杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

残酷メルヘン 親指トムの冒険

2013年08月27日 | 映画(DVD・ビデオ・TV)
2012年10月6日公開 フランス 81分

おとぎ話は、ときに残酷―
昔々、5人兄弟の末っ子で“親指トム"と呼ばれた男の子がおりました。
トムたち兄弟は、貧しさに困った両親に森の奥で捨てられてしまいます。
そんな両親の企みを知っていたトムは、パン屑を目印に道すがら落として行きますが 鳥に食べられてしまい家に帰ることが出来なくなってしまいました。
森の中をさ迷ううちに、立派な屋敷に辿り着きますが、そこには人喰い鬼(ドニ・ラヴァン)が可愛い娘とともに住んでいました。
トムと兄弟は暫く娘たちの部屋に泊まるとこを許されますが、 不安を感じたトムは夜寝ている間、娘たちの王冠と自分たちの帽子を入れ替えるのでした。
そして夜中に部屋の中に鬼の気配を感じ…。


「親指トム」は元々はイギリスの民話で、グリム兄弟や、シャルル・ペローの童話でも有名です。
本作はペロー版だそうです。
本来童話というのは悲惨な史実が含まれた教訓的要素が秘められているとも言われていますが、この作品も17世紀当時のフランスの大飢饉を背景にしているとのこと。

若く貧しい夫婦が子沢山、よくあるケース
本来は優しい性格の人でも、餓えが続けば自分第一になってしまうのもある意味当然の結果。
子供たちを森に棄て、妻と二人っきりになった途端「そっち」萌えの夫。まんざらでもない妻。
あ~~あ、でもこれが現実なんだろね。
そもそも、夫の考えを断固拒絶する気は彼女にもない。それだけ深刻な飢餓状態ってことです。

凡庸な子供たちの中で、末っ子だけは聡かった
だけどしょせん子供の浅知恵。パンなんて撒いたら鳥さん食べちゃうよね~お腹空かせてるのは人間だけじゃないもんな。
確か、童話だと親が気づいて家の外に出られなくなったので仕方なく、だったような気がするけど・・。あれ?それは「ヘンゼルとグレーテル」だったっけ?

鬼の家に迷い込んだ子供たちを最初は追い返そうとする鬼の妻。彼女の立場も微妙~~。
夫のことも彼に似た娘たちのことも恐れ嫌っているようでもあるけど、一方でやはり愛してもいるんだな最終的に捕まった子供たちを逃がす気はないけど、時間稼ぎはしてくれるところに彼女の迷いが感じられます。そしてトムの機転により夫が間違えて娘たちを殺してしまったことを知り嘆きのあまり自らも死んでしまった彼女が一番可哀想だったかも

追いかけてきた鬼が退治される場面は、それまでのリアル路線からいきなりチープなお子様番組的雰囲気となったのが残念でしたが、鬼の家から宝物をどっさり頂いてきた(これって結果的に押し込み泥棒じゃん)トムが、王様然と家族に肉を投げ与える皮肉的なラストはまさに「残酷」と冠するに値するシュールさでした。
そりゃ~自分を捨てようとした両親にも、何の役にも立たなかった兄たちにも笑顔で宝物差し出すわきゃないわなぁ

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