
2024年10月25日公開 149分 G
江戸時代の人気作家・滝沢馬琴(役所広司)は、友人の絵師・葛飾北斎(内野聖陽)に、構想中の物語「八犬伝」を語り始める。
里見家にかけられた呪いを解くため、八つの珠を持つ八人の剣士が、運命に導かれるように集結し、壮絶な戦いに挑むという壮大にして奇怪な物語だ。北斎はたちまち夢中になる。そして、続きが気になり、度々訪れては馬琴の創作の刺激となる下絵を描いた。北斎も魅了した物語は人気を集め、異例の長期連載へと突入していくが、クライマックスに差しかかった時、馬琴は失明してしまう。完成が絶望的な中、息子(磯村勇斗)の妻・お路(黒木華)から「手伝わせてほしい」と申し出を受ける──。失明してもなお28年の歳月をかけて書き続けた馬琴が「八犬伝」に込めた想いとはー。(公式HPより)
里見家にかけられた呪いを解くため、八つの珠を持つ八人の剣士が、運命に導かれるように集結し、壮絶な戦いに挑むという壮大にして奇怪な物語だ。北斎はたちまち夢中になる。そして、続きが気になり、度々訪れては馬琴の創作の刺激となる下絵を描いた。北斎も魅了した物語は人気を集め、異例の長期連載へと突入していくが、クライマックスに差しかかった時、馬琴は失明してしまう。完成が絶望的な中、息子(磯村勇斗)の妻・お路(黒木華)から「手伝わせてほしい」と申し出を受ける──。失明してもなお28年の歳月をかけて書き続けた馬琴が「八犬伝」に込めた想いとはー。(公式HPより)
山田風太郎の小説「八犬伝」の映画化。里見家の呪いを解くため運命に引き寄せられた8人の剣士たちの戦いをダイナミックに活写する“虚構”パートと、その作者である江戸時代の作家・滝沢馬琴の創作の真髄に迫る“実話”パートを交錯させて描かれています。物語を生み出す苦悩と葛藤と共に作者の目線で描かれる『八犬伝』 です。

昔、「新八犬伝」という人形劇が放送されてましたっけ。人形美術を担当 した辻村ジュサブロー さんの人形が印象的でした。曲亭馬琴 の『南総里見八犬伝』自体は未読ですが、おおまかなあらすじは知っていました。
そういえば、朝ドラ「らんまん」のヒロインの愛読書になっていましたね。
この映画の中で描かれる「八犬伝」の物語はVFX効果もあってまさに「虚」の世界に引き込まれます。
馬琴の「悪が蔓延る世の中だからこそ物語の中だけは勧善懲悪に拘りたい」という信念のもとに書かれたまさに正義が勝つお話は、読む人々の心に小さな勇気を運んだのではないでしょうか。
「八犬伝パート」と馬琴と北斎の奇妙な友情を通じて描かれる「創作パート」が交錯して進みます。北斎に誘われ、巷で人気となっていた歌舞伎芝居を観に行った馬琴が、戯作者の鶴屋南北(立川談春)と繰り広げた問答が深い😀
忠臣蔵と四谷怪談を巧みに織り交ぜた内容の芝居なのですが、シニカルな南北と頑固で頭の硬い馬琴ではその「虚と実」の捉え方が真逆なのです。(個人的には南北の考えを支持しますね😁 )歌舞伎芝居の方は中村獅童(民谷伊右衛門)や尾上右近(お岩)が演じていました😋
破天荒な芸術家である北斎と堅物な馬琴とのやりとりがユーモラスに描かれているのも面白かったです。物語の筋を語った後、挿絵をせがむ馬琴に、気軽に数枚描いて渡す北斎ですが、すぐにそれを破って捨ててしまいます。この毎度のやりとりが笑えます。
挿絵ももちろんですが、旅に出て描き上げた「富嶽三十六景」を馬琴に土産代わりに渡すシーンではその見事な絵も披露されていて眼福でした。
馬琴の息子の鎮五郎/宗伯の父を尊敬し尽くす姿はまさに孝行息子そのもの。父の期待と願いを一身に受け医者となり武家に召し抱えられながらも病を得て早逝してしまうのですが、その臨終のシーンが涙を誘います。
妻のお百(寺島しのぶ)は学のない女性です。馬琴に振り回される人生に愚痴が絶えないのですが、根は悪い人ではないようです。
学がないのは息子の嫁もですが、彼女は夫亡き後、馬琴が失明した折には、彼の代わりに物語の口述筆記を申し出て、いろはしか読めなかった彼女が漢字を覚えて物語の完成に重要な役割を果たしたのでした。
「八犬伝」パートでは、玉梓(栗山千明)の呪いを解くために八犬士が活躍します。
里美義実(小木茂)が飼い犬の八房にかけた戯言と、捕らえた玉梓を一度は放免すると言っておきながら斬首したことで彼女の恨みを買ったことが因果の元となり、伏姫が自らの命と引き換えに呪いを解くために八犬士を生み出すことになります。
20年後。玉に導かれるように、それぞれ犬の名を持つ八犬士が会することとなります。
初めに登場するのが犬塚信乃(渡邊圭祐)と犬川荘介(鈴木仁)。信乃の幼馴染の浜路(河合優美)が非業の死を遂げたように見えましたが実は彼女は鷹に攫われた義実の姫だったということが後に明かされます。
その後、次々と不思議な巡り会わせにより集まった8人は玉梓を倒し里見家の呪いを解くのです。悪霊となった玉梓の実体はVFXで表現され、信乃の持つ名刀村雨から放たれる水と悪霊の炎の戦いがダイナミックに描かれます。悪役玉梓を演じる栗山千明の鬼女姿も凄みがありました。
本家「南総里見八犬伝」の内容はかなり端折っているようですが、ダイジェストとしてみればスピーディで楽しめました。
特筆すべきは毛野役の板垣李光人の女装姿。舞姿は本当に女性かと思ってしまったぞ。😓