客たちの注視にさらされるが、アーバスノット夫人(アンナ・マッセイ)が声をかけてくれる。翌日、朝食の席でロンドンに住む孫デズモンド(ローカン・オトゥール)の話をすると、皆の興味が集まった。ここでは、訪問客とかかってくる電話が一番の関心事なのだ。早速、デズモンドへ電話をするが彼からの電話も訪問もなく、言い訳も底をついた頃、外出先でつまずいて転んだところをルードヴィック・メイヤー(ルパート・フレンド)に助けられる。作家志望の彼は、孫と同じ26歳の青年だった。ホテルに戻りお礼に彼をホテルでの夕食へ招待した話をすると、皆に孫が訪ねてくるのだと勘違いされてしまう。困った夫人が、そのことをルードヴィックに話すと、デズモンドのふりをすることを提案された。約束の日、ホテルにやってきたハンサムな青年にホテルの住人は沸き立つ。一方、ルードヴィックは、この偶然の出会いを小説の題材にすることを思いつく。その後も夫人とルードヴィックは頻繁に会うようになり、お互いの孤独な生活の中で本音を語りあうようになるが・・・。
イギリスの作家エリザベス・テイラー晩年の小説が原作だそうです。
自立した晩年を過ごそうとミセスPが訪れたのは、長期滞在型のホテルです。想像していたより遥かに貧弱な部屋の様子と美味しいと聞いていたのに実際は不味い食事にがっかりはしたものの、ユーモアとウィットを忘れないホテルの住人たちとも次第に心を通わせていきます。
辛辣な物言いだけどさりげない気配りの人・アーバスノット夫人の口癖は「ホテルでの臨終禁止」。彼女はホテル内で倒れ、施設へ移って亡くなるのですが、新聞の死亡広告欄でそれを知る場面は切なかったです。逆にオズボーン氏(ロバート・ラング)からプロポーズされ、婉曲に断る場面はクスっとさせられます。
何より夫人をときめかせたのは、偶然出会った作家志望のルードでした。礼儀正しく夫人の愛読書のワーズワースや亡き夫が好きだったウィリアム・ブレイクの詩にも通じているルードに、夫人は亡き夫との思い出を重ね、ルードは夫人から人生の奥深さを学ぶのです。世代の異なる二人の間にあるのは恋愛感情ではなく、心の交流です。映画はそれを抒情豊かに描き出してみせます。ルードの母(クレア・ヒギンズ)と会って、母子のすれ違っていた気持ちを繋ぐシーンはまさに年の功。
夫人が薦めた映画「逢びき」が縁でルードはグェンドリン(ゾーイ・タッパー)と出会い、二人は恋に落ちます。脇で静かに見守る夫人の胸によぎったのは、若いころの自分と夫の姿でしょうか?しかし若い二人が親密になるほどに、夫人のもとへの訪問は間遠になり、寂しさを禁じ得ません。様子が変わった夫人を心配するホテルの住人たちですが、夫人はかまって欲しくないと突っぱねた直後、転んで腰の骨を折ります。
入院した夫人の元へ駆けつけたルードを、合併症で肺炎を起こした夫人は混濁する意識の中で亡き夫と混同します。書き上げた小説を持って訪れたルードを待っていたのは、夫人との永遠の別れでした。
ルードが本当の孫ではないことを誰もが疑わず、逆に本物のデズモンドを偽物と追い返す場面が何度か登場しますが、それは滑稽ではあるけれど、よく考えると本物にとっては不愉快で理不尽な災難です。夫人が実の娘と孫をあまり好いていないように見えて、その理由は彼らの振る舞いから想像するしかないのですが、ちょっと可愛そうな気がしたのが唯一残念な点でした。
物語のような美しくて気立てが良くて礼儀正しい青年と束の間でも交流出来たら、それはもう最高に贅沢な晩年で、これは老婦人の夢見たファンタジーといえるかも
