杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

聖なる嘘つき、その名はジェイコブ

2012年03月20日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
1999年製作 アメリカ 

1944年、ナチス占領下のポーランドのゲットー。塀の外から舞い込んだ新聞紙を追ったユダヤ人ジェイコブ(ロビン・ウィリアムス)は、塀の前で衛兵に止められ、規則違反で司令部に出頭を命じられる。司令部事務所で耳にに入ってきたラジオ放送で、この町から400キロ先にあるベザニカでドイツ軍がソ連軍と交戦したというニュースを耳にしたジェイコブは希望を抱く。帰り道、収容所に送られる列車から逃げ出してきたリーナ(ハンナ・テイラー・ゴードン)と出会い、屋根裏に彼女を匿うことにする。翌朝、床屋の友人コワルスキー(ボブ・バラバン)が自殺しようとしているところに出くわしたジェイコブは、咋夜のニュースを伝えて彼を引きとめる。やがてそのニュースは、ジェイコブがラジオを持っているという噂と共に広まり、ニュースの続報をせがまれたジェイコブは、ドイツ軍がソ連に反撃するために東に向かっていると出まかせの戦況を伝える。しかし、そのニュースを、収容所へと向かう貨車に乗っているユダヤ人たちに教えようとしたハーシェル(マチュー・カソヴィッツ)が兵士に射殺され、自責の念にかられたジェイコブは悩むが、医師の励ましに勇気づけられ嘘を重ねていく。やがてゲットーの住人たちは抵抗組織を作ることを思いつき、ジェイコブはリーダーに選ばれる。しかし、医師が心臓を病むゲシュタポの将軍の命令で呼び出され、噂になっているラジオの持ち主の密告を迫られて服毒死したため、将軍はラジオの持ち主の捜索に乗り出し、本人が出頭しなければ人質10人を殺すと言う。真実をコワルスキーに告白し司令部に出頭したジェイコブは、住民たちの前でラジオのニュースも抵抗運動も、全て嘘だったと言うよう強要されるが・・。


妻を射殺され、生きていく希望もすり減っていたジェイコブが、司令部でラジオニュースを偶然聞いたことで、周囲から期待と希望を向けられ、やがてはその希望を守るために、嘘をつき通して死んでいきます。彼らが置かれた状況は悲劇的ですが、物語は決して重苦しいものではなく、過酷な毎日の中でもユーモアと笑いを忘れない一抹の明るさがあり救われます。

病気になったリーナを元気づけるために、良くなったらラジオを聞かせると約束したジェイコブが、回復したリーナに、チャーチルの声色を使ってBBC放送を演じてみせる場面などはいかにもロビンらしさが出ていました。

絶望の中で縋る一縷の光はまさに希望と呼ぶ、命をかけて守るべきものでした。
ジェイコブが射殺された後の本人のナレーションには戸惑いもありましたが、救いのある結末に少し癒されます。

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