老婦人サラ・パルフリー(ジョーン・プロウライト)は、最愛の夫に先立たれ、娘エリザベス(アンナ・カートレット)から自立した生活を送るため、ロンドン市内のクレアモントホテルへ長期滞在に訪れる。想像とはかけ離れた設備に落胆しつつも、ドレスアップして夕食のテーブルについた彼女は、滞在客たちの注視にさらされるが、アーバスノット夫人(アンナ・マッセイ)が声をかけてくれる。翌日、朝食の席でロンドンに住む孫デズモンド(ローカン・オトゥール)の話をすると、皆の興味が集まった。ここでは、訪問客とかかってくる電話が一番の関心事なのだ。早速、デズモンドへ電話をするが彼からの電話も訪問もなく、言い訳も底をついた頃、外出先でつまずいて転んだところをルードヴィック・メイヤー(ルパート・フレンド)に助けられる。作家志望の彼は、孫と同じ26歳の青年だった。ホテルに戻りお礼に彼をホテルでの夕食へ招待した話をすると、皆に孫が訪ねてくるのだと勘違いされてしまう。困った夫人が、そのことをルードヴィックに話すと、デズモンドのふりをすることを提案された。約束の日、ホテルにやってきたハンサムな青年にホテルの住人は沸き立つ。一方、ルードヴィックは、この偶然の出会いを小説の題材にすることを思いつく。その後も夫人とルードヴィックは頻繁に会うようになり、お互いの孤独な生活の中で本音を語りあうようになるが・・・。
イギリスの作家エリザベス・テイラー晩年の小説が原作だそうです。
自立した晩年を過ごそうとミセスPが訪れたのは、長期滞在型のホテルです。想像していたより遥かに貧弱な部屋の様子と美味しいと聞いていたのに実際は不味い食事にがっかりはしたものの、ユーモアとウィットを忘れないホテルの住人たちとも次第に心を通わせていきます。
辛辣な物言いだけどさりげない気配りの人・アーバスノット夫人の口癖は「ホテルでの臨終禁止」。彼女はホテル内で倒れ、施設へ移って亡くなるのですが、新聞の死亡広告欄でそれを知る場面は切なかったです。逆にオズボーン氏(ロバート・ラング)からプロポーズされ、婉曲に断る場面はクスっとさせられます。
何より夫人をときめかせたのは、偶然出会った作家志望のルードでした。礼儀正しく夫人の愛読書のワーズワースや亡き夫が好きだったウィリアム・ブレイクの詩にも通じているルードに、夫人は亡き夫との思い出を重ね、ルードは夫人から人生の奥深さを学ぶのです。世代の異なる二人の間にあるのは恋愛感情ではなく、心の交流です。映画はそれを抒情豊かに描き出してみせます。ルードの母(クレア・ヒギンズ)と会って、母子のすれ違っていた気持ちを繋ぐシーンはまさに年の功。

夫人が薦めた映画「逢びき」が縁でルードはグェンドリン(ゾーイ・タッパー)と出会い、二人は恋に落ちます。脇で静かに見守る夫人の胸によぎったのは、若いころの自分と夫の姿でしょうか?しかし若い二人が親密になるほどに、夫人のもとへの訪問は間遠になり、寂しさを禁じ得ません。様子が変わった夫人を心配するホテルの住人たちですが、夫人はかまって欲しくないと突っぱねた直後、転んで腰の骨を折ります。
入院した夫人の元へ駆けつけたルードを、合併症で肺炎を起こした夫人は混濁する意識の中で亡き夫と混同します。書き上げた小説を持って訪れたルードを待っていたのは、夫人との永遠の別れでした。
ルードが本当の孫ではないことを誰もが疑わず、逆に本物のデズモンドを偽物と追い返す場面が何度か登場しますが、それは滑稽ではあるけれど、よく考えると本物にとっては不愉快で理不尽な災難です。夫人が実の娘と孫をあまり好いていないように見えて、その理由は彼らの振る舞いから想像するしかないのですが、ちょっと可愛そうな気がしたのが唯一残念な点でした。
物語のような美しくて気立てが良くて礼儀正しい青年と束の間でも交流出来たら、それはもう最高に贅沢な晩年で、これは老婦人の夢見たファンタジーといえるかも
